文系投資家の修行~"神の言葉"を理解せよ!~


スポンサーリンク

※この記事の内容は下記記事からの続きとなります。

・第一章:『複素数の極形式』

・第二章:『正弦波』

・第三章:『三角関数の合成』

・第四章:『微分』

 

CONTENTS

 

閣下、『(a+bⁿ)/n=x』故に神は存在する。何かご意見は?

【レオンハルト・オイラー(数学者)】

 

文系投資家の修行~"神の言葉"を理解せよ!~

神の言葉

シエル:「"神の言葉"…ミクサはどこまで知っている?」

 

『神の言葉』…数学の本を何冊も読んできたのに、未だに僕はこの概念を理解できてない…まさに、"苦手分野"とはこのことだ…。

 

シエル:「Why are you making such a worry face just because I said "Logos"?

("神の言葉"と言っただけで、なぜそんな心配そうな顔をするんだ?)」

 

ミア:「ロゴス?」

 

僕:「ロゴスはギリシャ語で、言語や理性を意味する言葉なんだけど…

キリスト教の人たちは『神の言葉』という意味でこの言葉を使っているみたいだね。

スコットランドの数学者であるジョン・ネイピアは、膨大で複雑な計算を容易にするため対数という概念を編み出した…

その記号は『log』…もちろんその語源は『logos』だよ。」

 

ミアも、不安な気持ちを顔で表現する。

 

ミア:「私…こんな記号、見たことないんだけど…?」

 

シエル:「う~ん…一応高校生で習っているはずなんだけどね💧

対数は指数と関係が深いから、まずはこの指数について簡単におさらいしておくことにしよう。」

 

指数法則

シエル:「さて、どこから説明しようか…

たとえば『2³』は『2×2×2』で『8』となる。

指数とは、『2』の上にある小さい数字『3』のことだね。

指数には指数法則と呼ばれる計算ルールがあり、指数の計算はそれらルールに従って行わなければならない。

 

 

シエルちゃんの説明を聞きいていて、僕はふと疑問に思うことがあった。

 

僕:「なんで、aとbは0より大きくなければいけないのかな?

 

シエル:「自分で数字当てはめて計算してみればいいじゃないか?

指数が分数やマイナスのときにaが0以下だったらどうなる?

 

僕:「そうだね、確かに…ちゃんと自分で考えるべきだったね。

えっと、指数が分数の場合から始めてみよう。

そうか!

aが0より小さいと指数が分数のときにルートの中がマイナスになってしまうんだね。

えっと…虚数のことは考えないでいいのかな?」

 

シエル:「指数法則を虚数まで落とし込むのは高等数学の世界になるから、今は考えないようにしておこう。」

 

僕:「了解。

次は指数がマイナスのときだね。

単純に指数が『-1』のときを考えてみよう。

なるほどね。

この場合はa=0だと分母が0になってしまう

0個のものを分けることはできないからね。」

 

シエル:「疑問は晴れたね。

では、指数法則を使って実際に計算をしてみよう。」

 

 

シエル:「ところで…ミクサは投資家なら日頃から指数の計算をしてるはずだね?

買った株が5年後に倍になっていれば、株価の成長率は何%になるかな?

 

僕:「多分だけど…そんな計算してない投資家が多数派だと思うよ💧

えっと…『5年後に倍』だから『5乗して倍になる数』を求めればOKだね。

5乗したら2になる…

つまり『2』の指数部分をxとおいて…」

 

 

僕:「『2の5分の1乗』が年間成長率になっていて、これは関数電卓を使えば簡単に計算することができる。

計算するとこれは

1.14869...となる。

今回は成長率を『%』で知りたいから、

この数字から1を引いて100をかける

5年後に倍になった株価の年間成長率は約14.8%だね。」

 

ミア:「ふ~ん。

投資家ってこういう計算をしてるんだね。」

 

僕:「最初は数学嫌いの僕には難しかったけど、慣れってすごいね。」

 

シエルちゃんは少し暗い表情で口を開く。

 

シエル:「知識は…使わなければ忘れてしまう。

機械がなんでもしてくれる時代に、人間の行う計算なんてもはや趣味の領域になりつつある。

人類は、不安や恐怖を回避するために学び、そして考える

学問は技術を進化させ、私たちの日常をここまで安全にしてくれた。

このスピードは、直線的なグラフを描かない…

私たちが生きているのは『べき乗の世界』なんだ。

世界がここまで安全なのに、私たちの抱く不安や恐怖は無くならないし、むしろ増えているんじゃないかとさえ思う…。

私は思うんだ…

私たちが怖いのは不安や恐怖を体験することではない、私たちが本当に恐れているのは、"不安や恐怖について『考える』こと"それ自体なんじゃないか?とね。」

 

僕:「もしその仮説が正しいとしたら、僕たちが学ぶあらゆる学問の最終目的は『思考からの解放』になる

でも、そんなこと意識を飛ばすか、全知全能にでもならない限り…まさか!?」

 

その時…ミアは小声でボソッとつぶやく。

 

ミア:「中二病…」

 

僕・シエル:「・・・」

 

シエル:「おっと、すまないね。

指数の話をしていると、変なことばかり考えてしまうよ。

気を取り直して、この指数が変数である関数…

指数関数『y=2^x』のグラフを描いてみるよ。」

 


シエル:「このように、指数関数y=2^xのグラフは、xの値が大きくなればyの値も増加する増加関数であり、xの値が小さくなればなるほど、yの値は0に限りなく近づくが0にはならない。

このような状況を『x軸が漸近線』という。」

対数法則

シエル:「『2³=8』…これはもう大丈夫だね?

