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上昇相場はまだ序章。ミクサの投資戦略
4つの波
世界に波がやってきて、その波は1933年から始まりました。
『暗黒の木曜日』以降、アメリカは深刻な不況に立たされていました。
この不況を脱するため、当時のルーズベルト大統領は、『政府が雇用をむりやり創出することで、失業率を減らす』というニューディール政策を実行しました。
ここから今日まで続く、ケインズ経済学の歴史が始まったのです。
『ケインズ経済学の考案者』ジョン・メイナード・ケインズは言いました。
もし大蔵省が古いビンに銀行券を詰め込み、それらのビンを廃炭鉱の中の適当な深さまで埋めて…(中略)私企業に再び掘り出させることにすれば、それ以上失業が増える心配はなくなる。そして、その影響によって、社会の実質所得や資本資産もまた、現在あるよりもはるかに大きなものになることだろう。
1971年、第二波が起こります。
ベトナム戦争での戦費を補うために、アメリカは大量のドル紙幣を発行していました。
世界に供給されたドル紙幣の量が、アメリカ国内の金保有量を超えてしまったため、当時のニクソン大統領は「ドルの金との兌換を停止する」と宣言したのです。
これにより、ドルの価値は、他国通貨・株式・コモディティ・不動産に対して低下しました。
ニクソン大統領は言いました。
我々は今やすべてがケインジアンである。
第三の波はまだ記憶に新しい2008年の量的緩和政策(MP2)です。
政府が国債を大量に発行し、それを中央銀行が銀行券を増刷して買い取ることで、市場にお金を供給したのです。
これが景気を刺激し、経済を急成長させたことから、後にこの政策は世界のニューノーマルとなりました。
当時FRB議長を務めていたベン・バーナンキは、デフレに苦しんでいた日本に対して、「ヘリコプターでお金をばら撒けばいい」と提案。
この発言がきっかけで、市場関係者は彼のことを
ヘリコプター・ベンと呼びました。
そして第四の波、コロナ禍の緊急財政支援策です。
歴史を通じて、世界の国々は不況が訪れると、現金の価値を低下させることで、経済の立て直しを図ってきたのです。
これら政策はメリットばかりでほとんどデメリットが存在しないのが特徴です。
政府債務が雪だるま式に拡大することを除いては…
『ディストレストの専門家』ハワード・マークスは言います。
100年前、ケインズの前までは、財政赤字はタブーだった。ケインズは、経済が弱い時には雇用を創出し経済を浮揚させるために財政赤字にしろと言った。でも盤況な時には、財政黒字にして借金を返済しろと言った。みんな前半だけ使い、誰も後半を心配しなくなった。
金持ち→貧乏人へ
『ヘッジファンドの帝王』レイ・ダリオは言いました。
1930-45年、1970-80年に行われたような政策を行わなければならない。莫大なお金を増発し、価値を下げ、大量の債務と政府財政を、通常は大規模増税を含めて、リストラしなければいけない。
2021.4.28
アメリカのバイデン大統領は、富裕層のキャピタルゲイン税や所得税、相続税、更には法人税を引き上げる増税案を打ち出しました。
また、パラダイム・シフトが起こったようです。
これまでお金は、
『政府→大企業→中小企業・個人』という順で流れていました。
おそらく、これからは矢印の順番が変わることでしょう。(下図)
なぜ、今更このような増税案を打ち出そうとしているのでしょうか?
