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※当記事は下記記事からの続きとなっています。
【波の解析編】
近所のファミレス…
目の前に座っているシエルちゃんは窓の外…
何かの宗教だろうか?
同じような服を着た大勢の人が、大きな建物の中に入っていくのをじっと見つめている。
シエル:「あ゛ぁ~~~、気持ち悪い。
人って、どうしてこう群れたがるかな…」
僕:「世の中、大勢の人に囲まれていても平気な人が多数派なんだよね…。
少し羨ましいな…僕は何人もの人の表情を読み取っていると、大体疲れて目線を逸らしてしまうからね。」
…業績転落から4年。
"経営合理化"の名の下、遂に会社は大規模な人員整理に踏み切った。
対象となる年齢層は幅広く、僕も整理対象入りを免れることはできなかった。
仲間グループを結成して守りを固めようとする者、
この機に乗じて邪魔者の排除を画策する者、
『自分は大丈夫』であることを信じ込もうとしている者…
僕たちは皆『特別な事情』を抱えながら、必死に足掻いて生きている。
もちろん僕にも、引くに引けない事情がある。
僕が今やるべきことは、とにかく時間を稼ぐことだ。
おそらく、この仕事はそう長くは続けられないだろう...
2年...1年でもいい。
少しでも長く時間を稼いで、できる限り状況を有利にした上で、この船を降りる。
やること、問題は山積みだが、まずは目先の課題...人員整理を乗り切らなくてはいけない。
シエル:「そうだね。
でもそういう体質なんだから仕方がない。
それをハンデだと思うなら、それを補って余りあるほどに賢くなればいい。
運が良ければ、集団に関わらずに済む方法が見つかるかもしれないしな。」
ミア:「お待たせ。
職場見学で質問してたら、予定より遅くなっちゃって。」
会社の状況と今後のことについてミアに相談してから僅か一月、ミアは早くも就職活動を始めてくれていた。
言い訳はしない。
こうなってしまったのは僕の能力不足と不甲斐なさのせいだ。
でも、落ち込んでいてもなにも変わらない。
ミアは頑張ってくれている。
ここからは、僕が頑張る番だ!
僕:「ありがとうミア。本当に助かります。」
シエル:「揃ったね。今日のテーマは『微分』だよ。
では、勉強開始といこうか!」
いろんな意味で、これから大変になりそうだ。
【Tool:CLIP STUDIO PAINT】
文系投資家の修行~連続する微分地獄に光明を見出せるか!?~
この関数の傾きは?
ミア:「微分かぁ…絶対難しいやつだよね?
どうしよう…やっぱ私帰っていい?」
シエル:「そう言うと思ったよ。
微積分はいろんな解析の基礎になる手法だから、微積分自体がそこまで難しいというわけではないよ。
それに、実際にやってみると微分って意外と簡単だったりするし。」
僕:「確かに…初歩的な微分は簡単だね。」
ミアはドリンクバーで取ってきたカルピスソーダを一口飲んでから、体を少し前に出す。
ミア:「そうなの?じゃぁ、聞こうかな♪」
シエル:「オッケー、じゃぁ初歩的だけど、とても重要なことから始めるね。
中学校で習う一次関数の問題だよ。
関数『f(x)=x』の傾きはいくらでしょう?」
ミア:「『f(x)』は『y』のことだよね?
関数『f(x)=x』の傾きは…1?」
僕:「合ってるよ。それが微分だよ。」
ミア:「へ?」
ミアは首を傾げて考えるポーズをとる。
相変わらずリアクションが素直だ。
シエル:「説明が必要だね。
一次関数『f(x)=x』の傾きは『1』
これをどうやって求めたかが重要なポイントだよ。」
シエル:「たとえば、関数f(x)=xのxの値を原点0から+3進ませたとしよう。
この場合、yの値も+3増加することになる。
関数の傾きは、
『yの変化量÷xの変化量』で導けるが…
実はこれ、yの値の平均変化量を求めているだけなんだ。」
シエル:「じゃぁ実際に関数f(x)=xの傾き…
xの値が+3増加したときのyの平均変化量を求めてみよう。」
ミア:「うん…それはとてもよくわかったよ。
で、これが微分にどうつながるの?」
シエル:「フッフッフ…
では、yの平均変化量の式を『変数』を使って表現してみよう!
関数f(x)=xにおいて、x軸方向に、ある変数『a』から『h』だけ進ませた際のyの平均変化量は次の公式で導くことができる。」
ミアは反射的に眉間にしわを寄せる。
シエル:「少し文字が増えただけで、やってることはさっきまでと同じだよ。
先ほどの関数f(x)=xでの話に当てはめてみるとわかりやすいから、やってみるね。
先ほどの話で言うと…
xの増加量『h=3』で
変数aは原点で考えたから『a=0』
yの増加量は、これら数字を当てはめればOKだよ。」
ミア:「なるほど…。」
シエル:「ここまではOKだね?では、本題の微分の話を始めようか!
