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今後起こり得る3つのシナリオと、最良のポートフォリオ編成。
今『わかること』と『わからないこと』
私は、知っていることに比べたら知らないことばかりの「馬鹿なヤツ」だということをはっきり言っておこう。人生で成功と言えることがあったとしたら、私が何かを知っていたからというよりも、知らないことにどう対処するかを知っていたからだ。
【レイ・ダリオ-『PRINCIPLES』より引用】
私たち投資家が今後の投資戦略を練っていくうえで重要なことは、私たちが『わかっていること』と『わからないこと』を認識して考えを整理することです。
皆さんは自分の知識量に自信は持てているでしょうか?
この質問に対し、『自信満々』と胸を張って答えることができた方は、恐らくこれから厄介な事態に巻き込まれてしまうことでしょう。
心理学者のエイモス・トベルスキーは次のような名言を遺しています。
自分に知らないことがあるかもしれないと考えるのは恐ろしい。だが、もっと恐ろしいことがある。世の中というものが概して、何が起きるのか正確に知っていると信じている人々によって動いていることだ。
そこで当記事では、最初に私が『わかっていること』をまとめ、そこから『わからないこと』について考えられるシナリオから、最良のポートフォリオ編成について考えていきます。
『知り得ないこと』を受け入れ、不確実性をヘッジしましょう!
私が『知っていること』まとめ
私が知っていることは大きく分けて次の10項目です。
①現在、私の知る限り、新興国を含む19の中銀がQE政策を行っており、莫大な貨幣が市場に供給されている。
②中銀による資産買い入れによって、主に先進国において債券価格が『リターンの無いリスク』の領域に到達した。
③主要先進国の中銀は、インフレ目標を2%に据えており、ほとんどの国債金利は実質的にマイナス金利となっている。
④高過ぎる債券には下落圧力がかかる。そのため、株式・債券間の逆相関関係は崩壊、分散の恩恵が特に危機時に低下した。
⑤国債金利が低下したため、株式の価格は債券との相対比較において割安に見えてしまう。
⑥『株式の強気相場』と『コモディティの強気相場』は交互に訪れており、最近のコモディティ価格は上昇に転じている。
⑦現在、世界は米中『新冷戦』の真っただ中にある。
⑧主要先進国はいずれの国も、金融緩和を目いっぱい実施しているのに対し、東側の国々や多くの新興国には未だ金利が存在している。
⑨近年、アジアの多くの国で対外純資産額が拡大している。これは資金がアジアにシフトしていることを意味する。
⑩米国債イールドカーブのスティープ化が示すように、市場は『インフレになる』と考える投資家が優勢である。
大まかに現状をまとめてみました。
頭の悪い私にしては上出来な現状分析ではないでしょうか!?
これら現状から、投資してリターンが得られそうな資産は、インフレにポジティブな株式や貴金属が思い付きますが…
ここは少し踏みとどまって考えないといけません。
私にはまだ『わからないこと=リスク』があるからです。
私の『わからないこと』は現時点で2つあります。
①インフレ率は今後本当に上昇するのか?
②金利はどのように推移するのか?
