Contents
『想定外』を想定できれば株式投資はうまくいく!
七面鳥とタイタニック号と投資家
あるところに、農家に飼われている1羽の七面鳥がいました。
飼い主は毎日決まった時間になると七面鳥にエサを与えにやってきました。
そんな日々が1週間、1カ月、半年、1年…
「どうして人間は食事を与えてくれるんだろう?」
憶病な七面鳥は、最初のうちは人間を疑っていましたが、段々とこう考えるようになりました。
「人間の中でも親切な人たちはエサをもってきてくれるんだ!きっとこれが一般的に成り立つ日々の法則なんだ。」
幸せな日々が何日か続きました。
そして、クリスマスの前日、思いもしなかったことが七面鳥に降りかかりました。
いったい何が起きたのか?…
七面鳥には理解できませんでした。
突然首を絞められ、焼かれ、皿の上に載せられたのです。
1912年、七面鳥と同じく、思いもしなかったことが、ある有名な船長に降りかかりました。
私の経験してきたことを振り返ってみても、私は一度も…とりたてて言うほどの事故には遭わなかった。海で過ごした歳月で、遭難した船を見かけたのは一度きりだ。難破船を見かけたことは一度もないし、自分が難破したこともない。災害になりそうな窮地に追い込まれたことすら一度もない。
タイタニック号の船長、エドワード・ジョン・スミスはこの文章を書いてから5年後、歴史上もっとも有名な海難事故を起こしたのです。
『思いもしなかったこと』は私たち投資家にも降りかかることもあります。
2006年、『アマランス』という巨大ヘッジファンドが精算に追い込まれました。
この会社は、ハリケーン被害による天然ガス市場の上昇に賭けましたが、目論見が外れ、結果、70億ドルという華々しい損失を計上したのです。
この会社は、事件が起こる数日前に「当社には12人のリスクマネジャーがいるから大丈夫」と投資家を安心させていたのそうです。
彼らはただの愚か者だったのでしょうか?
いや…
私たちも本質的には、彼らとまったく変わらないのです。
ということで、
本記事では、私たちが投資で失敗する最も重大な要因、そして具体的な対処法について述べていきたいと思います。
間違った思い込みを避け、成功を掴み取りましょう!
投資家が退場するまで…
ある日、注目していたX社の株が大きく上昇しました。
私たちのような憶病な投資家は、
「これは一時的な上げだから、明日はまた下がるだろう。下がったら投資すればいい。」
と考えます。
予想とは裏腹に、X社の株は翌日も、さらにその翌日も上昇を続けましたが、私たちが認識を変えることはありません。なぜでしょうか?
私たちは、『運命をプラスマイナスゼロに調整する力』が存在していると信じているからです。
このことは、行動経済学では
ギャンブラーの誤謬と呼ばれています。
しかし、X社の株はその後数カ月間に渡り、上昇を続けました。
すると私たちはこう考えを改めます。
「この銘柄は特別だ!きっとまだまだ上がるだろう!」
このように、
私たちは、1つの事例から法則を導き出そうとするのです。
心理学ではこの推論を、
帰納的推理と呼んでいます。
確信を持った投資家は、X社の株に大金をつぎ込みます。
そして数日後・・・
七面鳥と同じような、思いもしなかった事態に陥ってしまうのです。
伝説的投資家のウォーレン・バフェットは、このことについて次のように語っています。
なぜか多くの人が投資のタイミングを価値ではなく値動きから察知する。絶対上手くいかないのは、自分で理解していない投資をしだしたり、先週誰かが儲けたからといってそれを真似すること。最もバカなのが、株を上がっているからといって買うことだ。
『帰納的推理のワナ』は私たち投資家にとって最も重大な落とし穴でしょう。
しかし、このワナはそう簡単には克服することはできません。
なぜなら、1つの観察結果を見ただけで、それがいつも当てはまると結論づける私たちのこの傾向は、私たちに本能として備わっている性質だからです。
ズーグルはブーグル
『すべてのズーグルはブーグルである。ブーグルを一つ見つけた。これはズーグルだろうか?いや…そうとは限らない。』
もちろん、私たちはこんな単純なひっかけ問題には騙されません。
しかし、
お題を変えると私たちは簡単にこういったものに騙されてしまうことがわかっています。
ある国の大統領は、『テロリストにはイスラム教徒が多い』という理由から、イスラム教徒の入国を禁止する公約を打ち出しました。
仮に、テロリストの99%がイスラム教徒だったとしても、テロリストなんて多く見積もってもせいぜい数万人程度です。
それに比べイスラム教徒は全体で10億人を軽く超えています。
つまり、イスラム教徒のテロリスト率なんて0.001%(10万人に1~2人程度)に過ぎないのです。
しかし、このことを理解していたとしても、おそらく私たちは自分の推論をそう簡単に変えることはできません。
私たちは知識や見解を、状況から状況へ、あるいは理論から現実へと移し変えたりすることができないのです。
私たちのこのような性質を、私たちの反応の
領域固有性といいます。
なぜこのような性質が私たちに備わっているのでしょうか?
