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「無駄なことをするな!」って言うヤツって何なの?ニュース・ダイエットのすすめ
本当に無駄なものってなに?
あなたがこの一年でむさぼり読んだニュースは、およそ二万本にのぼるだろう。…正直に答えてほしい。そのなかに、あなたが自分の人生や家族や、キャリアや健康やビジネスに関して、よりよい決断を下すのに役立ったニュースはあっただろうか?そのニュースを読んでいなかったら、下せていなかったと思える決断はあるだろうか?
【ロルフ・ドベリ(著書『ニュース・ダイエット』より)】
「無駄なことをするな!」
私は子供の頃から非効率的な人間で、よくこう言われて目上の人に怒られていました。
みんな頭がいいらしく、『自分が無駄だと思ったこと』こそが無駄なことで…
みんな親切心が強いから、自分の考えをお手本にするように、私にアドバイスしてくれるのです。
私は助言を頂く度に、相手の行動を見て、
『月2万円のたばこ代』『高排気量の高級車』『広く浅い人間関係』
は無駄ではないのか?といつも疑問に思っていました。
私が無駄だと思ったことも、その人にとっては無駄ではないのかもしれない…
なら、私がやっていることも、無駄ではないのではないでしょうか?
『あらゆる出版物の90%はクズだ。ジャンルなんて関係ない。』
とはSF作家のシオドア・スタージョンの言葉ですが、
私は他人からの助言の90%は聞く価値すらないくだらないものだと考えています。
でも…それでも、これだけは他の誰かに薦めたい!と思うことが私にもあるのです。
助言なんてうんざりかと思いますが…お付き合いください。
これからの時代の新常識
ニュース・ダイエットです。
ニュースフリーの生活
何も読まない者は、新聞しか読まない者よりも教養が高い。
【トーマス・ジェファーソン(アメリカ建国の父)】
『ニュース・ダイエット』とは、ニュースを一切見ない生活スタイルのことをいいます。
知識人の間ではもはや常識となり始めていて、
歴史学者で有名なユヴァル・ノア・ハラリや、
哲学者だとナシーム・ニコラス・タレブ、
投資家だとジェフリー・ガントラックといった偉人たちもニュース・ダイエット中であることが知られています。
私がニュース・ダイエットを始めたのは、今から約2年前、ロルフ・ドベリの著書『Think Smart』でこの概念を知ってからです。
当時を振り返れば本当に衝撃的でした。
だって、当時は私が「社会人ならニュースくらいチェックしとけよ!」と他人にニュースのなんたるかを教える側の人間だったのですから…。
私がやったことは、
新聞の購読を止め(日経新聞と朝日新聞読んでいた…)、
スマホのニュースアプリを削除し、
『ニュースそうだっ○のか』といったテレビ番組の録画を外し、
グーグルのホームタブ下に私の関心のある記事が表示される設定をオフにしました。
たったこれだけで、生活からニュースのほとんどを排除することが可能なのです。
※あと、もとから私はSNSはやってないですし、ブロガーさんとのやりとりも少数の方に限定しています。
で…やった感想は、それはもう素晴らしいものなのですが、良い面ばかりを伝えるのはフェアじゃないので、ニュース・ダイエットの効用について、メリット・デメリットの双方の観点から評価していきたいと思います。
ニュースを『見る』or『見ない』で脳が変化する!
私たちは、くだらないものに注意が向くように、自分たちの脳をトレーニングしているのだ。
【マイケル・マーゼニヒ(神経科学者)】
これはとても衝撃的な事実なのですが、
ニュースをたくさん消費している人と、ニュースを見ない人とでは、脳の構造が違うということがわかっています。
生活環境が変わると、私たちの脳は新しい環境に適応するため、数年かけて変化していくのです。
神経科学者のエレナー・マグアイアは、MRI検査を用いて、タクシー運転手の脳とバス運転手の脳を比較するという実験を行いました。
大都市のタクシー運転手は、大量の情報を脳内に保存しなければならないのに対し、毎日決まったルートを運転するバスの運転手は、タクシー運転手に比べて記憶量は少なめです。
環境の違いが人の脳の構造を変化させるのか調べたのです。
入社時の2人の脳には、ほとんど違いはありませんでした。
しかし数年後、タクシー運転手の脳は、記憶を司る『海馬』と呼ばれる部位が大きくなっていることが確認されたのです。
しかし、脳の変化はそれだけではなく、タクシー運転手は入社前に比べ、幾何学的な図形を覚えるのが困難になり、バス運転手にはその変化は見られなかったそうです。
つまり、脳のある領域が発達すると、それに伴い別の領域が退化してしまうらしい…。
では、『ニュース脳』と、そうでない脳との間にはどのような違いが生じてくるのでしょうか?
