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フォーカス投資を超えて。世界的投資家に学ぶ、究極のポートフォリオ理論
フォーカス投資のその先へ。
『フォーカス投資』
ビジネスでは、どんなに頭がいい人でも、重要な決断を何百回と正しく下すことは、おそらく不可能でしょう。
どうすれば間違った決断を避けられるのか…
世界の賢人たちは人一倍読み、そして考え、1つの投資戦略にたどり着きました。
決断の数を極限まで減らすため、少数の正しい投資先に集中して投資する。
かつてこの方法を実践したビル・ゲイツとウォーレン・バフェットは、それぞれ世界一位と世界二位の個人資産を築き上げるまでに至りました。
私もこのフォーカス投資こそが究極の投資戦略であると信じていました。
しかし、現実は私たちの思っているよりも遥かに複雑だったのです。
私たちの信じているものは、ある日突然崩れ去ることもあるのです。
ある日突然起こる大きな変化(ブラック・スワン)は、私たちフォーカス投資家から容赦なく財産を奪っていきます。
冒険投資家として知られるジム・ロジャーズは、この変化について次のように述べています。
あなたが今正しいと信じている常識の多くは、15年後には間違っている可能性が高い。・・・もちろん必ずしも15年とは限らない。時に10年だったり、25年だったりする。しかし、歴史を検証すると、おおむね10年から15年経つと大きな変化が訪れている。
実際、15年前には考えられなかったことが現実に起きています。
金利はマイナスになり、貨幣は大量に増刷され、日銀は株を大量に買うようになりました。
では、1960年代に誕生したフォーカス投資は、まだ万能と呼べるのでしょうか?
そこで、私は世界的投資家の書籍を読み漁り、独自にフォーカス投資を進化させることにしました。
本記事では、私の考えた新しいポートフォリオモデルを紹介したいと思います。
このモデルは、3人の世界的投資家の投資戦略を基に、リスクを3つ(ハイリスク・ミドルリスク・ローリスク)に分けて管理するのが特徴です。
投資家の皆さんの参考になれば幸いです。
それではいきましょう!
バーベル戦略(ナシーム・タレブ)
バーベル戦略とはこんなやり方だ。黒い白鳥のせいで、自分が予想の誤りに左右されるのがわかっており、かつ、ほとんどの『リスク測度』に欠陥があると認めるなら、とるべき戦略は、可能な限り超保守的かつ超積極的になることであり、ちょっと積極的だったり、ちょっと保守的だったりする戦略ではない。
私の新投資手法は、不確実性科学の第一人者であり『レバノンの知識人』ナシーム・タレブの投資戦略である
バーベル戦略をベースに考察しました。
バーベル戦略では、リスクをハイリスクとローリスクに分けて管理します。
投資資金の85~90%を、アメリカ国債などの安全な資産に投資し、10~15%を超ハイリスクではあるが超ハイリターンが期待できる投資先に投資します。
つまり、自然がもつ不確実性に投資するのです。
しかし…哀しいことに、この投資戦略の素晴らしさは多くの投資家にはわかってもらえないでしょう。
私たちには、予測可能で確率がはっきりしたものを好み、不確実性を執拗に嫌う傾向があるからです。
たとえ確率が低くても、私たちは確率がわかるものを重要視してしまうのです。
この心理傾向は
エルズバーグのパラドッグスと呼ばれています。
では、私たちの行う予測とは、いったいどの程度信頼できるものなのでしょうか?
不確実な可能性に賭ける
ロシアのエカチェリーナ2世には、多くの愛人がいたといわれています。
愛人はいったい何人いたでしょうか?
この質問の答えを、98%の確率で正解するように、数に幅をもたせて明確に答えてみてください。
例えばエカチェリーナ2世の愛人の数は98%の確率で『38人以上68人以下だ』といった感じです。
研究者のマーク・アルバートとハワード・ライファは、こういった質問を被験者に答えてもらう実験を行いました。
すると、非常に興味深い結果が得られたのです。
不正解率2%であるはずの問題を、なんと40%もの人が間違えたのです!
(正解は、およそ40人の愛人がいた)
私たちは自分の予測の精度を20倍も過大評価していて、さらに、私たちの予測の精度は『コイントスより少しマシ』程度だったのです。
この現象は専門用語で
自信過剰のワナと呼ばれています。
では、10年後の金価格はどうなっているでしょうか?
