『確実な投資』など存在しない理由


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『確実な投資』など存在しない理由

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『平均への回帰』は投資では役に立たない!?

『金融市場のさまざまな変数は均衡値に向かって収斂(シュウレン)する』

 

上がったものは下がり、下がったものは上がる…

この考え方のことを、統計学用語で

平均への回帰と言います。

 

現在の国際金融市場はこの考えを基盤として築かれました。

 

かつて、アメリカの経済学者ベンジャミン・グレアムは、この『平均への回帰』を利用し「本源的価値よりも割安な株に投資する」という投資法

安全なマージン理論を提唱し、多くの投資家に影響を与えました。

 

伝説的投資家ウォーレン・バフェットも、この理論に魅了された一人です。

 

私の15%はフィッシャーで、85%はグレアムだ。

 

しかし、この理論には重大な欠陥が存在します。

 

ということで本記事では『なぜこの理論が使い物にならないのか?』について述べていきます。

 

理論、理論、クソ理論‼

役に立たない時代遅れの原則を捨て、賢明な投資家を目指しましょう!

 

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LTCMの悲劇

1990年代後半、ウォール街の伝説的債権トレーダーであるジョン・メリルウェザーは、ヘッジファンド『ロングアーム・キャピタル・マネジメント』(以下LTCM)を設立しました。

 

LTCMには、数学や経済学の博士号を持つような選りすぐりの秀才たちが集められました。

 

彼らは、統計学を応用した極めて安全性が高く、高リターンな投資戦略を考案し、世間の注目を集めたのです。

 

市場で取引きされているさまざまな債権のうち、非常に類似した債権間の金利差に着目し、金利差が過去の平均値よりも大きく拡大した際に、一方を買い、もう一方を売る。

 

2種類の債権は実質的に同じものであり、時間が経てば平均値に回帰するはずであり、金利差が戻ったときに反対売買すれば確実に利益を得ることができると考えたのです。

 

この手法は

ロング・ショート戦略と呼ばれ、今でも採用するヘッジファンドも存在しています。

 

メリルウェザーのこの戦略は最初は非常に上手くいき、ファンドの利益は2年目には43%、3年目には41%の高利回りを記録しました。

 

しかしその後、快進撃を続けるLTCMに思いもよらない悲劇が襲い掛かります。

 

1998年、ロシアがルーブル立て国債の債務不履行を宣言し、ロシア国債は文字通り『紙切れ』になったのです。

 

この出来事は債権市場をパニックに陥れ、LTCMの保有する債権の金利差はことごとく悪い方向に拡大し、結果LTCMは、一夜にして破産に追い込まれたのでした。

 

理論上『確実』と思われていたこの戦略はどうして失敗したのでしょうか?

 

『イングランド銀行を潰した男』として知られるジョージ・ソロスは次のように語っています。

 

金融市場では、いつも何らかの支配的なバイアスが存在している。このことから私は、金融市場は『常に誤っている』と考える。通常であれば、"行き過ぎ"を自己修復する機能が存在しているのは確かだ。だが、時に支配的なバイアスが、市場価格のみならず価格の裏にあるファンダメンタルズにも作用することで、現実がバイアスに合わせてしまうこともある。

 

「賢い人は自信過剰に陥りやすいがゆえに、大惨事を免れることができない」とは天才投資家チャーリー・マンガーの言葉ですが、こういったことは何も『賢い人』だけに限ったことではありません。

 

私のような頭の悪い投資家であっても、こういったワナに陥ってしまう危険性もあるのです!

 

では、なぜ彼らは危険な債権トレードを『確実で安全』と判断してしまったのでしょうか?

もう少し掘り下げて見ていきます。

 

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ガウス分布

コイントスを2回行います。

コインは公平であり、表が出る確率も裏が出る確率も全く同じ50%です。

 

パターンは次の4通りで、起きる確率はどれも同じです。

 

『表・表』『表・裏』

『裏・表』『裏・裏』

 

このうち、『表・裏』と『裏・表』は行き着く結果が同じであるから、表と裏がそれぞれ1回ずつ出る組み合わせは重複することになります。

 

ありうる確率は

表×2→25%

表・裏→50%

裏×2→25%です。

 

では、4回コイントスをやった場合、ありうる確率はどのようになるでしょうか?

