投資家の皆さん!ガチでこれ確認してください!

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世間は空前の投資ブーム!

猫も杓子も株株株!

日経平均株価は40000円を超え、アメリカ株も爆上がり中です。

円安も進み、日本の将来も不安ですよね!?

 

ただ…こういう時こそ本当に、冷静になって考えてほしいんです。

 

最近はこういう感じのブログ記事を書かないようにしてるんですけど…

私の周りにいる投資家さんたちや世間一般の投資家さん、はたまたプロの方々まで…少し考えが異常では?と感じてしまい、少し冷静になってほしいという思いで今日は書きます!

 

難しい言葉や複雑な数式は一切なしです!

 

当記事の内容に自分なりの考えをもった上で、投資するかどうかの判断を下してほしいと思います!

 

①米ドルが高すぎる!

「日本なんてこれから衰退していくだけ!『日本円』なんてゴミ通貨はさっさと手放して、安全な米ドルに換えておくのが賢い選択でしょ?」

 

みんな本当にこれ言います。

でも…本当にそうでしょうか?

 

アメリカのインフレ率は過去10年間、平均して2.7%で、

日本のインフレ率は過去10年間、平均して1.08%です。

毎年約1.6%、米ドルで買えるものが日本円で買えるものに比べて少なくなっていっているんです!

 

※データ参考元↓

世界経済のネタ帳 - 世界の経済・統計 情報サイト

 

日本円だと1500円でラーメンが食べられるんですけど、

米ドルだと…あら不思議!

19ドル(およそ2850円)になるんです!( ゚Д゚)

 

外国人が日本の物価の安さに驚く様子を、きっとどこかで見たことがあると思います。

 

『米ドル』という電子マネーにお金をチャージすると、1000円が820円になると考えてください。(1.6%のインフレ差×10年で試算。実際はもっと少なくなる…)

 

外国に行くわけでもないのに、円を米ドルに換える必要ありますか!?

 

「日米金利差が拡大してるからドル高になるのは当然だ!」

という言葉をよく聞きます。

 

"金利"というものは物価上昇を抑えるために付くものであって、通貨の価値を上げるために付くものではありません!

 

米ドルの価値が下がり過ぎて困るから、アメリカは5%の金利を付けないといけないようになってしまっているだけなんです!

 

「日本はこれからアメリカ以上に物価が上昇するから、やっぱり米ドルの方が安全だろう?」

 

そう思うなら『TOPIX』か『Jリート』でも買っておくべきでしょう。

預金金利も上がるから、現金預金もアリですね。

 

②S&P500が高すぎる!

これ本当に耳が痛い人が多いと思うんですけど…

『S&P500』が高すぎです!

 

銀行にお金を預けておけば年間4%の金利が付く状況を想像してみてください。

 

この時、株式に投資して期待できるリターンが年間3%だったとしたら、どれだけの人が価格変動のリスクをとってまで株を買うでしょうか?

私なら銀行に預金します。

 

少し難しいことをいいます…。

 

世界一安全だと言われているアメリカの国債、

現在、5年物でも4%を超える金利が付いてます。

 

では、S&P500の利回りはどうでしょう?

株式の利回りは

100÷PER(株価収益率)で出すことができます。

S&P500のPERは下記サイトで知ることができ、

現在は28.52倍です。

S&P 500 PE Ratio - Multpl

 

S&P500の年間利回りは、

100÷28.52≒3.5%…

アメリカ国債買っていた方が上なんですね💦

 

数年前はアメリカ国債の金利は1~2%だったため、

「債権との比較において株式は割安」なんて言われていましたが、

現在は債券バブルも終わり、債権との比較で株式が割高になってしまっているんですね…。

 

「PERは株価÷EPS(一株益)だから、EPSが成長する分だけ株式投資の方が有利である!」

ともよく言いますが…

 

S&P500のEPSも下記サイトで確認できて、

2023年が184.63で、

2013年は132.6だったから…

10年間で約39%も上昇していてスゲー!ってなるんですけど、

これ年間成長率だと3.4%程度なんですよね。

S&P 500 Earnings - Multpl

 

PERが現在のまま変わらず、

EPSが年間3.4%ずつ成長していくとすると、

10年後S&P500の株価は39%上昇しています。

 

しかし、年利4%のアメリカ国債で運用すると…

10年後、投資金が48%増加してるんです。

 

私ならアメリカ国債買いますが…どうですかね(^^;)

 

アメリカ株全体が割高だと思うので、オルカンとかも高くて割に合わないんじゃないかな?(知らんけど)

 

③日本株も割安とは言えない。

だからといって現金預金だけでは、インフレで財産が目減りしていく一方です。

 

消去法的な判断ですが、TOPIXを買う以外の選択肢が見当たらないので、当ブログではTOPIXへの投資を推奨してきました。

 

ですが…そのTOPIXですら安いとは言えなくなってきているのです。

 

株式の価値は債券との比較によって決まります。

 

今、日銀が年間2%の安定的な物価上昇を目指して金融政策を進めていることから、基本的には銀行預金に最低2.5%の金利(物価上昇分2%+税金)が付かないと、財産が目減りしてしまうことになります。

 

ここから、『日本国債の利回りはいずれ2.5%に限りなく近づき安定する』と仮定します。

 

安全な国債に投資して利回り2.5%が得られるなら、収益変動のリスクを持つTOPIXには、5~6%の利回りを要求したいと思うのは自然なことではないでしょうか?

 

現在のTOPIXの年間利回りは下記サイトで確認できます。

国内株式指標 :株式 :マーケット :日経電子版

 

このサイトによると、

現在TOPIX(プライム市場)の予想利回りは5.8%であり、まだ『買い』でいいとは思うのですが…日本企業の業績は為替の影響をもろに受けるから、円高になった場合しんどいかもしれませんね💦

 

自由に決めろ!

当記事で私が指摘したことは、

①日本円を米ドルに換えると、買えるものが激減する。それでも米ドルを買いますか?

②米国株を買うよりも、『世界一安全な資産』と言われている米国債券を買った方が高いリターンが見込める。それでも米国株を買いますか?

③日本株は上がってはいるけれど、年間利回り5.8%は悪くない。

です。

 

経済は難しいですし、私が間違っているのかもしれません。

 

アメリカ株がこれから倍になるかもしれないですし、1ドル200円になるかもしれません。

逆に日本株が半値になるかもしれませんし、ビットコインとか金とかポケモンカードとかが上がっていくのかもしれません。

 

でも、なぜそれに投資するのか?を数字で説明できない状態で投資を続けていたら、いずれ財産を失うことになると思いますので、

周りの人とか、プロの人とか、ユーチューバーとか、私のようなブロガーの言うことに従うんじゃなくて、自分の考えで投資してほしいです。

 

『自由』って、自己責任で生きていくことだと思うんです。

 

他人や環境のせいにするんじゃなくて、"世界とはそういうものだ"ということを受け入れることが、投資を成功させる第一歩じゃないかな~と思います。

 

自由に生きましょうよ(^^)/

 

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文系投資家の修行~"神の言葉"を理解せよ!~

※この記事の内容は下記記事からの続きとなります。

・第一章:『複素数の極形式』

・第二章:『正弦波』

・第三章:『三角関数の合成』

・第四章:『微分』

 

CONTENTS

 

閣下、『(a+bⁿ)/n=x』故に神は存在する。何かご意見は?

【レオンハルト・オイラー(数学者)】

 

文系投資家の修行~"神の言葉"を理解せよ!~

神の言葉

シエル:「"神の言葉"…ミクサはどこまで知っている?」

 

『神の言葉』…数学の本を何冊も読んできたのに、未だに僕はこの概念を理解できてない…まさに、"苦手分野"とはこのことだ…。

 

シエル:「Why are you making such a worry face just because I said "Logos"?