これを研究したのがなんと、日本人神経科学者の金井良太氏です。
この研究では、
複数のメディアを同時に見ることが多い人ほど、注意力や論理的思考、感情のコントロールを司る部位(前帯状皮質)の脳細胞の数が減少する傾向にあるそうです。
つまり、ニュース脳は注意を切り替えるのが早い一方、集中力がすぐに切れたり、怒りっぽくなったりするようです。
そういえば最近、読書していても疲れなくなったような気がします。
結論『脳の変化』
メリット…集中力の向上。イライラすることが減る。
デメリット…マルチタスキング・スキルが退化する。
といったところでしょうか。
しかし、マルチタスキングの能力なんて、本当に私たちに必要なのかは疑問です。
伝説の投資家、チャーリー・マンガーはこんなことを言っています。
いくつものことを同時に行おうとする人は、大きな代償を払うことになるだろう。
学習性無力感
『世界で起きている出来事は、あなたの責任ではない』ジョン・フォイ・ノイマンのこの素晴らしい考え方を、私もまねすることにした。意識的に社会に対して無責任でいることに決めたのだ。そう決めてから、私は前よりずっと幸せを感じられるようになった。
【リチャード・ファイマン(物理学者)】
テロや事故、災害による悲惨なニュースを見て、私たちが感傷に浸る必要はあるのでしょうか?
ネガティブなニュースを見て、何かしらの行動を起こした方は素晴らしいと思います。
しかし、ほとんどの悲惨なニュースは私たち個人がどうあがこうと、解決できるものではありません。
自分ではどうしようもないことと立て続けに対峙してしまうと、私たちはどんどん無気力になり、努力することをやめてしまうのです。
心理学者のマーティン・セリグマンは、犬の身体を逃げられないように固定し、電気ショックを流し続けるという実験を行いました。(酷い実験だ…)
最初のうちは、犬は電気ショックを回避するためにあらゆる行動を試します。
しかし、非情なことに、犬の行動とは関係なく電気ショックは流れたり、そして止まったりするのです。
こういった操作を繰り返していると、やがて、犬は電気ショックを回避しようと努力することをやめてしまいます。
この犬は、『自分の行動ではどうにもならないのだから、何をやっても無駄である』ということを、この経験から学習してしまったのです。
努力が無効であるという経験が生み出す無気力状態のことを心理学者は、
学習性無力感と呼びました。
これは人間の場合でも同じで、
騒音の酷い部屋で過ごさせたり、解決不可能なパズルを「解ける」と偽って挑戦させるなどすれば、簡単に人は、やる気をなくすことが証明されています。
ニュースを消費すると、未解決の問題や、解決される見込みの少ない問題に私たちは絶えず直面することになる。
【ジョディ・ジャクソン(メディア研究者)】
ひょっとすると…私たちが新しいことをなかなか始められないのは、ニュースの見過ぎが原因なのかもしれませんね。
結論『やる気』
メリット…学習性無力感に陥るのを回避できる。
デメリット…一部の人に『薄情者』と思われる。
別にニュースで『暇つぶし』しなくても…
お金のことになると私たちは倹約家になる。それなのに、時間に関してはとんでもない浪費家になる…私たちが本当に倹約すべき唯一の財産は時間だというのに。
【セネカ(古代ローマの哲学者)】
2021年を振り返って、
『2021年の心に残ったニュースランキングTOP.10』を書き出してみましょう。
一年間、本当にたくさんのニュースに出会ったので、選ぶのが大変なのではないでしょうか?