 

表×4→6.25%

表×3・裏×1→25%

表×2・裏×2→37.5%

表×1・裏×3→25%

裏×4→6.25%

 

このように、コイントスを無限に繰り返していくと、重複するパターンがどんどん増えていき、中心付近を何度も行き来するようになるのです。

 

これが、私たち投資家が愛してやまない(?)

ガウス分布の基本的な考え方です。

 

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ガウス分布では、

観察結果の68%が平均からプラス・マイナス1標準偏差(σ)

95%が平均からプラス・マイナス2標準偏差(σ)の範囲内に収まるようにつくられています。

 

この分布を基にして、

『ドルコスト平均法』『ダウの犬』『キャリートレード』といった魔法の法則が次々に経済学者たちによって生み出されてきました。

 

そして私たちは何の疑問も持たずに、これら法則を信じ、大切なお金をハイリスクなギャンブルに投じてしまっているのです!

 

チャーリー・マンガーは言います。

 

金融論の教授の言うことはあまり気にしないようにしている。彼らは魔法の世界に棲んでいるのだから。

 

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ボリンジャーバンドは使い物にならない

2011年のギリシャの債務危機以降、スイスの中央銀行であるSNBは

『1スイスフラン1.2ユーロ』を下回らないよう、為替介入を行っていました。

 

『金利の低いスイスフランを売って、米ドルを買えば高い金利収入を得られる』

そんな思惑から多くの人がFXにてドル/スイスの通貨ペアをロング(買い)ポジションで保有していました。

 

2015年1月15日…それはなんの前触れもなく起こりました。

 

SNBは『1スイスフラン1.2ユーロの下限』を撤廃すると発表したのです。

 

この発表を受けスイスフランは高騰。

ドル/スイスの通貨ペアは1日で約30%という記録的な暴落に見舞われたのでした。

 

多くの投資家が多大な損失を被りました。

 

歴史に残るこの事件は後に、

スイスフランショックと呼ばれるようになりました。

 

『ボリンジャーバンド』は、ガウス分布の法則を最大限に利用したもっとも有名なテクニカルチャートです。

 

では、この時ボリンジャーバンドは役に立ったのでしょうか?

いや、まったく役に立たなかったのです!

 

この暴落劇での下落幅はなんと

マイナス6σを超えていたのです。

 

ちなみに

-6σに収まらない確率は0.0003%という誰もが『起こらないだろう』と無視してしまう確率ですが、実際にそれは起こったのです。

 

第一次世界大戦後、ドイツを未曽有のインフレが襲いました。

 

戦争中の戦時国債の乱発に加え、隣国のフランスはドイツに対して1320億マルクという法外な額の賠償金を請求したのです。

この金額は当時のドイツのGDPの実に20年分に匹敵する金額でした。

 

ドイツ政府は『賠償金の支払いはドイツの経済復興を不可能にする』とこの要求を拒否しました。

 

すると、フランスは、鉱工業製品を現物賠償として取り立てるためにベルギーと共に出兵し、ドイツ最大の工業地帯を丸ごと差し押さえたのです。

 

これが原因で、ドイツの経済活動は完全に失速し、中銀はドイツ国民の生活を守るために大量の貨幣を増刷し続けたのでした。

 

『カネ余り・モノ不足』の状況に陥ったドイツの通貨マルクの価値は暴落し、半年で1兆倍という世界史上、空前絶後のハイパーインフレが発生したのです。

 

もし仮に、こんな値動きでも想定できるボリンジャーバンドが存在するのであれば、皆さんはそれを使うでしょうか?

 

こういった統計学の法則を無視した、一方行に偏った大きな変動のことは、

ファット・テールと呼ばれています。

 

『なぜファット・テールが発生するのか?』その理由は未だに解明されていません。

しかし、物凄く小さな確率ですが、どんな金融商品であっても、それが起こる確率は決してゼロではないのです!