それは、格差拡大で国が衰退していくのを防ぐためです。
古代エジプトは3000年に渡って、繁栄を謳歌していましたが、それは格差拡大によって崩壊してしまいます。
政府は国民から税金を徴税しますが、その間に『徴税請負人』を挟み、間接的に税金を徴収するというシステムが古代エジプトにはありました。
徴税請負人はその特権を乱用し、不当に税金を接収、着服することで、彼らと一般大衆の間に格差が拡大していったのでした。
これが国の分断を招き、国力を低下させていったのです。
これとまったく同じ制度が古代ローマ帝国、そして中世フランスにも存在しました。
フランスでは3%の貴族が富の90%を独占していたのです。
貧困にあえぐ国民は団結し、後にフランス革命を引き起こします。
現代に目を移すと、これとよく似たものが世界規模で拡がっています。
それがタックスヘイブン(租税回避地)です。
富裕層や大企業は節税を名目に、税金の安いタックスヘイブンに拠点を移そうと考えます。
国は彼らに出ていかれては困るので累進課税の減税で対応してきました。
そのしわ寄せは通常、公平に『消費税』という形で徴収されます。
2019年、スイスの金融企業クレディ・スイスは、「世界中の富の45%は、たった1%の者たちによって独占されている」と結論付けました。
まるでフランス革命前夜のようですね。
歴史を通して、格差拡大は大国を衰退させてきました。
そして今、アメリカは格差是正に動き出しました。
私たち投資家は、この動きを強く認識しておく必要があるでしょう。
私たちがこれから入る環境
通常の量的緩和政策では、本当にお金が必要なところにお金を届けることはできず、格差は拡大の一途を辿ってしまいます。
そこで考えられたのが、量的緩和と富裕層からの税金の接収を同時進行で行う
MP3という政策です。
ブリッジウォーターのボブ・プリンスは次のように述べています。
MP3でははるかにインフレを生み出す可能性がある。文字通り、お金を人々の手に持たせ使わせようとしている。どの人に持たせるかも選択できる。
この動きは、これから日本や欧州でも追随していくものと考えられます。
プリンス氏は、「インフレは米国だけの問題に留まらず、世界的に進行するだろう」と語っていますが、日本では円高がインフレの進行を抑制し、緩やかなものになると私は考えています。
ただ、私は円高が株価下落を引き起こすとは考えていません。
下のグラフは、1970年から1990年までの日本株・米国株・ドイツ株の推移をまとめたものです。
(※グラフの変動がわかりやすいように、米国株は株価を10倍にしています。)
1985年のプラザ合意では、円とドイツの通貨マルクは対ドルで大幅に切り上がりました。
しかし、日本株はその後も力強く上昇し、最後にはバブル化してしまいましたが…日銀が金融引き締めを早めに実行すれば、成長軌道を維持できたと言われています。
DAX指数においては、その後も2000年まで上昇相場を継続し、現在は当時の最高値をも超えています。
なぜ50年前のデータをわざわざ引っ張り出してきたかと言うと…
現在の状況は当時の『ニクソン・ショック』や『プラザ合意』の時と酷似していると注目されているからです。(私はプラザ合意との近似性が高いと考えています。)
歴史はまったく同じようには繰り返しませんが、よく似たことが繰り返し起こるものです。
私は、今後の日本株の値動きが当時のドイツ株と近似し、中国株がプラザ合意後の日本株とよく似たものになると考えています。
チャートに目を戻すと、これら2つの出来事が起こってから翌年に一旦相場のピークを付けています。
おそらく、現状がピークである可能性が高く、20~30%の下落がおこると思われますが…その後株価は力強く上昇することでしょう。
レイ・ダリオは私たち投資家が現環境下で、どのように行動すべきかを端的に、次のようにまとめています。
私が言いたいのは、よく分散し、謙虚であり、マーケットタイミングをせず、現金の危機を認識しろということだ。
以上より私は、
①金利は現在の超低水準をキープする。
②短期的に20~30%の調整はあるかもしれないが、長期的に株高。
③長期的に円高(ドル安)。
④中国株はバブル化。
⑤大型株よりも中・小型株が優位。
という見通しで、今後の投資戦略を練っていきたいと思います。
私のポートフォリオ
今月は、『銀ETF』『ロシア株』から撤退。
『UNITED株』を新たにポートフォリオに組み入れ、『中国株』を大幅に買い増ししました。
商社株では、『伊藤忠商事』を少しだけ買い増ししています。
次に、購入単価と現在(2021.4.30)の価格です。
今後の経済政策が『ケインズ経済学』を踏襲したものとなるのであれば、今後の展望について、次の2つのことが言えます。
①中銀は金利を上げようとすることはない。
②インフレ率は増税で調整される。
安倍政権下で日本がやってきたことの延長線です。
ここから私は、
①市場平均株価は債券との比較で適正となる水準まで上昇する。
②テーパータントラム(テーパリングによる暴落)は、ありそうにない。
と予想します。
この環境下で金や銀は役に立ちそうにありません。
今後は完全撤退も視野に考えています。
一方で、あらゆるものが目まぐるしく変化しているため、日を追うごとに不確実性も増しているのが現状です。
この環境を逆手にとって成長できる市場、『ベンチャー・キャピタル』に注目しています。
『SBG』の孫正義氏は、『IT企業に特化したベンチャー投資は儲かる』ことを証明して見せました。
一般的に、ベンチャー企業の95%は倒産するか、成長しても中程度の企業にしか育たないと考えられています。
しかし、急成長する企業の多くはIT関連の企業から生まれていることは、統計をとれば明らかです。
これは基準比率と呼ばれるものですが、
大企業に成長する基準比率が高い業種のみから、ベンチャー企業を選抜し、広範に分散投資することで、儲かる確率を格段に高めることができるのです!