対数で求めるのはこの式でいう指数の数…2の右上にある小さい数字『3』のことだ。

これまでは、『2³』が与えられて『8』を求めてきた。

対数は逆に『8』が与えられたとき、8は2の何乗なのかを考える。

これを対数記号『log』を使って

log₂8=3と書き、

3』は2を底とする真数8の対数という。」

 

ミア:「なるほど…でもそれなら9も3になるし、1000も3になるよね?

log₃927=3、log₁₀1000=3で…あってるよね?」

シエル:「さすがミアちゃん!呑み込みが早いね!

では次に、対数同士を足したり引いたりしてみようか!

指数同士の計算にルールがあったように、対数の計算にもルールが存在する。

これを対数法則という。」

 


ミア:「ごめん…私キャパオーバー。」

 

シエル:「確かに、いきなりこれを見せられても、これが本当に正しいのかどうかわからないよね?

では、これが正しいことを証明しよう!」

 

僕:「いや…そういうことじゃないと思うんだけど…。」

 

シエルちゃんは僕の言葉を無視して語り始めた。

 

シエル:「MとNという2つの数が与えられたとするよ。

これをそのまま、aを底とする対数にしてみよう。

『log₂2』や『log₃3』のように、底と真数が同じ場合の対数は1になる。
これより、

ここで、

となる。

したがって、

これで、対数法則①が証明されたね。

同じように、②と③も証明してみよう。」


僕:「なるほど…要は"証明済みだから安心して使って大丈夫"ってことだね。」

 

シエル:「まぁ、そういうことだ。

では、これら対数法則も実際に使ってみるとしよう!」

 

 

底の変換公式

シエル:「これまで見てきたように、対数法則は底が同じ数字である場合にしか使うことができない。

これではあまり実用的ではないから、この縛りを外しておく。

対数は、指数を対数の形に式変形したものに過ぎない

したがって、両者の式が意味するものに違いはない

右の式を左の式に代入してみよう。」

ここからの話で大文字の『M』を使うのは見栄えが悪い…だからここからはMの代わりに『b』を使うことにするよ。

この式で『c』を底とする対数をとると、

対数法則③を使って、左側の式を変形させるよ。

より、

両辺を『logcª』で割ると、式変形は完成だ!

この式を底の変換公式と呼ぶ。」

ミア:「いきなり『c』が出てきたけど…

『c』に入る数字はなんでもいいってことで大丈夫?」

 

シエル:「その理解で大丈夫だよ♪

状況に応じて、都合のいい数字を入れてね。

それでは、この公式を使って問題を解いてみよう!」

 

 

僕:「『c』に何をはめ込むか?…ここまでくるとセンスも必要になってくるね。」

対数関数

シエル:「指数には指数関数という関数があるように、対数にも対数関数と呼ばれる関数が存在する。

対数関数『y=log₂x』を例に、対数関数とはどのような関数なのか見てみよう。」

 

 

シエル:「3本線がある中の、濃いピンク色のグラフが、

対数関数『y=log₂x』の描く曲線だよ。

指数関数ではx軸が漸近線であったのに対し、対数関数ではy軸が漸近線となっている。

さらにこの2つのグラフは一次関数『y=x』を挟んで対称…これはいったいどういうことなのか?

『y=log₂x』の『y』と『x』を入れ替えてみるとその関係性がよくわかる。」

 

 

ミア:「指数関数になった!?」

 

シエル:「そう。

このように、『x』と『y』を入れ替えることでできる関数を逆関数という。

別に覚えておく必要はないが…

指数関数と対数関数の関係性については理解できたかな?」

 

僕:「まるで、富裕層と庶民の資産の増え方を表しているみたいだね。

金持ちや権力者を称賛するなんて馬鹿げてる…。」

 

シエル:「以上で指数・対数の話は終わりだよ。

これから『オイラーの公式』に話を進めていきたいのだがその前に…

そろそろ何か食べないか?」

 

To be continued...

 

 

参考書籍

当記事は、下記書籍を参考に執筆しています。

・東京大学の先生伝授 文系のためのめっちゃやさしい対数

・分解編集者がわかるまで書き直した 沁みる『フーリエ級数・フーリエ変換』

・文系編集者がわかるまで書き直した世界一美しい数式『eiπ=-1』を証明する

 

www.mixa.biz