 

こういう事実が判明している時点で、ガウス分布を金融市場に当てはめるのは明らかに間違っていると言えるでしょう。

 

しかし私たちはこんな歴史はすっかり忘れ、次のような理由で投資をするのです。

 

「投資した理由?ボリンジャーバンドで-3σにタッチしたからだよ!」

 

不確実性科学の第一人者であるナシーム・タレブは、私たちに次のように警告しています。

 

所得や資産、ポートフォリオのリターン、本の売り上げといった集計量を扱っているなら、程度は間違いなく重要だ。そういうときにガウス流の分布を使うのは間違いで、問題が起こる。…一つのデータが全体の平均を大きく左右するかもしれない。一度の損失で、一世紀にわたって貯め込んだ利益が全部吹き飛ぶかもしれない。もう、「これは例外だから」ですませることはできない。…財産が全部吹き飛ぶような損なのか、一日の稼ぎのほんの一部ぐらいなのかということだ。これは大きな違いである。

 

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並外れた結果を出すために、並外れたことをする必要はない。

投資に統計学の理論を持ち込むのは危険です

 

魔法の法則を使えば、しばらくの間安定した利益が得られるかもしれません。

しかし、それはある日突然財産のほとんどを持って行かれるリスクと隣り合わせの法則なのです。

 

残念なことに、しっかりとした教育を受けている日本人に限って、こういった理論を株式投資に持ち込んでしまうのが現実です。

 

ナシーム・タレブは言います。

 

人は損をすると恥ずかしく思うことが多い。だから、ボラリティがとても小さく、でも大きな損失が出るリスクのある戦略をとる。機関車の前で小銭を集めるようなやり方だ。日本の文化はランダム性に間違った適応をしているから、運が悪かっただけでひどい成績が出ることもあるのがなかなかわからない。だから損をすると評判にひどい傷がついたりする。あそこの人たちはボラリティを嫌い、代わりに吹き飛ぶリスクをとっている。だからこそ大きな損を出した人が自殺したりする。

 

では私たちはどうすればいいのでしょうか?

それはとても簡単なことです。

 

ファット・テールを逆に利用すればいいのです!

 

財務が健全で、素晴らしい事業を展開しているにもかかわらず、誰からも注目されていない会社を見つけ出すことができるのであれば、その会社に投資してファット・テールが起こるのをじっと待つ...。

 

ウォーレン・バフェット、ジム・ロジャーズ、ジョージ・ソロスといった世界的投資家は皆、この方法で巨万の富を築いてきたのです。

 

『冒険投資家』ジム・ロジャーズは言います。

 

他人が目もくれない場所にチャンスは転がっている。1970年代にジョージ・ソロスと立ち上げたヘッジファンドが成功したのも、他の人が目もくれないところに投資したからだ。当時はまだ日本に興味を持つ投資家は非常に少なかったが、私たちは海外に目を向けていた。空売りもやっている人はほとんどいなかったが、私たちは積極的に行った。

 

私たちは、毎日安定的に稼いでいるアクティブな投資家に憧れます。

しかし、真の投資家は多くの時間を何もせずに地味に過ごしている一方、一度の投資で『アクティブな投資家』の何年分にもあたる利益を稼ぎ出すのです。

 

落ちれば大怪我をするかもしれない危険な『理論』という綱の上を歩く投資…

そんな投資をこれからも続けていきますか?

 

少しでも疑問を感じた方は、ウォーレン・バフェットの次の助言に従ったほうがいいでしょう。

 

綱渡りで落ちるのが怖いかい?綱渡りをしなければいいんだよ。

 

『簡単なことをやれ』ということです。

 

以上です。

投資家の皆さんの健闘を祈ります!

(`・ω・´)ゞ

※投資は完全自己責任でやりましょう!

 

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まとめ

●賢い人は自信過剰に陥りやすいがゆえに、大惨事を免れることができない。

●企業の価値は業績により不規則に変動する。そのため、値動きの平均をもとに計算される標準偏差は株式投資ではまったく使い物にならない。

●どんな出来事でも起きる確率はゼロを下回ることはない。どんなにありえないと思えることも、起こる可能性があると考えておこう。

●一度の失敗でどれだけの損失を被るかが重要である。投資する際は、許容できる損失の上で、超積極的かつ超保守的に投資しよう。

●綱渡りで落ちるのが怖いなら、綱渡りなどしなければいい。並外れた結果を出すために、並外れたことをする必要はないのだ。

参考書籍

ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質

ブラック・スワン[下]―不確実性とリスクの本質

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