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今起きている『市場の変化』まとめ。ミクサの投資戦略
"最悪"が現実味を帯びてきた…
現在(2007年半ば)、ほとんどの人がリスクの高い投資を進んで行っている。伝統的で安全性の高い投資では雀の涙ほどのリターンしか得られそうにない、というのが主な理由である。…プラスの材料で上昇し、マイナス材料が生じてもすぐに回復する、というのが最近の市場で見られる傾向だ。…主だった市場の中で、私の目で見て価格が過小評価されている、あるいは人気がないと言える分野はない。こうした風潮に乗るかどうか、それが重要な問題だ。
ハワード・マークスー『投資で一番大切な20の教え』より引用
この文章は『賢明なる投資家』ハワード・マークスが2007年に顧客向けレターとして書いたものです。
当時の状況と現在…どこか似ていると思ってしまうのは私だけでしょうか?
私たちが市場を分析している間にも、市場は刻一刻と変化を続けています。
そして、その変化は、私の想像する限り最悪の結末に向かっているように見えるのです。
そこで今回は、私たちが押さえておくべき『市場の変化』を見ていきます。
"最悪"をヘッジし、パラダイムの波にうまく乗りましょう!
トレンドが一つ一つひっくり返っている。
『債券王』ジェフリー・ガントラックは言いました。
みんなが理解すべきとても重要なことは、株式パフォーマンスと関係していた持続的トレンドが一つ一つひっくり返っているということだ。…イールドカーブはスティープになり、ドルは下落し、米国がアンダーパフォームしている。資産配分を考える人は、これを勘案しなければいけない。
下の表は、以前私が、
日経225銘柄中『平均』を上回る銘柄は何社ある? - ミクサの脱社畜計画
で調べた、2010年1月~2020年1月までの期間で、日経平均株価を構成している銘柄の中でもっともパフォーマンスが悪かった10銘柄のコロナショック後パフォーマンスをまとめたものです。
なんと過去10年間パフォーマンスが最低だった銘柄の10社中6社が日経平均株価の高騰率をアウトパフォームしているのです!
市場全体でもこの動きは現れており、
新興国株式(高騰率196%)が先進国株式(高騰率177%)をアウトパフォームし、
日経平均株価(高騰率184%)がNYダウ(高騰率174%)をアウトパフォームしているのです。
いったい何が起きているのでしょうか?
昔、アベノミクスがうまくいかない理由を専門家はよく『シャンパンタワー』を例に説明していました。
これまでは、1段目のグラスが大き過ぎて、中銀がいくら緩和マネーを市場に供給しても、債券等安全な資産に流れるだけで、全体にお金が行き渡ることはありませんでした。
しかし現在は、1・2段目のグラスがいっぱいになったため、
3・4段目に資金が流れるようになったと考えられます。
『冒険投資家』ジム・ロジャーズは、この状況を踏まえた上で次のように語っています。
様々なバブルについての書籍・私の経験からすれば、現在のバブルの膨張は続く可能性がある。まだ完全なバブルではなく、世界にはまだ上がっていない株も多い。
【市場の変化①】
・グロース→バリュー株へのシフト
・先進国債券・大型株は安全資産→リスク資産へ変化。
商品市場は長期上昇相場へ突入
『コモディティ王』デニス・ガートマンは言いました。
何かとても重大なことがコモディティ市場で起こっている。単なる安値からのリバウンド以上のことが何か起こっている。…10年続いた弱気相場が終わり、長い間続くであろう強気相場が始まったのだろう。
株やビットコインの高騰に注目が集まる中、ひっそりと上昇を続けている市場があります。
それがコモディティ市場です。
下のグラフは、この半年間での各商品価格推移をまとめたものです。
銅やプラチナの上昇は、インフレに対するヘッジ的要因で買われることを考えると納得のいくところですが、
今回は、小麦・大豆・とうもろこし・原油に至るまですべて上昇しているのです!