関数の傾きは、yの平均変化量を求めることだったね。
一方、微分ではyの瞬間変化量を求めていく。
つまり、xの変化量『h』を限りなく0に近づけていくとyの平均変化量はどうなるか?を考えるだけだよ。
幸い、一次関数f(x)=xの場合は、xの変化量hの値が3であろうが1であろうが、0.001であろうが、yの平均変化量は1のまま変わらない。
従って、『f(x)=x』という関数を微分すると
『x=1』になる。
これを次のように書き、ディーディーエックス・エフエックスと読む。」
マウント・プライム
シエル:「ここまでは一次関数について考えてきたけど、ここからは二次以上の関数について考えていくよ。
関数『f(x)=x²』の平均変化量…別名『傾き』はいくら?」
ミアは少し考えてから答える。
ミア:「xが1だとyは1、xが2だとyは4、xが3だと…
ねぇシエル、二次関数はxの値によって傾きが変わってくるから、一つの傾きを出すことなんてできないんじゃない?」
シエル:「その通り!
ミアちゃんは本当に理解が早いね。
確かに、二次関数ではxの値によって傾きが変化してしまうから、区間毎に傾きを算出していかなくてはならない。
そこで微分の登場だ!
曲線上に2点『A』『P』を書き込んだよ。
これについて考えていこう。
点『P』を点『A』に限りなく近づけていくと、直線APの傾きは点Aを通る接線の傾きに限りなく近づいていく。
『点Pを点Aに近づける』というのは、『xの変化量"h"を"0"に近づける』ことと同じ意味になるよ。」
シエル:「関数f(x)のx=aにおいて、xの変化量hを限りなく0に近づけると、平均変化量がある一定の値に限りなく近づく場合、この一定の値はf(a)の瞬間変化量を表している。
すなわち…
これで関数f(x)をx=aで微分することができるということだ!」
ミア:「記号の『lim』は『hを限りなく0に近づける』っていう意味で合ってるよね?」
シエル:「そうだよ♪
ちなみに、微分によって得られた関数のことを導関数と呼ぶよ。」
2人の話を聞いていた僕には、どうしても気になってしまうことがあった。
僕:「微分記号は何種類もあるけど、これを使うのは珍しいね?
エフ・ダッシュ・エックス『f´(x)』をあえて使わないのには何か理由があるのかな?」
シエルちゃんは軽蔑のまなざしを僕に向ける。
シエル:「あ~…ミクサは『ダッシュ』って言うのか。
いいか?理系大出てるヤツは『プライム』って言うんだ。
記号の読み方には気をつけた方がいいぞ!学歴がわかるからな!」
僕:「マジか…そんなのでマウント取られるのかよ…。」
シエル:「あえて『d/dx』を使ったのは、積分の計算をするときに使うからだよ。
まぁ、もうこの表記に慣れたと思うから、今後は簡単な
エフ・"プライム"・エックスを使っていこうかな。
導関数の公式も、変数に『a』を使ったけど、ここからはより変数らしい『x』を使うことにしよう。」
シエル:「それでは、関数『f(x)=x²』を微分して導関数を求めてみよう!」
シエル:「『f´(x)=2x』これが関数『f(x)=x²』を微分して得られた導関数だよ。
これは関数f(x)の接線の傾きを表していて、たとえば、x=2のときの接線の傾きは
f´(2)=2×2=4となる。
それじゃぁミクサ、聞いているだけじゃつまらないだろ?
グラフ上で点(2.4)を通り、傾きが4の関数の式を求めてくれ。」
僕:「グラフの平行移動だね。
『f(x)=4(x-2)+4』で合ってるかな?」
ミア:「早!?なんでそんな簡単に出せるの!?」
僕:「そうだな…順番に一つずつ考えていこうか。
まず、傾きが『4』の一次関数『f(x)=4x』から始めるよ。
この関数をx軸に+2移動させるには式の『x』を『x-2』に入れ替えてやればいい。
同じようにy軸に+4移動させるには『y』を『y-4』に入れ替えれば、
点(2.4)を通る傾き4の一次関数ができあがるよ。」
ミア:「そういえば、前に同じことやったような気がするような…しないような?」
シエル:「『f(x)=4(x-2)+4』これが
f(x)=x²のx=2における接線の傾きを表した関数の式だよ。
同じようにf´(-2).(-1).(0)...と求めて、グラフを描き込んでいくと…」
シエル:「接線の傾きf´(x)を無限に連続させていけば、やがて『滑らかにつながる曲線』がグラフ上に浮かび上がる。
曲線を直線の連続に分解する…微分のイメージはつかめたかな?」
僕・ミア:「まぁ…なんとなくね。」
積の微分
シエル:「『なんとなく』で十分だ!