("神の言葉"と言っただけで、なぜそんな心配そうな顔をするんだ?)」

 

ミア:「ロゴス?」

 

僕:「ロゴスはギリシャ語で、言語や理性を意味する言葉なんだけど…

キリスト教の人たちは『神の言葉』という意味でこの言葉を使っているみたいだね。

スコットランドの数学者であるジョン・ネイピアは、膨大で複雑な計算を容易にするため対数という概念を編み出した…

その記号は『log』…もちろんその語源は『logos』だよ。」

 

ミアも、不安な気持ちを顔で表現する。

 

ミア:「私…こんな記号、見たことないんだけど…?」

 

シエル:「う~ん…一応高校生で習っているはずなんだけどね💧

対数は指数と関係が深いから、まずはこの指数について簡単におさらいしておくことにしよう。」

 

指数法則

シエル:「さて、どこから説明しようか…

たとえば『2³』は『2×2×2』で『8』となる。

指数とは、『2』の上にある小さい数字『3』のことだね。

指数には指数法則と呼ばれる計算ルールがあり、指数の計算はそれらルールに従って行わなければならない。

 

 

シエルちゃんの説明を聞きいていて、僕はふと疑問に思うことがあった。

 

僕:「なんで、aとbは0より大きくなければいけないのかな?

 

シエル:「自分で数字当てはめて計算してみればいいじゃないか?

指数が分数やマイナスのときにaが0以下だったらどうなる?

 

僕:「そうだね、確かに…ちゃんと自分で考えるべきだったね。

えっと、指数が分数の場合から始めてみよう。

そうか!

aが0より小さいと指数が分数のときにルートの中がマイナスになってしまうんだね。

えっと…虚数のことは考えないでいいのかな?」

 

シエル:「指数法則を虚数まで落とし込むのは高等数学の世界になるから、今は考えないようにしておこう。」

 

僕:「了解。

次は指数がマイナスのときだね。

単純に指数が『-1』のときを考えてみよう。

なるほどね。

この場合はa=0だと分母が0になってしまう

0個のものを分けることはできないからね。」

 

シエル:「疑問は晴れたね。

では、指数法則を使って実際に計算をしてみよう。」

 

 

シエル:「ところで…ミクサは投資家なら日頃から指数の計算をしてるはずだね?

買った株が5年後に倍になっていれば、株価の成長率は何%になるかな?

 

僕:「多分だけど…そんな計算してない投資家が多数派だと思うよ💧

えっと…『5年後に倍』だから『5乗して倍になる数』を求めればOKだね。

5乗したら2になる…

つまり『2』の指数部分をxとおいて…」

 

 

僕:「『2の5分の1乗』が年間成長率になっていて、これは関数電卓を使えば簡単に計算することができる。

計算するとこれは

1.14869...となる。

今回は成長率を『%』で知りたいから、

この数字から1を引いて100をかける

5年後に倍になった株価の年間成長率は約14.8%だね。」

 

ミア:「ふ~ん。

投資家ってこういう計算をしてるんだね。」

 

僕:「最初は数学嫌いの僕には難しかったけど、慣れってすごいね。」

 

シエルちゃんは少し暗い表情で口を開く。

 

シエル:「知識は…使わなければ忘れてしまう。

機械がなんでもしてくれる時代に、人間の行う計算なんてもはや趣味の領域になりつつある。

人類は、不安や恐怖を回避するために学び、そして考える

学問は技術を進化させ、私たちの日常をここまで安全にしてくれた。

このスピードは、直線的なグラフを描かない…

私たちが生きているのは『べき乗の世界』なんだ。

世界がここまで安全なのに、私たちの抱く不安や恐怖は無くならないし、むしろ増えているんじゃないかとさえ思う…。

私は思うんだ…

私たちが怖いのは不安や恐怖を体験することではない、私たちが本当に恐れているのは、"不安や恐怖について『考える』こと"それ自体なんじゃないか?とね。」

 

僕:「もしその仮説が正しいとしたら、僕たちが学ぶあらゆる学問の最終目的は『思考からの解放』になる

でも、そんなこと意識を飛ばすか、全知全能にでもならない限り…まさか!?」

 

その時…ミアは小声でボソッとつぶやく。

 

ミア:「中二病…」

 

僕・シエル:「・・・」

 

シエル:「おっと、すまないね。

指数の話をしていると、変なことばかり考えてしまうよ。

気を取り直して、この指数が変数である関数…

指数関数『y=2^x』のグラフを描いてみるよ。」

 


シエル:「このように、指数関数y=2^xのグラフは、xの値が大きくなればyの値も増加する増加関数であり、xの値が小さくなればなるほど、yの値は0に限りなく近づくが0にはならない。

このような状況を『x軸が漸近線』という。」

対数法則

シエル:「『2³=8』…これはもう大丈夫だね?

対数で求めるのはこの式でいう指数の数…2の右上にある小さい数字『3』のことだ。

これまでは、『2³』が与えられて『8』を求めてきた。

対数は逆に『8』が与えられたとき、8は2の何乗なのかを考える。

これを対数記号『log』を使って

log₂8=3と書き、

3』は2を底とする真数8の対数という。」

 

ミア:「なるほど…でもそれなら9も3になるし、1000も3になるよね?

log₃927=3、log₁₀1000=3で…あってるよね?」

シエル:「さすがミアちゃん!呑み込みが早いね!

では次に、対数同士を足したり引いたりしてみようか!

指数同士の計算にルールがあったように、対数の計算にもルールが存在する。

これを対数法則という。」

 


ミア:「ごめん…私キャパオーバー。」

 

シエル:「確かに、いきなりこれを見せられても、これが本当に正しいのかどうかわからないよね?

では、これが正しいことを証明しよう!」

 

僕:「いや…そういうことじゃないと思うんだけど…。」

 

シエルちゃんは僕の言葉を無視して語り始めた。

 

シエル:「MとNという2つの数が与えられたとするよ。

これをそのまま、aを底とする対数にしてみよう。

『log₂2』や『log₃3』のように、底と真数が同じ場合の対数は1になる。
これより、

ここで、

となる。

したがって、

これで、対数法則①が証明されたね。

同じように、②と③も証明してみよう。」


僕:「なるほど…要は"証明済みだから安心して使って大丈夫"ってことだね。」

 

シエル:「まぁ、そういうことだ。

では、これら対数法則も実際に使ってみるとしよう!」

 

 

底の変換公式

シエル:「これまで見てきたように、対数法則は底が同じ数字である場合にしか使うことができない。

これではあまり実用的ではないから、この縛りを外しておく。

対数は、指数を対数の形に式変形したものに過ぎない

したがって、両者の式が意味するものに違いはない

右の式を左の式に代入してみよう。」

ここからの話で大文字の『M』を使うのは見栄えが悪い…だからここからはMの代わりに『b』を使うことにするよ。

この式で『c』を底とする対数をとると、

対数法則③を使って、左側の式を変形させるよ。

より、

両辺を『logcª』で割ると、式変形は完成だ!

この式を底の変換公式と呼ぶ。」

ミア:「いきなり『c』が出てきたけど…

『c』に入る数字はなんでもいいってことで大丈夫?」

 

シエル:「その理解で大丈夫だよ♪

状況に応じて、都合のいい数字を入れてね。

それでは、この公式を使って問題を解いてみよう!」

 

 

僕:「『c』に何をはめ込むか?…ここまでくるとセンスも必要になってくるね。」

対数関数

シエル:「指数には指数関数という関数があるように、対数にも対数関数と呼ばれる関数が存在する。

対数関数『y=log₂x』を例に、対数関数とはどのような関数なのか見てみよう。」

 

 

シエル:「3本線がある中の、濃いピンク色のグラフが、

対数関数『y=log₂x』の描く曲線だよ。

指数関数ではx軸が漸近線であったのに対し、対数関数ではy軸が漸近線となっている。

さらにこの2つのグラフは一次関数『y=x』を挟んで対称…これはいったいどういうことなのか?