私が一番理解できないのが『原油価格の上昇』です。
原油価格は上昇すると、アメリカでシェールオイルが増産されます。
ロシアはアメリカにシェアを奪われないように、原油の増産に踏み切ります。
すると、他の産油国でも増産の動きが拡大していき、結果、原油価格は下落する…。
にもかかわらず、原油価格が上がっているのです。
残念ながら、私の常識は間違っていたようです。
余談ですが…私は今後、ガソリン価格高騰が起こると考え、マイカーをエコカーに乗り換えました…。
いったい何が起こっているのでしょうか?
ジム・ロジャーズは、
『商品と株式の強気相場は18年~20年の周期で入れ替わっている』
と言います。
どうやら、株式の強気相場は本当なら既に終わっているところ、中銀・政府による介入で無理矢理延命されたため、商品の強気相場入りが先行したようです。
『商品市場の強気相場入り』は、私たち投資家(投資していない人も)にとって只事ではありません。
商品価格の上昇はいずれ、インフレ率の上昇に繋がります。
インフレに弱い資産(現金・債券・汎用品製造メーカー・低価格商品販売会社等…)から投資を引き上げることを推奨します。
ジム・ロジャーズは言います。
すべてのコモディティ価格は上昇するだろう。歴史的に見てまだかなり安い。銀は最高値から45%も低い。
【市場の変化②】
・コモディティ市場が長期強気相場へ突入。
・株式の強気相場はQEにより延命。
逆相関の崩壊
最近、これまで逆相関の値動きをしていた資産の相関関係が崩れてしまっていることは多くの方がご存知のことと思います。
昔から多くの人が採用してきた
60/40戦略(株式:債券=60:40で保有する戦略)は株式と債券の逆相関性を利用したポートフォリオ理論ですが…
コロナ危機後はしばらくの間、株式と債券が同時に同じ方向に変動する現象に多くの投資家が驚いたことでしょう。
下のグラフは、株式・金・米ドル・ビットコインの1年間の値動きを一つにまとめたものです。
このグラフから言えることは、
少なくても2020年は
・株式/ビットコインは相関
・米ドル/金は概ね相関
・株式/金は概ね逆相関
・金/ビットコインは概ね逆相関
こんなところでしょうか?
ここで重要なのが、
株式とビットコインが相関関係にあることです。
「ビットコインで株価下落をヘッジしよう」とは、思わない方がよさそうですね。
あと、ここ日本では株式と逆相関の米ドルをロングしても、円高で打ち消されてしまうリスクもあるので、米ドルもリスクヘッジ資産には適していないと思われます。
つまり、現在私たちがとれる株価下落に対するヘッジ手段は、
①現金を保有する。
②金を保有する。(※但し、完全に逆相関ではない!)
③ダブルインバースを保有する。(長期では適さない!)
…程度しかありません。
ニューヨーク大学教授のアスワス・ダモダランは、現状のリスク分散について次のような見解を示しています。
市場間の調整が高まり、分散の恩恵が、特に危機時に減少した。…結論は、今日分散するのが数十年前より困難になっているということ。昔のように外国株と不動産の保有を増やすという戦略ではもはや成果を望めないだろう。
【市場の変化③】
・各資産間での相関関係が崩れた。
・完全逆相関は『現金』のみ。
『市場の変化』まとめ
ここまでの内容と私の見解をまとめます。
【市場の変化①】
ローリスク資産→ハイリスク資産へのシフト
これは私たちは無視してしまってかまわないと考えています。
実はこういった動きはバブル相場終期で多く見られる現象で、持続的なトレンドにはならない可能性があるからです。
1990年代のドットコムバブルでは、マイクロソフトやインテルといった優良IT企業の株価上昇が先行した後、社名に『ドットコム』と付く企業の株価が軒並み上昇しバブル化しました。
同じように、現在は『株式』というだけで株が買われているのでしょう。
【市場の変化②】
コモディティ市場の長期強気相場入り。
私は以前「このバブルは3つの段階を踏んで完成する」と言いました。
バブルか、それ以外か!?ミクサの投資戦略 - ミクサの脱社畜計画
第一段階…債権バブル
第二段階…株式バブル
第三段階…資源バブルです。
どうやらこのバブルは第三段階に突入したようです。
資源バブルは株式・債券バブルとは違い、多くの人の生活、多くの企業の業績に実際に影響を与えてしまいます。
物価上昇についていけない企業の経営は悪化し、不良債券問題が続出するのではないか?と懸念しています。
いよいよ、このバブル相場も末期に近づいてきたようですね。
【市場の変化③】
逆相関関係の崩壊。
そもそも私は『逆相関』という言葉が嫌いです。
私たち投資家は不確実性を相手にしています。
『逆相関』なんていう脆い現象は常に崩壊することを考慮しておかなければならないのです。
良い教訓になったのではないでしょうか?