一度聞いただけで全て理解できるヤツなんて天才だけだからね。
まぁ…世界にはそんな天才がゴロゴロいるのも事実なんだけど…」
僕:「・・・」
シエル:「少し難しい内容になるが、ここからは波の解析に必要な"微分の重要な性質"を見ていく。
まずは関数を2つかけ合わせた『積の微分法』についてだ。」
僕:「なるほど…確かにそうなるね。」
シエル:「これから、くっついているやつをばらしていくよ。」
ミア:「なに!?この"足して引いた"ヤツ…こんなことやっていいの!?」
僕:「同じものを足して引けば『0』になるからアリなんだろうね。
でも…こんな方法を思いつくなんて、数学者って発想が柔軟なんだね。」
シエル:「現実はどうかというと、数学を学ぶ多くの人が創造力を早い段階で失ってしまうんだけどね…。
ここまで、積の微分法
『{f(x)g(x)}´=f´(x)g(x)+f(x)g´(x)』が得られた。
試しにこれを使って、
『f(x)=x』『g(x)=x²』をかけ合わせた関数を微分してみよう!
これまでの内容で、
『x´=1』『(x²)´=2x』であることがわかっているね。」
僕:「シンプルだね。
これで『(x³)´=3x²』であることもわかったね。」
合成関数の微分
シエル:「続いて『合成関数の微分』だよ。
これは難しいけど重要な性質だから、細かくかみ砕いて説明するね。
合成関数っていうのは、一つの関数の中にもう一つ別の関数が入ったものだよ。
たとえば、『y=(x²)²』という関数は、
『u=g(x)=x²』と
『y=f(u)=u²』を組み合わせた合成関数と見ることもできる。」
僕:「『x²』を『u』と置いて
複雑な『y=(x²)²』という式を
『y=u²』という簡単な関数の式に書き換えたんだね。」
シエル:「そういうことだ。
y=f(u)とu=g(x)を組み合わせた関数、
合成関数y=f(g(x))の微分法について考えるよ。」
シエル:「ここまでは大丈夫だね?
ここから、この式の分母分子に
『g(x+h)-g(x)』をかける。」
ミア:「今度は分母分子に同じ数式をかけるのね…
『1』をかけたのと同じことになるから大丈夫なんだね。」
シエル:「切り離した右側の式は、g´(x)のことを表しているね。
左側の式は面倒な形をしているから、単純な式になるように手を加えていくよ。」
ミアは片手をゆっくりと上げた。
ミア:「ハイ!
『h→0ならば、k→0』のところ…
言っている意味がまったくわかりません。」
シエル:「素晴らしい質問だね!
ミクサは、この意味はわかっているかな?」
うっ…アクビは、できないな…。
僕:「hの値が限りなく0に近づくなら、
『g(x+h)-g(x)』は
『g(x+0)-g(x)』に限りなく近づくことになる。
この式の答えは0だから…
h→0ならば、k→0であると言える。
あと、『g(x+h)=g(x)+k』においても、
h=0とすると、
『g(x+0)=g(x)+k』だから、
h=0ならば、k=0でなければいけない。」
シエル:「今の説明で大丈夫かな?
…それじゃぁ、続けるよ。」
シエル:「まとめるよ。」
シエル:「では、この微分法も使えることを試してみよう!
関数『y=(x²)²』を
『u=g(x)=x²』と
『y=f(u)=u²』の合成関数と見なして、この関数を微分してみるよ。」
これで『(x⁴)´=4x³』であることも導けた。
なるほど…シエルちゃんは伏線を張るのが上手だな。
xⁿの微分
シエル:「ここまで、導関数の求め方についていろいろ見てきたけど、
その中でx¹~x⁴までを微分した際の変化についても同時に確認できたね。
これを表にまとめると、微分のおもしろい規則性が見えてくる。」
シエル:「じゃぁミアちゃん、表の❔には何が入ると思う?」
ミア:「え?」
ミアはしばらく表を見つめながら考える。
ミア:「1.2.3.4...、"x"の前の数字が5で、1.2.3...わかった!
『5x⁴』だ!」
シエル:「正解!
小さい数字が前に出た一方、小さい数字自身は1つ減っているね。
この変化は表にまとめてみてみると一目瞭然だよ。」
シエル:「一般にnが自然数のとき、
『xⁿ』を微分すると
『nxⁿ⁻¹』になる。
これが微分の規則性だよ。」
ミア:「ねぇシエル、『x』とか…変数が無い場合はどうなるの?」
シエル:「その場合は定数に『x⁰』をかけてやれば、同じように微分の法則が使えるよ。」
シエル:「この法則を知っていれば微分の計算スピードは格段にアップする!
じゃぁ練習として
『y=5x³+6x²+2x+7』を微分してみよう。」
シエル:「これで準備は概ね整った!
これから波の解析に重要なオイラーの公式を導いていく。
その前に確認だが…
"神の言葉"ミクサはどこまで知っている?」
To be continued.
6000字は無理ゲー...
参考書籍
文系編集者がわかるまで書き直した世界一美しい数式「eiπ=-1」を証明する
文系編集者がわかるまで書き直した 沁みる「フーリエ級数・フーリエ変換」