『y=log₂x』の『y』と『x』を入れ替えてみるとその関係性がよくわかる。」

 

 

ミア:「指数関数になった!?」

 

シエル:「そう。

このように、『x』と『y』を入れ替えることでできる関数を逆関数という。

別に覚えておく必要はないが…

指数関数と対数関数の関係性については理解できたかな?」

 

僕:「まるで、富裕層と庶民の資産の増え方を表しているみたいだね。

金持ちや権力者を称賛するなんて馬鹿げてる…。」

 

シエル:「以上で指数・対数の話は終わりだよ。

これから『オイラーの公式』に話を進めていきたいのだがその前に…

そろそろ何か食べないか?」

 

To be continued...

 

 

参考書籍

当記事は、下記書籍を参考に執筆しています。

・東京大学の先生伝授 文系のためのめっちゃやさしい対数

・分解編集者がわかるまで書き直した 沁みる『フーリエ級数・フーリエ変換』

・文系編集者がわかるまで書き直した世界一美しい数式『eiπ=-1』を証明する

 

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文系投資家の修行~連続する微分地獄に光明を見出せるか!?~

CONTENTS

※当記事は下記記事からの続きとなっています。

【波の解析編】

・第一章『複素数の極形式』

・第二章『正弦波』

・第三章『正弦波の変形』

 

近所のファミレス…

目の前に座っているシエルちゃんは窓の外…

何かの宗教だろうか?

同じような服を着た大勢の人が、大きな建物の中に入っていくのをじっと見つめている。

 

シエル:「あ゛ぁ~~~、気持ち悪い。

人って、どうしてこう群れたがるかな…」

 

僕:「世の中、大勢の人に囲まれていても平気な人が多数派なんだよね…。

少し羨ましいな…僕は何人もの人の表情を読み取っていると、大体疲れて目線を逸らしてしまうからね。」

 

…業績転落から4年。

"経営合理化"の名の下、遂に会社は大規模な人員整理に踏み切った。

対象となる年齢層は幅広く、僕も整理対象入りを免れることはできなかった。

仲間グループを結成して守りを固めようとする者、

この機に乗じて邪魔者の排除を画策する者、

『自分は大丈夫』であることを信じ込もうとしている者…

 

僕たちは皆『特別な事情』を抱えながら、必死に足掻いて生きている。

もちろん僕にも、引くに引けない事情がある。

 

僕が今やるべきことは、とにかく時間を稼ぐことだ。

おそらく、この仕事はそう長くは続けられないだろう...

2年...1年でもいい。

少しでも長く時間を稼いで、できる限り状況を有利にした上で、この船を降りる。

 

やること、問題は山積みだが、まずは目先の課題...人員整理を乗り切らなくてはいけない。

 

シエル:「そうだね。

でもそういう体質なんだから仕方がない。

それをハンデだと思うなら、それを補って余りあるほどに賢くなればいい。

運が良ければ、集団に関わらずに済む方法が見つかるかもしれないしな。」

 

ミア:「お待たせ。

職場見学で質問してたら、予定より遅くなっちゃって。」

 

会社の状況と今後のことについてミアに相談してから僅か一月、ミアは早くも就職活動を始めてくれていた。

 

言い訳はしない。

こうなってしまったのは僕の能力不足と不甲斐なさのせいだ。

でも、落ち込んでいてもなにも変わらない。

ミアは頑張ってくれている。

ここからは、僕が頑張る番だ!

 

僕:「ありがとうミア。本当に助かります。」

 

シエル:「揃ったね。今日のテーマは『微分』だよ。

では、勉強開始といこうか!」

 

いろんな意味で、これから大変になりそうだ。

 

【Tool:CLIP STUDIO PAINT】

文系投資家の修行~連続する微分地獄に光明を見出せるか!?~

この関数の傾きは?

ミア:「微分かぁ…絶対難しいやつだよね?

どうしよう…やっぱ私帰っていい?」

 

シエル:「そう言うと思ったよ。

微積分はいろんな解析の基礎になる手法だから、微積分自体がそこまで難しいというわけではないよ。

それに、実際にやってみると微分って意外と簡単だったりするし。

 

僕:「確かに…初歩的な微分は簡単だね。」

 

ミアはドリンクバーで取ってきたカルピスソーダを一口飲んでから、体を少し前に出す。

 

ミア:「そうなの?じゃぁ、聞こうかな♪」

 

シエル:「オッケー、じゃぁ初歩的だけど、とても重要なことから始めるね。

中学校で習う一次関数の問題だよ。

関数『f(x)=x』の傾きはいくらでしょう?」

 

ミア:「『f(x)』は『y』のことだよね?

関数『f(x)=x』の傾きは…1?」

 

僕:「合ってるよ。それが微分だよ。」

 

ミア:「へ?」

 

ミアは首を傾げて考えるポーズをとる。

相変わらずリアクションが素直だ。

 

シエル:「説明が必要だね。

一次関数『f(x)=x』の傾きは『1』

これをどうやって求めたかが重要なポイントだよ。」

 

 

シエル:「たとえば、関数f(x)=xのxの値を原点0から+3進ませたとしよう。

この場合、yの値も+3増加することになる。

関数の傾きは、

yの変化量÷xの変化量で導けるが…

実はこれ、yの値の平均変化量を求めているだけなんだ。」

 


シエル:「じゃぁ実際に関数f(x)=xの傾き…

xの値が+3増加したときのyの平均変化量を求めてみよう。」

 


ミア:「うん…それはとてもよくわかったよ。

で、これが微分にどうつながるの?」

 

シエル:「フッフッフ…

では、yの平均変化量の式を『変数』を使って表現してみよう!

関数f(x)=xにおいて、x軸方向に、ある変数『a』から『h』だけ進ませた際のyの平均変化量は次の公式で導くことができる。」

 

 

ミアは反射的に眉間にしわを寄せる。

 

シエル:「少し文字が増えただけで、やってることはさっきまでと同じだよ。

先ほどの関数f(x)=xでの話に当てはめてみるとわかりやすいから、やってみるね。

先ほどの話で言うと…

xの増加量『h=3』

変数aは原点で考えたから『a=0』

yの増加量は、これら数字を当てはめればOKだよ。」

 

 

ミア:「なるほど…。」

 

シエル:「ここまではOKだね?では、本題の微分の話を始めようか!

関数の傾きは、yの平均変化量を求めることだったね。

一方、微分ではyの瞬間変化量を求めていく。

つまり、xの変化量『h』を限りなく0に近づけていくとyの平均変化量はどうなるか?を考えるだけだよ。

幸い、一次関数f(x)=xの場合は、xの変化量hの値が3であろうが1であろうが、0.001であろうが、yの平均変化量は1のまま変わらない。

従って、『f(x)=x』という関数を微分すると

『x=1』になる。

これを次のように書き、ディーディーエックス・エフエックスと読む。」

 

マウント・プライム

シエル:「ここまでは一次関数について考えてきたけど、ここからは二次以上の関数について考えていくよ。

関数『f(x)=x²』の平均変化量…別名『傾き』はいくら?

 

ミアは少し考えてから答える。

ミア:「xが1だとyは1、xが2だとyは4、xが3だと…

ねぇシエル、二次関数はxの値によって傾きが変わってくるから、一つの傾きを出すことなんてできないんじゃない?」

 

 

シエル:「その通り!

ミアちゃんは本当に理解が早いね。

確かに、二次関数ではxの値によって傾きが変化してしまうから、区間毎に傾きを算出していかなくてはならない。

そこで微分の登場だ!