おそらく、40%の人は間違えることでしょう。
ナシーム・タレブは次のように述べています。
私のポートフォリオが市場の暴落の危険にさらされているとして、暴落の起こるオッズは私には計算できない。私にできるのは、保険をかけるか、失うわけにはいかない金額だけポートフォリオを売却して、ずっとリスクの低い資産に投資するかのどちらかだ。
バーベル戦略は偶然から生まれる株価大高騰というブラック・スワンに賭ける投資戦略です。
不確実性による利益は天井知らずですが、損失は投入資金を超えることはないので、リスクを抑えつつも最速で成功できる可能性を秘めている、まさに究極の投資手法でしょう。
映画・アニメ・ファッション・ゲーム・出版社・ベンチャー・テクノロジー系企業といった会社で、運営コストが少額で済み、財務状況のいい企業なら、ブラック・スワンの恩恵を得られやすいといえるでしょう。
投資資金の一部をこういった企業の株式に投資し、数倍~数十倍のリターンを狙います。
残りの資金を『ローリスク資産』に投資するわけですが…
ここで問題が発生します。
『ローリスク資産』とはなんなのでしょうか?
グローバル・マクロ(ジム・ロジャーズ)
実は、商品と株の強気相場は交互にやってきている。つまり株式が上がれば商品が下がり、株式が下がれば商品が上がる。それが18年から20年周期で巡ってくることは、過去をさかのぼれば明らかだ。
『ローリスク資産』については、ジム・ロジャーズの投資戦略
グローバル・マクロの考え方を取り入れます。
安全資産とは何でしょうか?
つい最近までは『日本円』が、
ニクソン・ショックまでは『米ドル』が、
もっと前は『ポンド』が、世界でもっとも安全な資産だったのでしょう。
そう、安全資産の定義は時代によって異なるのです。
少し前までは、『株はリスク資産であり、そのリスクを債権でヘッジする』という考えが主流でした。
しかし、低金利が常態化した現在において、必ずしも『債権がローリスク』とは言い切れなくなりました。
ヘッジファンドの帝王と呼ばれるレイ・ダリオは次のように述べています。
どういう理由でこうした債権を保有するのか。ある時点で、なぜ債権を保有するのかという問題になる。私が間違っているのかもしれないが…何でそれに意味があるのか教えてほしい。
『グローバル・マクロ』は、世界各国の政治経済や金融市場の全体を分析し、為替・コモディティ・株式・債権などに投資する戦略です。
日本人投資家として、『円』はある程度持っておく必要はあるでしょう。
しかし、『円』がベストなローリスク資産なのか?と言われると、お世辞にもそうとは言い切れません。
かといって、世界全体のトレンドを理解し、ピンポイントで投資するなんてこともおそらく不可能でしょう。
ジム・ロジャーズは歴史と哲学の知識をヒントに、投資先を決めています。
歴史を通じて人々は自分の国の経済が悪化し、通貨が下落すると次に金と銀を買おうとするものだ。多くの学者は「それはおかしい。金や銀を買っても仕方がない。役に立たない」と言うだろう。だが気にする必要はない。多くの人は学者ではない一般の人々だ。問題が発生したら、彼らは金と銀を買う。
『不安になると買いたくなるもの』を考えるといいでしょう。
金や銀、アメリカや中国といった大国の通貨、ひょっとしたらビットコインもそうなのかもしれません。
『円』を20~30%、これら資産も20~30%を分散して投資します。
上手くいけば、危機の際に利益を得ることもできるでしょう。
しかし、こう見てみると『ローリスク資産』は絶対にローリスクとは言い切れないことがわかります。
全ての投資対象には必ずリスクが付きまといます。
世界は私たちが考えているほど単純ではなく、ローリスクとミドルリスクの差は、思っているほど大きくはないのです。
そこで、残り30%程の資金をミドルリスクの資産に投資します。
取り入れる投資戦略は
『フォーカス投資』です。
フォーカス投資(ウォーレン・バフェット)
われわれの手法は単純明快だ。とびきりの根源的経済性をそなえ、正直かつ有能な経営陣に率いられたビジネスを、理にかなった価格で買収する。私が目指すのはこれだけである。
『ミドルリスク資産』と聞くと、多くの人は『インデックス』を思い浮かべると思います。
しかし、私は、現在の状況でインデックスに投資するのはハイリスクであると考えています。
『危機の際にもっとも売られるもの』とはなんでしょうか?