残念ながら『SBG株』は私の投資基準を満たしていないので、VC最大手の『ジャフコ・グループ』と比較にて、過小評価されている『UNITED株』に投資していくことを決めました。
貴金属やビットコインなんかよりも、よっぽどエキサイティングな投資ではないでしょうか!?
パーティーは終盤。でも、まだまだ続く!
ポーカープレーヤーなら誰でも、フォールド(降りる)、コール(乗る)、レイズ(賭け金を上げる)という選択肢があるのはわかっている。そしてエキスパート級ではないプレーヤーは、相手プレーヤーがレイズすると、自動的に相手の手札が強いと思い込む。まるで、賭け金と手札に相関関係でもあるかのようにね。
【アニー・デューク(プロのポーカープレーヤー)】
私たちが株式市場の将来を予測する際は、政府・中央銀行の立場に立って考えないといけません。
ポーカーのゲーム中、自分の手札がかなり良い手札だった場合、私なら『レイズ』だけは使わないでしょう。
相手に『強い手札』だと思われて、勝負を降りられては困りますからね。
同じように私たちは今、テーパータントラムに怯えています。
でも、もし私が中央銀行の総裁なら…
コロナ禍に更なる不況の追い打ちをかけるようなことだけは絶対に避けようとするでしょう。
14世紀のヨーロッパで猛威を振るったペストは、収束までに13年の年月を要しました。
そこまで長くコロナ禍が続くとは思いませんが…
この株高はまだしばらくは続きそうですね。
我ながらもっともらしいシナリオができたと満足していますが…
もちろん、このシナリオが間違っている可能性も十分に存在します。
例えば、
①国が大企業に課す税金を引き上げる。
②大企業の中にはタックスヘイブンに逃げようとする企業も出てくる。
③それが大企業のイメージを低下させ、アンチを生み、売り上げが激減する。
④業績が赤字転落し、社債の返済が滞り、不良債権化する。
⑤銀行は大損害を被り、これが金融不安を引き起こす。
といった可能性も決してゼロではありません。
今、市場ではプロスペクト理論が働いています。
確実な2%の損失を回避するために、多くの人がリスクを選好しているのです。
経験上、こういった投資がいい結果に繋がった試しはありません。
現状、投資する良い環境が整っているのは事実ですが…
株式(60%):現金等価物(40%)のポートフォリオを、ほんの少しオフェンス寄りにしてもいいのでは?程度に考えておきたいですね。
以上です。
投資家の皆様の健闘を祈ります!
(`・ω・´)ゞ
※投資は完全自己責任でやりましょう!
まとめ
●現在、世界経済を動かしているのはケインズ経済学である。
●世界がケインズ経済学を踏襲する限り、金利の上昇はありそうになく、インフレ率は増税にて調整される可能性。
●円高が株価下落を引き起こすとは思わない。
●市場平均株価は、短期的に20~30%下落する可能性はあるが、その後は債券との比較で適正な水準まで上昇するだろう。
●この仮説を信じるのであれば、一時的な価格変動を恐れてはいけない。大きく下がることがあれば買い増せ!
※訂正とお詫び
当記事は「ケインズ経済学が世界の標準」という前提で執筆しましたが、間違いをご指摘頂いたので、再度確認しましたところ…
現在は、『新古典派経済学』と『新自由主義経済』が標準であるということを確認いたしました。
ここに訂正し、お詫び申し上げます。
ただ…
日本では、好況になろうとすると、金融引き締めよりも先に増税が先行しています。
バイデン大統領の増税案や、MMT理論が注目されるようになったことから、ケインズ経済学への回帰が起こっているのでは?と私は考えています。
よって、当記事に記した私の見通しに変化はございません。
今後は、より事実確認に注意を払って記事を書くよう精進して参ります。
参考
https://www.financialpointer.com/jp/
ケインズかハイエクか: 資本主義を動かした世紀の対決 (新潮文庫)
お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」