曲線上に2点『A』『P』を書き込んだよ。

これについて考えていこう。

点『P』を点『A』に限りなく近づけていくと、直線APの傾きは点Aを通る接線の傾きに限りなく近づいていく。

『点Pを点Aに近づける』というのは、『xの変化量"h"を"0"に近づける』ことと同じ意味になるよ。」

 


シエル:「関数f(x)のx=aにおいて、xの変化量hを限りなく0に近づけると、平均変化量がある一定の値に限りなく近づく場合、この一定の値はf(a)の瞬間変化量を表している。

すなわち…

これで関数f(x)をx=aで微分することができるということだ!」

 

ミア:「記号の『lim』は『hを限りなく0に近づける』っていう意味で合ってるよね?」

 

シエル:「そうだよ♪

ちなみに、微分によって得られた関数のことを導関数と呼ぶよ。」

 

2人の話を聞いていた僕には、どうしても気になってしまうことがあった。

 

僕:「微分記号は何種類もあるけど、これを使うのは珍しいね?

エフ・ダッシュ・エックス『f´(x)』をあえて使わないのには何か理由があるのかな?」

 

シエルちゃんは軽蔑のまなざしを僕に向ける。

 

シエル:「あ~…ミクサは『ダッシュ』って言うのか。

いいか?理系大出てるヤツは『プライム』って言うんだ。

記号の読み方には気をつけた方がいいぞ!学歴がわかるからな!」

 

僕:「マジか…そんなのでマウント取られるのかよ…。」

 

シエル:「あえて『d/dx』を使ったのは、積分の計算をするときに使うからだよ。

まぁ、もうこの表記に慣れたと思うから、今後は簡単な

エフ・"プライム"・エックスを使っていこうかな。

導関数の公式も、変数に『a』を使ったけど、ここからはより変数らしい『x』を使うことにしよう。」

 

 

シエル:「それでは、関数『f(x)=x²』を微分して導関数を求めてみよう!」

 

 

シエル:「『f´(x)=2x』これが関数『f(x)=x²』を微分して得られた導関数だよ。

これは関数f(x)の接線の傾きを表していて、たとえば、x=2のときの接線の傾きは

f´(2)=2×2=4となる。

それじゃぁミクサ、聞いているだけじゃつまらないだろ?

グラフ上で点(2.4)を通り、傾きが4の関数の式を求めてくれ。」

 

僕:「グラフの平行移動だね。

『f(x)=4(x-2)+4』で合ってるかな?」

 

ミア:「早!?なんでそんな簡単に出せるの!?」

 

僕:「そうだな…順番に一つずつ考えていこうか。

まず、傾きが『4』の一次関数『f(x)=4x』から始めるよ。

この関数をx軸に+2移動させるには式の『x』を『x-2』に入れ替えてやればいい。

同じようにy軸に+4移動させるには『y』を『y-4』に入れ替えれば、

点(2.4)を通る傾き4の一次関数ができあがるよ。」

 

ミア:「そういえば、前に同じことやったような気がするような…しないような?」

 

シエル:「『f(x)=4(x-2)+4』これが

f(x)=x²のx=2における接線の傾きを表した関数の式だよ。

同じようにf´(-2).(-1).(0)...と求めて、グラフを描き込んでいくと…」

 

シエル:「接線の傾きf´(x)を無限に連続させていけば、やがて『滑らかにつながる曲線』がグラフ上に浮かび上がる。

曲線を直線の連続に分解する…微分のイメージはつかめたかな?」

 

僕・ミア:「まぁ…なんとなくね。」

 

積の微分

シエル:「『なんとなく』で十分だ!

一度聞いただけで全て理解できるヤツなんて天才だけだからね。

まぁ…世界にはそんな天才がゴロゴロいるのも事実なんだけど…」

 

僕:「・・・」

 

シエル:「少し難しい内容になるが、ここからは波の解析に必要な"微分の重要な性質"を見ていく。

まずは関数を2つかけ合わせた『積の微分法』についてだ。」

 

僕:「なるほど…確かにそうなるね。」

シエル:「これから、くっついているやつをばらしていくよ。」

 

 

ミア:「なに!?この"足して引いた"ヤツ…こんなことやっていいの!?」

 

僕:「同じものを足して引けば『0』になるからアリなんだろうね。

でも…こんな方法を思いつくなんて、数学者って発想が柔軟なんだね。」

 

シエル:「現実はどうかというと、数学を学ぶ多くの人が創造力を早い段階で失ってしまうんだけどね…。

ここまで、積の微分法

{f(x)g(x)}´=f´(x)g(x)+f(x)g´(x)が得られた。

試しにこれを使って、

『f(x)=x』『g(x)=x²』をかけ合わせた関数を微分してみよう!

これまでの内容で、

『x´=1』『(x²)´=2x』であることがわかっているね。」

 

 

僕:「シンプルだね。

これで『(x³)´=3x²』であることもわかったね。」

 

合成関数の微分

シエル:「続いて『合成関数の微分』だよ。

これは難しいけど重要な性質だから、細かくかみ砕いて説明するね。

合成関数っていうのは、一つの関数の中にもう一つ別の関数が入ったものだよ。

たとえば、『y=(x²)²』という関数は、

『u=g(x)=x²』と

『y=f(u)=u²』を組み合わせた合成関数と見ることもできる。」

 

僕:「『x²』を『u』と置いて

複雑な『y=(x²)²』という式を

『y=u²』という簡単な関数の式に書き換えたんだね。」

 

シエル:「そういうことだ。

y=f(u)とu=g(x)を組み合わせた関数、

合成関数y=f(g(x))の微分法について考えるよ。」

 

 

シエル:「ここまでは大丈夫だね?

ここから、この式の分母分子に

『g(x+h)-g(x)』をかける。

 

ミア:「今度は分母分子に同じ数式をかけるのね…

『1』をかけたのと同じことになるから大丈夫なんだね。」

 



シエル:「切り離した右側の式は、g´(x)のことを表しているね。

左側の式は面倒な形をしているから、単純な式になるように手を加えていくよ。」

 

ミアは片手をゆっくりと上げた。

 

ミア:「ハイ!

『h→0ならば、k→0』のところ…

言っている意味がまったくわかりません。」

 

シエル:「素晴らしい質問だね!

ミクサは、この意味はわかっているかな?」

 

うっ…アクビは、できないな…。

 

僕:「hの値が限りなく0に近づくなら、

『g(x+h)-g(x)』は

『g(x+0)-g(x)』に限りなく近づくことになる。

この式の答えは0だから…

h→0ならば、k→0であると言える。

あと、『g(x+h)=g(x)+k』においても、

h=0とすると、

『g(x+0)=g(x)+k』だから、

h=0ならば、k=0でなければいけない。

 

シエル:「今の説明で大丈夫かな?

…それじゃぁ、続けるよ。」

 

 

シエル:「まとめるよ。」

 

 

シエル:「では、この微分法も使えることを試してみよう!

関数『y=(x²)²』を

『u=g(x)=x²』と

『y=f(u)=u²』の合成関数と見なして、この関数を微分してみるよ。」

 

 

これで『(x⁴)´=4x³』であることも導けた。

なるほど…シエルちゃんは伏線を張るのが上手だな。

 

xⁿの微分

シエル:「ここまで、導関数の求め方についていろいろ見てきたけど、

その中でx¹~x⁴までを微分した際の変化についても同時に確認できたね。

これを表にまとめると、微分のおもしろい規則性が見えてくる。」

 

シエル:「じゃぁミアちゃん、表の❔には何が入ると思う?」

 

ミア:「え?」

 

ミアはしばらく表を見つめながら考える。

 

ミア:「1.2.3.4...、"x"の前の数字が5で、1.2.3...わかった!

5x⁴』だ!」

 

シエル:「正解!

小さい数字が前に出た一方、小さい数字自身は1つ減っているね。

この変化は表にまとめてみてみると一目瞭然だよ。」

 

 

シエル:「一般にnが自然数のとき、

『xⁿ』を微分すると

『nxⁿ⁻¹』になる。

これが微分の規則性だよ。」

 

ミア:「ねぇシエル、『x』とか…変数が無い場合はどうなるの?