以上より私は、
『中期で株高』『危機時に円高』『長期で資源高』というこれまでの想定を維持、今後の投資戦略を練っていきます。
私のポートフォリオ
今月は『アートスパークHD』を熟考の末、再度購入しました。
先月購入した『新興国債券』ですが…自信が無くなったので早々に撤退しました。
その分『金』のウェイトを大きく引き上げました。
『銀』を全て売却しましたが、これは間違った判断だったと思っています。
次に購入単価と現在(2021.2.23)の価格です。
今後はこのまま『金』を資産比率20%を上限に買い増しする予定です。
『五大商社株』は、すでにある程度上昇してしまっていますが、資産比率20%まで買い増しを検討しています。
『アートスパークHD』は、少し踏まれていますが…現状の株価は割安なので、ドルコスト平均法(←この考え方は嫌いですが…)的に購入していきたいと思います。
今回私は『金』投資に大きく動いたわけですが、私は俗に言う『ゴールド・バグ』ではありません。
しかし、今回は金に対してかなり強気でいきたいと思います。
『生粋の金信者』ピーター・シフのように、金を信じてみるのも悪くはないでしょう!
そもそも私は金地金を投資としては見ていない。私は金を価値の保存、現金の代替と考えている。だから、いくらか『現金』を持っておくことには常に意味がある。…最善の通貨でも、金に比べると乏しい実績しかない。だから、金が何かを理解すれば、いつでも少しは持つべきなんだ。
バブル崩壊でどうなる!?
遂にこの巨大バブルも崩壊の最終段階に突入しました。
ところで…このバブルが崩壊した際、いったい株価はどこまで下落するのでしょうか?
「リーマンショック級?いやいや、それ以上だろ!?」
世界でもっともネガティブな予測をするジム・ロジャーズは今回のバブル崩壊による被害規模を予想しています。
次の弱気相場は私の人生、あなたの人生で最悪なものになる。50%、60%の下げ。銘柄によっては80%、90%になるだろう。これはいつも起こってきたことで、終末のようなものではなく、単に物事はそう進むものなんだ。
思いのほか現実的ではないでしょうか?
これでは通常のクリーンアップ(浄化)現象とさほど変わらない…。
通常、バブル崩壊時は投資家の予測している以上に下げるものです。
私たちは『リーマンショック』や『1929年の世界大恐慌』規模のショックを予想してきました。
しかし、今回は私たちの想像しているほど下げない可能性についても考えておく必要もあるということでしょうか。
リーマンショック時と違うのは、現在中銀は量的緩和のカードを躊躇なく切ることができることです。
ある程度は、現金の価値低下がショック・アブソーバーになるのかもしれませんね。
私は今後、五大商社株と金・銀に積極的に投資していこうと思います。
皆さんの見解はどうですか?
以上です。
投資家の皆様の健闘を祈ります!
(`・ω・´)ゞ
※投資は完全自己責任でやりましょう!
まとめ
●先進国債券・大型株は『安全資産』から『リスク資産』に変化した。高過ぎる株式への投資は避けよう。
●ITバブルでは、社名に『ドットコム』と付いている企業の株式がバブル化した。『株式』『暗号資産』に注意しよう。
●コモディティ市場は長期強気相場へ突入した可能性。物価上昇をヘッジしよう。
●投資では信じてはいけないものが3つある。『統計』『他人の予測』そして『逆相関』だ。
●『債権バブル』から始まった現在の巨大バブルも崩壊の最終局面に入った。現金・割安株・コモディティ…あらゆるものを駆使してバブル崩壊をヘッジしよう!
参考
https://www.financialpointer.com/jp/
投資で一番大切な20の教え 賢い投資家になるための隠れた常識 (日本経済新聞出版)