です。
私はこれらを正確に予測できる人はいないと信じています。
世界中の企業は、これらを予測するためだけに、経済の専門家を高給で雇っています。
彼らは2度続けて予測を的中させることができれば、大金を手に会社を辞めることができますが…ほとんどの専門家はずっと雇われの身のまま一生を終えるのです。
将来の株価を予測するには、金利を予測しなければならず、金利を予測するには物価を予測しなければなりません。
しかし、金利を予測することは不可能なのですから、株の値動きを予測することも不可能なのです。
そこで、ここからインフレと金利が辿るシナリオについて考察し、結果から最良のポートフォリオ編成について考えてみたいと思います。
シナリオ①:インフレ率は2%付近で安定し、金利は現水準をキープする
主要先進国中銀の目指すシナリオです。
このシナリオでは、インフレ率は2%前後で安定し、中銀は現政策を継続するため、金利は現在の超低水準をキープします。
この場合、
『(資本収益-税金)>2%』を満たさない金融資産は全てゴミとなります。
このシナリオを主張する筆頭が、『ヘッジファンドの帝王』レイ・ダリオです。
レイ・ダリオは現状の金融・財政政策を1971年のニクソン・ショックと照らし合わせて次のように語っています。
これは、富を金融資産に移転させる。私の1971年の教訓のように、いつも株高になる。いつも金が上昇する。
このシナリオから3つの資産クラス(株式・債券・貴金属)が受ける影響として考えられることは、
・株式→ポジティブ
・債券→ネガティブ
・貴金属→ポジティブ
です。
レイ・ダリオは言います。
貨幣的インフレとは通貨やお金の価値が下がることで起こり、1970年代のスタグフレーションなどがそれだ。それが起こるのは、みんなが債券を保有したがらなくなるからだ。私からすれば、現金や債券を保有するなんて相当ばかげたことに思える。
シナリオ②:物価はデフレになり、金利は高止まりする
現在の日本の状況です。
このシナリオでは、現金と債券が価値保全に役立ち、貴金属には下方向への圧力がかかります。
このシナリオを基にポートフォリオを組んでいるのが『債券王』ジェフリー・ガントラックです。
ジェフリー・ガントラックは現在、
株式(主にアジアの国々)
債券(主に米国30年債)
金(最近はビット・コインにも手を出した)
現金
のそれぞれに25%ずつ投資するというスタイルを採用しています。
このシナリオが実現した場合、資産の受ける影響は…
株式→ニュートラル
債券→ニュートラル
貴金属→ネガティブ
こんな感じでしょうか?
ジェフリー・ガントラックは言います。
現在は債務過多のためにデフレになっている。多分ね。将来は莫大な貨幣増発のためにインフレになる。多分ね。
シナリオ③:不愉快なインフレと金利急上昇
いわゆるスタグフレーションに陥るというシナリオです。
このシナリオでは、金利が急騰するので債券の価格が急落します。
債券が下落すると、相対比較で株式の価格は割高となるので、株価も急落します。
インフレなので現金も安全な資産とは見なされず、貴金属への需要が拡大すると考えられます。
このシナリオを予想している代表格が『冒険投資家』ジム・ロジャーズです。
今回の危機は非常に厳しいものになるので、大学教授や中央銀行が「金を買っても意味がない」と言っても、多くの人は気にしないで買うだろう。だから私は、金と銀をたくさん買って準備している。…それは健全だからではなく、多くの人がそれを健全だと思うからだ。
このシナリオでは、
株式→ネガティブ
債券→ネガティブ
貴金属→ポジティブ
という値動きが想定されます。
これは考えたくはないシナリオですが…人為的にインフレ率を管理するのは相当に困難であると言われています。
以前紹介した交通渋滞でもそうですが、
こういったものは、ある領域を超えた途端一気に生じる現象なので、私たちも無視するべきではないでしょう。
ジム・ロジャーズは言います。
みんな貴金属を他でもなく保険として保有すべきだ。不要であることを望むとしても、必要になるかもしれない。そして、大儲けできるかもしれない。
最良のポートフォリオ編成
以上、『緩やかなインフレ』『デフレ』『不愉快なインフレ』という3つのシナリオについて考えてみました。
ここからまずは、
株式・債券・貴金属の3つの資産クラスから、脆弱なものを排除します。
『脆弱なもの』とは今の環境が続かないと壊れてしまうもの…つまり良くても無傷なものです。
今回取り上げた3つのシナリオのうち、
株式は3分の1の確率で上昇し、
貴金属は3分の2の確率で強気です。
しかし、債券は3分の2の確率で下落し、良くても現状維持です。
これより、債券は現環境下では脆弱な資産と考えポートフォリオから完全に外した方がいいでしょう。
多くの投資家が採用する
【株式60:債券40】のポートフォリオを踏襲するのであれば、
【株式60:貴金属20:現金20】が最も好ましいポートフォリオ編成かと思います。
私はコロナ危機後から、一貫してこの形を基準に投資を続けています。
ただ、一つだけ注意しておくことがあります。
それは当たり前のことですが…
『株式』なら何でも良いというわけではないということです。
世界最大の資産運用会社ブラックロックのラス・ケステリッチの言葉を引用すると
『要塞のようなバランスシートで、一貫した収益性が保てるもの』
に限るというがポイントです。
このたった一言が株式投資の難しさを物語っていますね…(汗)
では、これらを踏まえ今後の投資戦略を練っていきます。
私のポートフォリオ
今月は、中国・ロシア株をETFで購入し、『ブシロード株』から撤退。
金保有比率を見直し、銀に分散させました。
次に購入単価と現在の価格です。
だいぶ含み損が目立ってきましたね…。
先月強気で買い増した金ETFの保有量をかなり減らしました。
理由は、JCJさんの記事を読んだ後、「金より銀の方がいいかも…」と思ったからです。
金は埋蔵量が調査済みであり、新しく見つかるとしても、採掘がかなり困難である可能性が高いことから、採掘コストが割高になり、それが金価格を下支えすると信じていました。
どうやら…そうではなかったようです。
事実が変わったなら、考えも変えなければいけません。
『スーパー経済学者』ジョン・メイナード・ケインズもこう言ってます。
情報が変われば、意見は変わる。貴方は違うのかい?