 

シエル:「その場合は定数に『x⁰』をかけてやれば、同じように微分の法則が使えるよ。」

 

 

シエル:「この法則を知っていれば微分の計算スピードは格段にアップする!

じゃぁ練習として

『y=5x³+6x²+2x+7』を微分してみよう。」

 

 

シエル:「これで準備は概ね整った!

これから波の解析に重要なオイラーの公式を導いていく。

その前に確認だが…

"神の言葉"ミクサはどこまで知っている?」

 

To be continued.

 

6000字は無理ゲー...

参考書籍

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文明崩壊のサイクルに迫る。~なぜ繁栄した都市は放棄されたのか?~

【文明崩壊編】
・第一章『イースター島の文明崩壊』

 

CONTENTS

 

レイ:「2007年…メキシコの巨大海底洞窟を3人のダイバーが調査していた。

暗闇の洞窟内を注意深く進み、最深部へとたどり着いた彼らが目にしたのは、足元に広がる"大空間"へと続く巨大な穴だった。

スペイン語で『ブラック・ホール』を意味するオジョ・ネグロと呼ばれるこの穴の先で…

サーベルタイガーやオオナマケモノといった更新世の動物骨に混じって、一人の人間の遺骨が発見された。

この遺骨を骨学鑑定した結果、概ね1万3000年前にこの地にやってきた16才前後の少女であることが断定され、ギリシャ神話の水の妖精『ナーイアス』にちなんでナイアと名付けられた。

アメリカ大陸先住民の祖先であるナイアが生きた時代から約1万年後、この地では高度に発達した建造技術と独自の文字体系を有する古代文明が栄えていた。

…文明崩壊にはサイクルが存在する。

古代ギリシアやローマと同じく、この文明も崩壊した。

かつて『人類のユートピア』と呼ばれたマヤ文明はなぜ崩壊に至ったのか?

ミクサ…投資家である君は、真実を知り、受け入れなければならない。

今、人類を破滅へと導いているのは『投資家』であるということを…。」

 

文明崩壊のサイクルに迫る。~なぜ繁栄した都市は放棄されたのか?~

古典期マヤを代表する巨大都市

アンティーク調に統一された広い部屋…

祖父母が他界して直ぐのこと、「この家に住みたい」と彼女は両親に頼み込んだそうだ…

両親は、彼女の初めての自己主張に応え、この家を彼女に与えた。

それ以降彼女は、この家の扉に鍵をかけ、外界との干渉を絶った。

 

レイちゃんはミアの妹で、三姉妹の末っ子だ。

 

ミアの頼みで、僕はたまにこの家を訪れている。

なぜかはわからないけど、僕はこの家に入れる…

ミアが言うには、『僕は彼女によく似てるから』だそうだ…意味がわからない。

 

レイ:「・・・今、人類を破滅へと導いているのは『投資家』であるということを。」

 

僕:「…投資家が人類を破滅させるとは驚いたな。

確かに投資家は商品の価格を吊り上げて、供給網を混乱させるし、

不景気になるとパニックに陥って、それが危機を招くことも多々あるよ。

でも、投資家の本来の仕事はお金の無いところにお金を届けることで、これは社会にとって大切な役目だと思うけどな…。

マヤ文明崩壊の歴史…これを知れば、どういうことかわかるんだね?」

 

レイちゃんは軽く頷き、語り始めた。

 

レイ:「古典期マヤを代表する巨大都市『学術と芸術の都』コパン。

この地に人類が居住を開始したのは、紀元前2000年頃からだと言われている。

当時この地では、度重なるコパン川の氾濫によって、肥沃なはずの谷底の土地が利用できず、少ない農地をめぐって、独立した村落が互いに争い合っていた。

紀元後100年頃、外部の都市から土木技術が持ち込まれると、この問題は解決され、それと同時に、この地の様相も変化を強めていく…」

 

 

レイ:「利用可能となった肥沃な土地は、コパンの民に十二分な食料を供給してくれた。

豊かになったコパンの人口は増え続け、やがて、谷底の土地は全て住居と耕作地で覆いつくされるまでになる。

400年代になると、『ヤシュ・クック・モ』なる人物がやってきて、後に17代まで続くコパン初の王朝を創始する

王は民に降雨と豊穣(ホウジョウ)を約束することで、見返りとして支配権と豪奢(ゴウシャ)な生活を享受した。

 

僕:「この前教えてくれたイースター島の話を思い起こさせる展開だね。

イースター島の首長たちは権力の象徴としてモアイ像を欲した…ひょっとして、古代マヤの王たちが欲したのは、遺跡で多く見られる巨大な建造物だった…!?」

農業の変化

レイちゃんは話を続ける。

 

レイ:「マヤの農耕は焼き畑式農業として知られる方法で始まった。

森の一区画を切り開き、雨が降る前に焼いて作物の種を植える。

森を焼いた灰は肥料となり、短期的に土地の肥沃度を増大させるが、その反動として2~3年後には、その土壌の生産力は急激に低下してしまう

人口密度が低く、農民が数年毎に移動するだけの土地がある間は、この農法は非常に上手くいっていたが、人口が増えるに連れて限界が見えてきた。

農民たちは『休閑期の短縮』や『二毛作』『灌漑(カンガイ)』などを複合的に利用することで、生産性を高め、増加し続ける人口を維持しようと奮闘した。

 

僕:「そこまで切羽詰まった状況だったのなら、流石に支配者側の人間も、何か対策を講じるはずだよね?

農地も無限に作物を生産できるわけじゃない…こんなドーピング的な方法では、すぐに行き詰るのは明らかだ。」

 

レイ:「コパンの人口は5世紀頃から激増し始め、古典期後期(750~900年)には最大数の27000人に達したと考えられている。

この時期には、人口増加を支えるためにリスクの高い急斜面の耕作さえも余儀なくされていた。

支配層はそれを見て、

『王を称える石碑』を650~750年にかけて大型化させた。

700年以降になると、王だけではなく貴族までもが自分の宮殿を建造し始め、800年にはおよそ20の宮殿が建てられた。

この時期のコパンでは広範囲で森林が切り払われた痕跡があり、伐採された木の大部分が燃料に、そして残りが宮殿の建設や、宮殿を彩る漆喰の材料として利用された。

 

僕:「酷いな…こんな権力者たちの手のひらで踊らされるような人生は送りたくないね。」

そして、文明は崩壊した。

レイ:「木を失った森は、表土が雨風に直接晒されるため侵食され易くなる。

コパン地域でも例外はなく、雨によって浸食された急斜面の地力の低い土が、谷底の肥沃な土を覆い隠した。

これにより食料生産量は急減し、ただでさえ限界に達していた食料供給は危機的状況に陥ってしまう…

そこに人為的な旱魃が追い打ちをかけることになる。」

 

僕:「『人為的な旱魃』?旱魃は自然現象じゃないの?」

 

レイ:「森林は水が循環する過程で重要な役割を担っている。

特に熱帯地域での大規模な森林破壊は降雨量の減少を引き起こしやすいんだ。

農民たちは少ない農地をめぐって、再び争うようになる。

それも昔よりも人口が増加している分、大規模で過激なものであったことは言うまでもない…

王の宮殿は焼かれ、公約を果たせなかった王は、責を負われ神への生贄に捧げられた…と考えられている。

コパンの人口は最盛期の27000人から徐々に減少が進み、1250年頃を境に、この地に人が住んだ痕跡はなくなった。

こうして、繁栄した都市は完全に放棄され、賑わっていた景観は今では、森林に囲まれてひっそりと佇む遺跡へと姿を変えた。

…文明崩壊にはサイクルがある。

母なる自然から食料を授かると、人口の増加とともに文明化が進む。

社会統治システムが生まれ、支配層への富の集中が起こる。

そして多くの場合、環境破壊が進む。

やがて、自然の食糧供給能力が人口の増加を賄えなくなると、凄惨な紛争の末、文明は崩壊する。

 

確かに…文明崩壊にはサイクルがあるようだ。

でも、人間は過去から教訓を学び、過ちの繰り返しを防ぐことができるはずだ!

