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投資関連本によく出てくる『ベイズ推定』ってなに?
世界的投資家はみんな使っている!!
❝確率でモノを考えるという初歩的ではあるがやや直感に反する技術を身に着けないと、人生という尻蹴とばし競争に片足で参加するはめになる。❞
【チャーリー・マンガー(天才投資家)】
株式投資について学ぶ上で決して避けては通れないのが『確率の計算』です。
100%文系脳の私のような投資家には非常に高いハードルであり、ここで挫折してしまう人も多いでしょう。
そんな確率の計算の中でも、株式投資において特に重要なのが
ベイズ推定です。
ベイズ推定は多くの投資本で紹介されていて、例えば
ウォーレン・バフェットの銘柄選定にも、
ハワード・マークスの市場サイクル説にも、
レイ・ダリオのアルファ・オーバーレイにも、
この思考法が応用されています。
しかし、この『投資の基礎』とも呼べる思考法について学ぼうとすると、
『標本空間』『ベイズ定理』『確率の剰余定理』と…
いつまで経っても実践で使える段階に到達しないのです!
そこで当記事では、それらを全て省略したうえで『ベイズ推定』を株式投資に応用する方法を紹介したいと思います。
『確率でモノを考える』という"技術"を身に着け、投資家として更なる高みを目指しましょう!
ベイズ推定
簡単に説明すれば、ベイズ定理は新たな予想は二つの要素で決まるとする。事前予想に、新しい情報の『診断的重要性』を掛けるのだ。
【フィリップ・E・テトロック(心理学者)】
そもそも、ベイズ推定ってなに?
て感じかと思いますので、どんなものかを簡単な例で説明してみます。
なんでもゲームにしてしまう面倒臭い友達の気まぐれで、あなたは『数当てゲーム』に嫌々参加することになりました。
このゲームでは、1~10までの重複しない数字が書かれた10枚のカードを使用します。
友達は1枚カードを選び、テーブルの上に伏せて置きました。
早くこのゲームを終わらせたかったあなたは適当に数字を答えようとします。
この場合、選んだ数字が当たる確率は10分の1…
つまり10%です。
数字を答えようとした瞬間、友達がヒントを言います。
「カードには5以下の数字が書かれているよ。」
そして、当たれば夕食をご馳走すると付け加えます。
この情報で確率は5分の1…
20%に修正されました。
やる気になったあなたは「もう少しヒントが欲しい」と友達にヒントを求めます。
友達はニヤニヤしながら最後のヒントを言いました。
「その数字は奇数ではない。」
この追加情報で確率はさらに変わり半分…
50%になりました。
「カードに書かれた数字は"2"だ!」
見事、あなたは夕食代を浮かすことに成功したのでした。
この例でやったように、最初に事前確率を設定し、新たに得られた情報を基に確率を修正していく…これがベイズ推定です。
これを数学的に計算してみようというわけです。
では、ここから本題の『ベイズの公式』について話していきます。
※見慣れない文字が入っていますが、やることはただの分数の計算になりますので、見た目ほど難しいものではありません。
私たち投資家が知っておくべき公式はたった一つ…
ベイズの展開公式です。
一見、難しそうに見えますが…
公式に使われている文字の意味がわかれば、そこまで難しい数式ではないことが理解できると思います。
それぞれの意味について説明します。
『P』はprobabilityの略で『確率』の意味で、
『H』はhypothesisの略で『原因』を、
『D』はdataの略で『結果』を意味します。
『P(H|D)』は『"D"のもとで"H"が起こる確率』という意味で、逆に
『P(D|H)』は『"H"のもとで"D"が起こる確率』となります。
(難しいですが…)
まぁ…文系の我々は『習うより慣れろ!』です。
とにかく使ってみることにしましょう!
『ベイズの展開公式』を株式投資に応用する。
では、『ベイズの公式』を使って、
投資した会社の株価が市場平均の上昇率を上回る確率を求めてみます。
以前私は日経225銘柄の中で、平均を上回る銘柄は何社あるのか?調べたことがあります。
日経225銘柄中『平均』を上回る銘柄は何社ある? - ミクサの脱社畜計画
その結果、市場の平均を上回って成長できる会社は、全体の3分の1程度であることがわかりました。
平均を上回って成長する会社を『優良企業』
平均以下の会社を『並みの企業』とし、上記事の結果から、事前確率を設定します。
P(H1)=34%(選んだ銘柄が優良企業である確率)
P(H2)=66%(選んだ銘柄が並みの企業である確率)
適当に選んだ1社に投資し続けた場合、市場平均に勝つ確率は34%というわけです。
このままでは、ただの確率の低いギャンブルですね…。
ここで、投資する銘柄に条件を付けて
『自己資本比率が70%以上』の会社のみに絞ってみると確率はどう変わるでしょうか?