私もニュース・ダイエット中だったとはいえ、大きいニュースは友達や家族、会社の同僚、ブログ仲間といった人から口伝えで入手できているはずなのですが…残念ながら一つも思い出すことができません。
まぁ…ニュースなんてそんなものです。
ニュースの内容など、私たちの記憶にはほとんど残らないのです。
記憶は大きく分類して『長期記憶』と『短期記憶』の2種類に分かれます。
ニュースは短期記憶に保存され、そのままだと短時間のうちに消えてしまいます。
短期記憶を長期記憶に変えるには、意味を付け加えて覚える(意味記憶)か、ストーリ-で覚える(エピソード記憶)、または、内容を反復(リハーサル)しないと基本的には不可能です。
当然、ニュースには意味も無く、物語も無く、翌日には別のニュースが注目されているため内容を反復することもありません。
では、そんな記憶に残らないニュースの消費に、私たちはどれだけの時間を浪費しているのでしょうか?
人々の問題意識や傾向について調査しているアメリカのピュー研究所は、現代人なら誰でも、最低でも1日58分はニュースに時間を割いていると見積もっています。
毎日約1時間の自由時間…
ニュース・ダイエットをするだけで、この時間が手に入るのなら…やらない理由は見当たらないですね。
結論『自由時間』
メリット…毎日1時間の自由時間が手に入る。
デメリット…なし。
少ないほど豊か
チェスのグランドマスターはふつう、負けないことで勝ちを得る。人々は破綻しないことで金持ちになる。宗教はほとんど禁止事項で成り立っている。何を避けるべきかを学ぶのが人生だ。…知識についても同じことがいえる。知識を構築するいちばん役立つ方法は、間違いと考えられるものを取り除くことにある。
【ナシーム・ニコラス・タレブ(著書『反脆弱性』より)】
資産運用では、投資先を分散させればさせるほど、間違った銘柄に投資してしまうリスクが上昇してしまいます。
情報も同じで、毎日50ものニュースに目を通してしまっていては、なにが重要な情報なのか、わからなくなります。
私がまだ10代の頃、私は酷いニキビ体質に悩んでいました。
自分でいろいろ調べていると、どうやら原因は『野菜不足』ではないだろうか?という見解に至りました。
それから、私は毎日意識して野菜を食べるようにしました。
しかし、たくさん野菜を食べているのに、一向に状況は改善されませんでした。
実は、原因は違うところにあって、真の原因は『お菓子の食べ過ぎ』だったのです。
結論は明白だ。ニュースを消費すると、あなたの人生の質は低下する。ストレスを抱えながら生活しなければならなくなり、いらいらしやすくなり、病気がちになって、寿命が縮まる。とても悲しいニュースだが、それでも、このニュースには注目するだけの価値がある。
【ロルフ・ドベリ(著書『ニュース・ダイエット』より)】
人生をより良いものにしたいのであれば、新しいことを始めるのではなく、悪い習慣をやめた方が高い効果が期待できます。
そろそろ情報の過剰摂取はやめにして、興味のあることだけで頭の中をいっぱいにしてみてはいかがでしょうか!?
以上です。
社畜サラリーマンに幸あれ☆彡
結論
◎自分が無駄だと思うことでも、その人にとっては有用なものかもしれない。他人のやっていることにいちいち干渉するのは建設的ではないだろう。
◎大量にニュースを消費する環境では、その環境に適応するよう私たちの脳は変化する。その結果、集中力が低下し、イライラしやすい体質になる。
◎若干のことは私たちがコントロールできる範囲にあるが、それ以外は私たちのコントロール外にある。コントロール外の出来事を気にしても状況は何も変わらないことを理解しよう。
◎情報を追加するより、削減するほうが得られるものはずっと大きい。『何を避けるべきなのか』これを学ぶのが人生であり、『より少ない』ことにこそ豊かさがあるのだ。
◎それでも、ニュースは世界にとって必要なものだと考えている。この業界のますますの発展を祈るが、私の知らないところでそうなってくれ。
参考書籍
Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法
Think Smart 間違った思い込みを避けて、賢く生き抜くための思考法
Think right 誤った先入観を捨て、よりよい選択をするための思考法