僕は一つの疑問をレイちゃんに投げかけた。

『今回は違う』!?

僕:「確か…古代マヤは広大で、他にもたくさんの都市が存在しているはずだよね?

それに、コパンに土木技術が持ち込まれたということは、外部都市とも交流があったはずだね。

コパンの前に同じように崩壊した都市がなかったとしても、コパン崩壊の歴史から他の都市は教訓を得られている可能性が高い

もしそうなら、コパン以外の都市は、このサイクルに当てはまらない形で崩壊していったことになるよね?」

 

レイ:「コパン崩壊の約600年前、エル・ミラドールという都市が人口増加と森林伐採によって放棄された。

この地を象徴する建造物『ラ・ダンタ』は世界最大級のピラミッドであることで有名だ。

古典期マヤの多くの都市が同時期に放棄された『古典期マヤの崩壊』は旱魃による影響が大きかったと考えられているが…最新の分析の結果、マヤ地方の旱魃は208年に一度の周期でくり返されていることが判明した。

旱魃はマヤ地方にとって珍しいことではなかった…

だが、マヤの都市を統治する王たちは、旱魃に対する対策を講じるよりも、目先の課題...私腹を肥やすことや戦争を行うこと。

また、その原資を平民から取り立てることなどに注力した。

そして、後古典期を代表する都市チチェン・イツァやマヤパンも、コパン崩壊の事例を活かすことなく、同様に崩壊していった。

歴史は繰り返す…なぜなら、人間には遠い過去の出来事を軽視する傾向があるからだ。

 

こんなこと、到底受け入れられるはずはない…

僕たちはより豊かになるために、そして…この国の社会秩序を維持するために働いている。

より多く稼ぎ、消費し、余ったお金は投資して経済を回す…

これを否定してしまったら、僕はずっと自信満々で間違ったことをやり続けていたことになってしまうじゃないか!

 

僕:「…それでも今、多くの人が環境問題を気にしている。

もちろんそれは僕も例外ではないよ。

きっとみんな危機感を持ってくれるはずだ!

そしたら不要に物を買うこともやめて・・・」

 

レイちゃんは僕の言葉を遮るように声を重ねてきた。

 

レイ:「ミクサ…君は今の仕事を好きでやっているのかな?

 

僕:「…誰だって、労働なんて好き好んでやったりしないよ。

生きるためには稼がなくちゃいけない…仕方ないんだ・・・!!」

 

レイ:「今、地球上に生きる80億人の人類の多くが仕方なく働いている。

マヤ文明崩壊後、1000年の時を経て再生した森林は、今再び、住民たちによる伐採の危機に晒されている

ある地域では、1000年かけて生成された土壌が、農耕が再開されてからわずか10年で基岩まではぎとられてしまったそうだ。

過去の教訓は人々の行動を変えたりはしない…生きるために仕方なく、同じ過ちを繰り返す。

確かに、マヤ地方やイースター島は地球全体として見れば小さな面積を占めているに過ぎない…

だが、宇宙を海に例えるなら、地球は宇宙に浮かぶ小さな島の一つに過ぎない。

…危機が目前に迫り、且つ、採れる選択肢が絶望的だった場合、多くの人が同じ言葉を口にする。

ミクサも投資家なら聞き覚えがあるだろ?

"This time is different"

『今回は違う』だ。」

何を信じて生きるのか?

レイ:「"This time is different"『今回は違う』だ。」

 

僕:「!!」

僕のやってきたことはすべて間違いだったのか?

人間の経済活動が、人類の文明の寿命を縮めていたなんて…

じゃぁ僕は、これから何を信じて生きればいいんだ…。

ドサッ!

膝に力が入らなくなり、僕はその場に座り込んだ。

 

僕:「なるほど…レイちゃんの気持ちが少しわかった気がするよ。

ハハハ…明日から罪悪感を抱きながら働かないといけないわけだ。」

 

レイ:「これから…どうするつもりだ?」

 

僕:「わからない…とりあえず今まで通りの生活を続けるよ。

たとえそれが…間違った行動だったとしてもね。

でも、絶対に見つけてみせるよ!この難問の解決策を。

そしたらレイちゃん…君のことも救えるかな…?」

 

レイちゃんは窓の外…ずっと遠くを見つめながらつぶやいた。

 

レイ:「待ってる…。」

 

参考書籍

古代マヤ文明-栄華と衰亡の3000年 (中公新書)

土の文明史

文明崩壊 上巻

文明崩壊 下巻

 

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文系投資家の修行~三角関数は投資家を救うのか?~【後編】

※当記事は、下記記事からの続きとなります。

【波の解析編】

・第一章『複素数の極形式』

・第二章『正弦波』

 

CONTENTS

 

昼食の後、僕たちは雑談に花を咲かせていた。

 

ミア:「ねぇシエル、港に船が止まっているとしたら、どんな船を想像する?

あと、その船には簡単に乗船できる?

 

シエルちゃんは面倒くさそうに答える。

シエル:「何その質問?何かの心理テスト?」

 

僕:「結構有名なやつだよ。

因みに、ミアと僕は全く同じ答えで、簡単に乗り込める、小さい漁船を想像したんだ。」

 

シエル:「ふ~ん。

海賊船かな…でっかいヤツ。

セキュリティは厳しくはないけど、私が認めない限り乗せることはない。」

 

ミアは少し表情を曇らせて言う。

ミア:「なるほど…じゃぁ、その船の中に動物が乗っているとしたら、何が乗っている?

 

シエル:「次は動物?

うーん、パッと思い浮かぶのはライオンだね!

なんで居るのかはわからないけど...。」

 

ミア:「じゃぁ答えを言うね。

このテストでわかるのは、

船の大きさは、野心の大きさで、船が大きければ大きいほど野心も大きいです。

船の乗り易さは、その人の心が開放的かどうかを表していて、乗り易いなら開放的で、乗りにくいなら閉鎖的です。

中の動物は人生の満足度を表していて、小さい動物を想像した人は満足度が高く、大型で凶暴な動物を想像した人は爆発寸前です!

シエル...悩みは抱え込まないで相談すると楽になるよ。」

 

シエルちゃんは僕たちから視線を逸らして言う。

シエル:「2人に相談することなんてないよ!

...ところで、2人はどんな動物を想像したのかな?」

 

僕:「これも、全く同じで猫だったんだ。

長いこと一緒に居ると、考え方も似るものだね。」

 

シエル:「そうですか!2人とも今が幸せの絶頂とは、羨ましい限りだよ!」

 

僕:「ハハハ、そうだね。」

そう...今が幸せの絶頂だ。

だから、僕の進む先にあるのは、もう下り坂だけだ。

 

シエルちゃんは一瞬だけスマホを光らせて時間を確認する。

シエル:「おっと、休憩はこの辺にして、そろそろ話を進めないか?」

 

僕:「そうだね。

そういえばシエルちゃん、咳止まったね。

ご飯食べたら風邪の症状が軽くなることってあるけど、それかな?」

 

シエル:「確かに、今気づいたぞ!

...よし、始めようか!」

文系投資家の修行~三角関数は投資家を救うのか?~【後編】

弧度法

シエル:「よし、始めようか!