仮に、『自己資本比率70%以上』の会社が優良企業の中に60%、並みの企業の中に40%存在していたとします。
これを基に尤度を次のように設定します。
(尤度の和は100%にならなくてもOKです。)
P(D|H1)=60%(優良企業なら自己資本比率70%以上である確率)
P(D|H2)=40%(並みの企業なら自己資本比率70%以上である確率)
ここまでわかれば『ベイズの公式』に当てはめて
P(H1|D)『自己資本比率70%なら優良企業である確率』を計算していきます。
結果、投資する銘柄を『自己資本比率70%以上』に絞ったことで、
市場平均に勝つ確率が
34%→44%に引き上げられました。
勝つ確率は上昇しましたが…コイン投げよりも低い確率では、勝負しても勝てる気がしないですよね。
ベイズ推定の面白いところはここからです。
より確率を上げるため、
『自己資本比率70%以上』という条件に追加して『ROE10%以上』という条件を設定することにしました。
上述の通り、『自己資本比率70%以上ならば優良企業である確率』が44%と既に算出されているので、これをそのまま事前確率に設定します。
P(H1)=44%(選んだ銘柄が優良企業である確率)
P(H2)=56%(選んだ銘柄が並みの企業である確率)
このように、1回目の事後確率を2回目の事前確率として利用する考え方を
ベイズ更新といいます。
『ROE10%以上の会社』について調べた結果…
優良企業の中に70%、並みの企業の中に30%存在していました。
尤度を次のように設定します。
P(D|H1)=70%(優良企業ならROE10%以上である確率)
P(D|H2)=30%(並みの企業ならROE10%以上である確率)
再度計算します。
ベイズ推定により
『自己資本比率70%以上』且つ『ROE10%以上』の銘柄に投資した場合、
市場に勝つ確率は65%と算出されました。
これなら、まずまずですね。
確率をもとにポートフォリオを構築する。
通常、ポートフォリオ構築の第一歩は、投資対象がある種の絶対的な基準を満たしているかどうか確認することだ。いくら洗練された投資家でも、「十分に安ければ、何でも買う」とは言わないだろう。たいていは、それぞれが設けた最低基準を満たす投資先候補のリストを作成し、特にお買い得なものを選び出す。
【ハワード・マークス(オークツリー・キャピタル)】
自分の投資基準を設定し、ベイズ推定で確率を算出したなら、その銘柄が割安なのを確認した後、資産の何%をその銘柄に投資するかを決めていきます。
使うのは
ケリー・モデルです。
ケリー・モデルは、勝つ確率がわかるギャンブルでの投資リターンを最大化させるための公式です。
ケリー・モデルに当てはめて計算すると、
勝つ確率65%の銘柄に投資する際は、自分の資産の30%を投じるのが最適だと算出されます。
まぁ…理論上はそうなのかもしれませんが、私は理論を信じないので、ハーフ・ケリー(ケリーの2分の1)を使うようにしています。
どうでしょうか?
確率を算出することで、メリハリのある投資スタイルになりましたね!!
今回は文章が長くなりすぎるという問題もあり、尤度[P(D|H)]には適当な数字を入れました。
十分なサンプル数をもとにした条件付き確率が算出できれば、いつか…気が向いたら紹介したいと思います。
以上です。
投資家の皆様の健闘を祈ります!
(`・ω・´)ゞ
※投資は完全自己責任でやりましょう!
まとめ
●私たちは、イメージに惑わされるあまり、基準となる確率を無視してしまう。確率について考える際は必ず、事前確率を設定しよう。
●ベイズ推定は、事前確率を新たに得た情報に応じて変化させていく思考法である。
●ベイズの理論では、1回目の事後確率は2回目の事前確率となる。
●確率を算出することで、メリハリのある株式ポートフォリオを構築することができる。
●数学的思考法は意味を理解するよりも、実際に使って慣れてしまう方が早い。習うより慣れろ!これが重要なポイントなのだ。
参考
株で富を築くバフェットの法則[最新版]---不透明なマーケットで40年以上勝ち続ける投資法
市場サイクルを極める 勝率を高める王道の投資哲学 (日本経済新聞出版)