それは…
多くの人が持っているものです。
『S&P500』や『日経225』といった市場の平均に投資する商品は、誰でも簡単に投資でき、多くの投資家が保有しているため、危機の際は最も深刻なダメージを受けるといっても過言ではないでしょう。
私の考えるミドルリスク資産というのは、自分がもっとも理解している会社のこと指しています。
フォーカス投資を一万文字以内で説明することは、私にはできないので、簡単に手順だけを挙げておきます。
①自分の良く知るビジネスの中で、もっとも優れた企業を選抜する。
②財務三表や『企業が提供する生の情報』から安全性と収益力を確認し、オーナー利益から価値を算出する。
③価値と価格に十分な乖離が生じるのを待ち、そのタイミングで"資金の10%を下限"に大きく投資する。
手順自体は簡単そうに思えますが…これを実践するのは実はものすごく大変なんです。
オーナー利益による企業価値算出方法は下の記事で紹介しています。
この方法は意外と精度が高く、私も愛用しているおすすめな方法です。
フォーカス投資は
『複利の効果』を最大限に利用する投資手法です。
例えば、『企業が生み出す現金が毎年14%増加する』と仮定すると、その会社の企業価値は、5年で倍になり、10年で4倍になります。
運よく、企業価値の半分の価格でその会社の株式を買っていたのであれば、投資したお金は5年で4倍に、10年で8倍になるのです!
この複利の効果がウォーレン・バフェットを世界一の投資家に導いたのです。
伝説的投資家ウォーレン・バフェットは言います。
この国の大金持ちは、50社のポートフォリオ投資で財を成したわけではない。彼らの莫大な個人資産は、ひとつの優良ビジネスを突き詰めることによって築かれてきた。
私もフォーカス投資について学び、良い企業を見つけようとしましたが…
すぐに、そんな企業はほとんど無いことに気付きました。
ですが、1社…
たった1社、信頼できる会社を探し出せたなら、私たち個人投資家にとってはそれで十分なのです。
その会社が優良企業であることを確信したのであれば、私たちは他の投資先を頑張って探さなくてもいいのです。
ウォーレン・バフェットもこう言っています。
最初の試みで成功したなら、そこでやめればいい。
正反対のアイデアを組み合わせる
天才投資家、チャーリー・マンガーは言います。
私たちはみな、何かのアイデアを学び、それを修正したり、破棄したりということを繰り返している。適切なタイミングで素早く捨て去ることができるなら、たいへん価値ある能力と言えよう。それを実践するには、自分とは反対の考え方を常に考慮する必要がある。
かつてウォーレン・バフェットは、アメリカの経済学者ベンジャミン・グレアムのバリュー株投資『安全なマージン理論』と、フィリップ・フィッシャーのグロース株投資『超成長株投資』という正反対の投資手法を組み合わせ、フォーカス投資を考案しました。
(※実はフォーカス投資の元祖は別の人物なのですが、あまり知られていません…)
そこで、私もまったく正反対の投資戦略を組み合わせ、自分だけのポートフォリオ戦略を考察することにしました。
『確実性』に投資するフォーカス投資と『不確実性』に投資するバーベル戦略を組み合わせたポートフォリオ編成…私はこれを
Teensモデルと名づけることにしました。
『Teens』とはどういう意味なのか?
『ほぼ完成形の、世界的投資家の投資スタイルを組み合わせる』なんて、知能年齢が低くないとできません。
あいにく、私は慢性的中二病を患っているので、知能年齢はティーンエイジャーで止まっています。
英語で『Teenager』は『Teens』と略されることもあるので、そこから取りました。
私たちは年齢を重ねる度に、考え方がどんどん偏ってしまいがちになります。
『常識にとらわれない柔軟な思考』という意味も込めてのネーミングです。
Teensモデル
Teensモデルのポートフォリオ編成は次の通りです。
ナシーム・タレブの『バーベル戦略』をベースに、ブラック・スワンを捉えることでハイリターンを狙う投資戦略です。
ブラック・スワンは現在、次の2種類が確認されています。
①みんなが『ありそうにない』と思っていることが起こること。
②誰もが『絶対に起こる』と信じていることが"起こらない"こと。
『Teensモデル』では、この2種類のブラック・スワンを同時に追いかけます。
この戦略が上手く機能するのか?
不確実性に投資するのですから、そんなことはわかりません!
今後はこの戦略を身をもって検証していきたいと思います。
以上です。
投資家の皆様の健闘を祈ります!
(`・ω・´)ゞ
※投資は完全自己責任で行って下さい!
まとめ
●どんなに頭がいい人でも、正しい決断を幾度となく繰り返すのは不可能である。
●私たちが今『正しい』と思っていることの多くは、未来では間違っている可能性もある。
●私たちは不確実性を嫌う。しかし、私たちの予測の精度は、実際大したものではない。
●自分の確信を疑い、正反対のアイデアから学ぶことで、既存のアイデアをより良いものに進化させることもできる。
●不確実性は避けるよりも利用した方がいい。『ありえないこと』を想定し、『ありえないこと』に賭けてみよう!
参考書籍
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