これから『波の解析』に重要な正弦波について詳しく見ていくが…

その前に基礎知識として、これから教える2つのことを頭に入れておいてほしい。

一つ目は『弧度法』だ。」

 

ミア:「コドホウ?」

 

僕:「そっか、前にこの話をしていたときはミアは熟睡していたね。」

 

ミア:「・・・」

 

シエル:「弧度法は意味が理解できないとつまづくことが多い…まさに文系泣かせの表記法だ。

でもルールがわかれば簡単だ。

通常の度数表記では360°と書くものを、弧度法では2πと書く…たったこれだけだ。

つまり、360°=2π…これより、

あらゆる角度に『360°分の2π』を掛ければ、その角度を弧度法で表すことができる。

たとえば、180°は

180°×2π/360°=π…となる!

じゃぁミアちゃん、60°を弧度法で表したらどうなる?」

 

ミア:「360°分の2πを掛ければいいのよね?

え~っと…

わかったよ!

60°は『3分のπ』!」

 

シエル:「いいねぇ~。

じゃぁ270°は?」

 

ミア:「これも同じようにして…

270°は『2分の3π』!」

 

シエル:「エクセレント!

ミアちゃんは並みの高校生より冴えてるよ!」

 

ミア:「フフッ…楽勝♪」

 

シエルちゃんはミアをおだてるのが上手いな…。

 

シエル:「次はミクサの番。

『4分の3π』は何度?」

 

僕:「2π/360°の逆数を掛ければいいね。

4分の3πは135°のことだね。」

 

シエル:「よし。2人とも弧度法については理解できたね。

今後は、度数表記をやめて弧度法を使っていくよ。

では基礎知識の二つ目…関数の平行移動だ。

座標平面上に点Aがある。

点Aの座標は(x,y)だ。

この点Aをx軸方向に1、y軸方向に1動かしたところを点Bとしよう。

この時、点Aから見た点Bの座標は

(x+1,y+1)だが、同時に点Bから点Aを見ると、

点Aの座標は(x-1,y-1)となる。

関数の平行移動では、点Bから見た点Aのことを考える。

つまり、関数y=xをx軸方向にP、y軸方向にq平行移動させた関数は、

y-q=x-p⇒y=(x-p)+qとなる。
試しに、二次関数y=x²をx軸方向に1、y軸方向に1動かしてみよう。

※上図はイメージです。

 

ミア:「なんとなく、わかるような…わからないような?」

 

シエル:「基本的に関数のグラフは、式を

『y=a(x-p)+q』の形に直してから描く。

二次関数の場合も同様に、

という式を

の形に変形させてから描く。

因みにこれは平方完成と呼ばれる手法だが、覚えておいて損はないぞ!」

 

僕:「平方完成はさておき…

要は、x軸側の符号は逆になるんだね。

やや直感に反するけど…なんとかなりそうだよ。」

 

シエル:「では、本題に入るとしよう!」

正弦波の変形

シエル:「では、本題に入るとしよう。

これまで、正弦波のことを

『y=sinx』としてきたけど、ここからは

『f(x)=sinx』と改める!

度数表記もやめて弧度法で正弦波を描き直すよ。」

 

ミア:「うん…ここまではOKだよ。」

 

シエル:「じゃぁ、このグラフを

x軸方向に-π/2…つまりマイナス90°平行移動させると、このグラフはどうなると思う?」

 

ミア:「う~んと…

0のところがマイナス2分のπに来るんだよね?

えーと…こんな感じ?」


僕:「すごいなミア!僕はこういうのちょっと苦手だな…。」

 

シエル:「流石ミアちゃん!理系の素質があるね!」

 

ミアは少し照れた顔で言う。

ミア:「そうかな~?シエル、夜ご飯も食べて帰る?」

 

シエル:「ホントか!?ゴチになる!」

 

『生活費カツカツ』…じゃなかったのか?

 

シエル:「何度も言うけど、関数のグラフは式を

y=a(x-p)+qの形に直して描く。

もちろん、これは三角関数も例外ではないよ。

先ほどの、

x軸方向に-π/2動かした三角関数の式を次のように書く。」

 

シエル:「あと、気付いてるかもしれないけど…

この式のグラフは

余弦派『f(x)=cosx』と同じものだよ。

つまり余弦派も正弦波の一部だったということだね。

 

僕:「なるほど…他にも、いろいろと変形ができそうだね?」

 

シエル:「もちろん、これだけじゃないよ♪

次は振り幅を2倍に増幅させてみよう…式は、

『f⒳=2sinx』だ。」

 

シエル:「最後に周期をイジる。

これまで見てきた正弦波はどれも2πで一周する関数…

つまり周期2πの周期関数だった。

じゃぁ試しに『f⒳=sinx』の周期を2πから半分のπにしてみようか。

式は『f⒳=sin2x』だ。」

 

シエル:「まとめるよ!

多くの文系人は正弦波のことを

『y=sinx』の式で認識しているけど…

正弦波の本当の姿はこのような式になる。」

 

僕・ミア「かっこいい…」

僕は、ミアが同じ言葉を発したことに少し驚いた。

 

僕:「ミアは、この式のどこがかっこいいと思ったの?」

 

ミア:「だってこの式、一つも数字が入ってないんだよ!

それに、横一列に並んでいて…すごいシンプルだよね!」

 

僕:「うん、そうだね!

これを使って波を解析するのか…面白そうだな。」

 

シエル:「これで満足しちゃだめだよ!

波の解析ではさらにカッコイイ式が登場するからね♪

じゃぁ、正弦波の式を使って、

振り幅が3で周期πの正弦波を、x軸方向にーπ/4だけ平行移動させたグラフを描いてみよう!」

咲いたコスモス、コスモス咲いた。

シエル:「変形させた正弦波を無数に組み合わせていくことで、あらゆる波の形を合成して作り出すことができる。

その波が、どんな波の組み合わせでできているのかを調べるのが波の解析だ!

ただ…そのためには、文系人には少しキツイ試練を乗り越えてもらう必要がある…。

加法定理だ。」

 

僕:「・・・避けては通れないの?」

 

シエル:「無理だ。受け入れろ。」

 

ミア:「加法定理…なんだっけ?」

 

僕:「いっぱい公式が出てくるやつ。」

 

シエル:「加法定理は文系人中心に敬遠されることが多い。

だが、そこまで難しく考える必要はないよ。

たった3つの公式さえ知っていれば、三角関数の公式を全て導き出すことができるんだ。

ミアちゃん、sin(90°)はsin(30°+60°)で導けるけど…計算してみてくれる?」

 

ミア:「sin90°=1…わざわざ計算しなくてもわかるけど…

sin30°もsin60°も、今日の話で出てきたよね。

え~と…

sin30°は1/2で、sin60°は√3/2だから…

・・・あれ?」

シエル:「そう計算できれば簡単なんだけど、残念なことにそうじゃない。

これを計算できるようにするのが加法定理だよ。

この2つの公式を、

『咲いたコスモス、コスモス咲いた』で丸暗記しろ!


シエル:「最初は拒絶反応で苦しいだろうが…

数学の基本は『習うより慣れろ』だ!

とりあえず、sin90°をこの公式に当てはめて計算してみようか!」

ミア:「なんでただの足し算がこんな複雑になるのよ…

この式に数字を当てはめればいいのね?」


ミア:「できたけど…これすごい疲れる…。」

 

僕:「まるでパズルみたいだね。

ところで、(α-β)の場合はどうするのかな?」

 

シエル:「βをーβに置き換えればいいだけだよ。

図を見てもらえばわかると思うけど…θの値をマイナスにした場合、

y軸に値するsinθの値だけが符号がマイナスになり、cosθの値は変化しない。

つまり、『sin(-β)』は『ーsinβ』となり、『cos(-β)』は『cosβ』となる。」

 

 

シエル:「これら加法定理の公式を使えば、さまざまな三角関数の計算公式を導くことができる。

やることは簡単で、これら式を足したり引いたりすればいい。

まずは『sinα・cosβ』を導こう。」

 

シエル:「次は『cosα・cosβ』だ。」

 

シエル:「最後は『sin²α』『cos²α』だ。

これには加法定理とは別に、もう一つの公式を使う…覚えているかな?