1万年前の人類にとって、『人を食べるのはほとんど野生動物だ』という命題を『野生動物のほとんどが人を食べる』と誤解しても、特に問題はありませんでした。
私たちはそうやって生き延びた人類の子孫だから、昔の人々の領域固有性をそのまま受け継いでしまっているのです。
この『領域固有性』のおかげで、私たちは一つの観察結果を全てに反映させてしまいます。
また、(株価暴落等の)異例を見つけても、しばらくするとそのことを忘れてしまうのです。
レバノンの知識人ナシーム・タレブは次のように述べています。
私たちは繰り返すことで学ぶ。その一方で、それまで起こっていない事象は起こるまで無視され、起こった後はしばらくの間、過大評価される。
想定外を想定する
『イングランド銀行を潰した男』という異名をもつ、名投資家ジョージ・ソロスは、自分の推測が間違っている証拠を徹底的に調べることで有名です。
『市場は常に間違っている』というのは私の強い信念である。市場参加者の価値判断は常に偏っており、支配的なバイアスは価格に影響を与える。私が確かに人より優れている点は、私が間違いを認められるところだ。それが私の成功の秘密なのだ。
これまでの人生…
いったい、どれだけのことが想定通りに進んできたでしょうか?
就職先は?
人生のパートナー探しは?
病気や怪我はどうでしょうか?
私の場合、想定通りに事が進むなんてことは、ほとんどありませんでした。
(私の相場予想も、いつも外れています…)
しかし、『想定通りには進まない』ということがわかっているのであれば、想定外のことを想定し、準備をしておけばいいのです。
冒険投資家として知られるジム・ロジャーズはこんなことを言っています。
確かに世界には運がある。しかし、何かが起こったとき、あなたが準備できていれば、あなたは何をすべきか知っており、おそらく幸運をつかむだろう。
株式市場は、予想外に暴落することもあれば、予想外に高騰することもあります。
私たち投資家が注目すべきなのは『予想外の暴落』の方です。
たとえ『予想外に高騰』したとしても、私たちはなにも損をしていないですからね。
ウォーレン・バフェットは、株式投資におけるルールは次のたったの2つだけだと言っています。
ルールその一、絶対に金を損しないこと。
ルールその二、絶対に『ルールその一』を忘れないこと。
結論
常に株価が半値になる可能性を想定し、投資するようにしましょう!
天才投資家、チャーリー・マンガーもこう言っています。
100年に2度か3度くらいは株価が半分になることもある。そんな事態に直面したらとても冷静でいられないというのであれば、株主になるのはやめたほうがいい。どんなときも落ち着いて哲学的に市場の変化に対処できる人でなければ、マーケットで良い成績を残すことはできないだろう。
株式投資はとっても単純なゲームです。
株価が想定以上に下落したときに株を買い、
想定以上に上昇したときに売ればいいのです。
あとはたくさん失敗して、経験からベストな想定の範囲を導き出せたなら、私たちはきっと大金持ちになれるでしょう。
私は想定外の暴落に備えて、いつも資産の20~30%は現金で持つことにしています。
しかし、たった一つだけ…このスタイルには問題もあります。
みんなが儲けているときに、何もしないでボーっとしていると、自分がとても無能に思えてくるのです!
いつまでこれに耐えなければいけないのでしょうか…?
きっとそれは想定以上に長いのでしょうね…。
以上です。
投資家の皆様の健闘を祈ります!
(`・ω・´)ゞ
まとめ
●私たちは一つの観察結果を見ただけで、それがいつも当てはまると結論づけてしまう。
●私たちは『運命をプラスマイナス0に調整する力』が存在すると信じている。故に、私たちは株価上昇の初動を見逃してしまう。
●私たちは繰り返すことから学ぶ。しかし、起こったことのないことは起こるまで無視され、起こった後もしばらくすると無視される。
●現実では想定通りに事が進むことは滅多にない。想定を疑い、想定外に賭けよう。
●何もせず、忍耐強くただ待つことは実はとても難しい。故に、多くの人は待つことができない。だからこそ待つことにはそれ相応の価値がある。
参考書籍
Think right 誤った先入観を捨て、よりよい選択をするための思考法