JCJさん、有益な情報ありがとうございました!
次に、『ブシロード株』から撤退した理由です。
日本のアニメ市場は、人口減少もあり、すでに天井を付けているように感じています。
テレビ需要は今後、坂道を転げ落ちるように衰退していくと思われ、アニメ市場を牽引するのはライブエンターテイメントと映画がメインになると考えられています。
ブシロードはこの両方に優れた企業だと思いますが、コロナ禍が想定外に長期化する懸念から、「難しい状況が続くのではないか?」と考えました。
それでも…次の経済危機が起きた際には、応援したいと考えています☆
最後に中国・ロシア株です。
現在、世界は米中新冷戦の真っただ中にあり、どちらが覇権を握るのかは誰にもわからない状況です。
1985年のプラザ合意の教訓から、中国株は近い将来バブル化すると考えています。
かなり前から投資したいと思っていましたが…何に投資すればいいのかわからなかったので、投資を見送っていました。
考えがまとまったので、投資を始めていきます。
今後の展望
現在の市場の奇妙な側面は、リターンを探すのが簡単なのに、ヘッジを探すのが不可能なことだ。ほとんどのリスク資産がじりじり上げる中、逆方向に動く資産を見つけるのがどんどん難しくなっている。
【ラス・ケストリッチ(ブラックロック)】
現在市場はシナリオ①(レイ・ダリオの見通し)に沿って進行しているように見えます。
ところで…
レイ・ダリオは「今回はこれまでとは違う」と言っていますが、『今回は違う確率』はいったいどの程度あるのでしょうか?
1929年:世界恐慌
↳アメリカの『永遠の繁栄』
1989年:日本のバブル
↳人間は裏切るが、土地だけは裏切らない!
1999年:ITバブル
↳これは『ニューエコノミー』だ!
2008年:サブプライム危機
↳不動産はインフレへの耐性があり、確実に利益を生み出す!
バブル時には必ずと言っていいほど、「今回は違う」と主張する人が出てくるものです。
しかし、歴史を通して「今回は違う」が実現したことなどほとんどないのです!
だから私は、今回も過去と同じように株価は暴落すると考えます。
ただ…周りを見渡すと、ほとんどの投資家は株価下落を警戒していますし、メディアもバブル崩壊を煽る側が多数派です。
なので近々、最後の一上げが来ると私は信じています。
今後は、現金・貴金属の比率を高めると同時に、中国株を積極的に仕込んでいこうと考えています。
最後に、ケストリッチ氏が『最良のヘッジ手段』について自身の結論を述べているので、紹介しておきます。
まだヘッジ手段を探している投資家に一言…現金を。
以上です。
投資家の皆様の健闘を祈ります!
(`・ω・´)ゞ
※投資は完全自己責任でやりましょう!
まとめ
●損をする人は二種類いる。何も知らない人と、何もかも知っている人だ。
●景気循環サイクルによって、コモディティ価格は今後も長期的に上昇していく可能性。
●物価と金利を正確に予測できる人はいない。私たちには、想定し準備することしかできない。
●プラザ合意の教訓から、中国株で近い将来バブルが発生する可能性。
●バブル時には必ず「今回は違う」と主張する者が出てくるが、歴史を通して今回は違う可能性などほとんどない。最良のヘッジ手段として現金を保有しよう。
参考
https://www.financialpointer.com/jp/
投資で一番大切な20の教え 賢い投資家になるための隠れた常識 (日本経済新聞出版)
お金の流れでわかる世界の歴史 富、経済、権力……はこう「動いた」