『sin²α+cos²α=1』

 

シエル:「これで主要な三角関数の公式は概ね出揃ったよ。

まぁ…実際に使う時には、その都度振り返るから安心しろ!」

 

ミア「はぁ~疲れた…

私そろそろ限界かも。」

 

僕:「そうだね。

三角関数のフルコース…ミアもよく頑張ったと思うよ。」

 

シエル:「…まぁ、文系の2人としてはよく持った方だと思うよ。

じゃぁ、ここからの話は覚えなくてもいいから気楽に聞いてくれ。

三角関数の合成についてだ。」

三角関数の合成

シエル:「三角関数の合成は、正弦波と余弦派を組み合わせて、一つの正弦波の式に変換するテクニックだ。

ここで問題なのが、この公式の『a・b』がいったい何なのか?ということだ…

これを調べるために先ほどの加法定理を使う。」

 

シエル:「これを踏まえて直角三角形を描けば、『a・b』がどの辺なのかわかるね。」

 

シエル:「例として、

『√3sinx+cosx』を合成させてみるね。

公式に当てはめると、

a=√3、b=1、斜辺が2だよ。」

 

シエル:「ここまでわかれば合成は簡単だ。

合成された正弦波を見てみよう。」

 

シエル:「このように、正弦波と余弦派を合成させると、

振り幅が|√a²+√b²|で、スタート位置(←これを位相と言う)がαだけずれた正弦波を作り出すことができる。

最後に、複数の正弦波を合成させて、複雑な波の形を作ってみるよ。」

 

ミア:「なんだか正弦波ってクネクネしててかわいいね♡」

 

シエル:「おっ!ミアちゃん、いいこと言うね~♪

今日の授業はこれでおしまいだよ。」

この旅の終着点

僕:「ねぇシエルちゃん…そろそろ、『僕たちがどこを目指して進んでいるのか?』教えてくれないかな?

目的地が見えないまま、文系人が数学の勉強をやり続けるのは、正直キツイから…。」

 

シエルちゃんは少し間を開けてから口を開いた。

シエル:「・・・確かにそうだな。

波の解析について、私の目標は、ミクサがこの数式を理解することだ。」

 

意外とシンプルな数式だな…でも、ほとんど意味がわからない。

まずは最初の総和記号の下にある『-∞』だ。∞にマイナスもプラスもないだろ!?

最後尾はオイラーの公式かな?

でも、分数の意味がわからない…。

そして最も謎なのが…

 

ミア:「シエル…真ん中にある『Cn』って見たことないけど、何なの?」

 

僕:「!?」

 

シエルちゃんは満足そうな笑みを浮かべて言う。

シエル:「2人とも、ちゃんと数式を読もうとしたね。感心感心♪

実は、この式は長くて複雑で美しくないから、『Cn』という記号で数式を折り畳んでいるんだよ。

『数列のa₁.a₂.a₃...an』みたいなものだよ。

じゃぁ、『Cn』を展開するよ。」

 

僕:「ハハハ、ガチなやつだ!」

 

シエル:「これは複素フーリエ級数と言って、波の解析における基本公式の一つだ。

数学者たちがこの式を追究し続けたからこそ、人類のテクノロジーはここまで進歩してきた。

投資家がこれを学ぶべき理由は2つある…

一つは、言うまでもなくチャート分析に応用可能だからだ。

多くの人とは違う視点で分析できれば、価格変動の隠されたシグナルを見つけ出せるかもしれない。

そして重要なのが二つ目の理由だ。

この式を理解するためには、三角関数を始め、シグマの計算、微分・積分、指数・対数、複素数の基礎知識が必要だが…

おそらく、全人類の50%以上が、これら知識を理解しないまま一生を終える。

つまり、この式が理解できれば、50%以上の人間を数学知識で出し抜けるということだ!」

 

僕:「"投資の利益は、自分以上の愚か者を何人増やせるかによって決まる"…か。

確かに、闇雲に数学を勉強するよりも、これを理解した方が早そうだね。」

 

ミア:「あの…私も、このまま付き合おうかな…

もう、頭のいい人に利用されるのはイヤだから。」

 

シエル:「決まりだね。

では、今後の目標を『複素フーリエ級数を理解する』ことに定める!

そして次は、文系殺し四天王が一人、微積分を攻略する!」

 

ミア:「高校時代の恨みを晴らさせてもらわないとね!」

 

僕:「ミア…僕たちは文系で、そもそも高校時代に微積分を習ってないから、恨みは無いはずだよ。」

 

ミア:「え…そうなの!?」

 

人生、山あり谷ありだ。

良い事があれば、悪い事もある…

会社の経営が"本格的に"傾き始めたのは3年前からだ。

正直、この先どうなるかなんてわからないけど、『倒産』の二文字が脳裏をよぎる。

『終身雇用』が都市伝説だったことを知り、

『一流企業の従業員』という僕のアイデンティティは完全に砕かれた。(恥ずかしながら本当にそう思ってた…)

このことはまだ、ミアには言えてない…。

僕に残された時間は、あとどのくらいだろうか?

早く、計画を進めなくては…社畜計画を。

参考書籍

文系編集者がわかるまで書き直した 沁みる「フーリエ級数・フーリエ変換」

マンガでわかるフーリエ解析

東京大学の先生伝授 文系のためのめっちゃやさしい 三角関数

東大の先生! 文系の私に超わかりやすく高校の数学を教えてください!

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文系投資家の修行~三角関数は投資家を救うのか?~【前編】

CONTENTS

 

人生、山あり谷ありだ。

良い事があれば、悪い事もある。

でも、悪い事が続いたからといって、次良い事が起きてくれるわけではない。

人生が描く波形は、とても複雑で、それでいて不規則だ。

この残酷なシステム下で、

すべての人に共通する唯一の救いは、この波には"終着点"があること。

問題は…技術の進歩が終着点を遠ざける一方で、ショートカットするのも決して容易ではないことだ。

文系投資家の修行~三角関数は投資家を救うのか?~【前編】

再会

シエル:「喜べミクサ!今日もシエルちゃんとおしゃべりする権利が与えられたぞ!」

 

僕:「え~っと…今日来る予定だったっけ?」

 

ミア:「あ!そういえばそんなこと言ってたような…。」

 

シエル:「おい!まさか、このくだり毎回やるのか!?」

 

ミアは僕のパートナーで、シエルちゃんはミアの妹だ。

数学は大の苦手分野だけど、投資家としてそうは言っていられない…

数学の本を数ページ読んでは項垂れる…そんなことを繰り返していた僕を、たまたま家に来た数学オタクのシエルちゃんに目撃され、それを機に僕は彼女に波の解析法について学ぶことになった。(参照)

今日は、のんびり過ごしたかったんだけど...。

 

シエル:「ゲホッ、ゲホッ!」

・・・咳?

 

ミア:「ちょっと…もしかして風邪ひいてる?」

 

半ばキレ気味のミアの問いかけに対し、シエルちゃんは平然と答える。

 

シエル:「大丈夫だ!少し風邪気味だが…問題はない!

気は遣わなくてもいいぞ。」

 

『逆に、少しは気を遣ってくれ…。』

そう思ってしまった僕は無慈悲な人間なのだろうか。

 

ミアは呆れた顔で言う。

ミア:「はぁ~…今日一日家で寝て、風邪を治すという選択肢は無かったわけ?」

 

シエル:「ゲホッ、ゲホッ!ズズーーー!(鼻をかむ音)

そんな選択肢はない!

だって誰もいない家に一人で寝てるなんて寂しいじゃん!」

 

僕:「その気持ちは少しわかるな。」

 

ミア:「なに共感してるのよ…もう風邪ひいて来るのはこれっきりにしてよ。」

 

シエルちゃんはニカッと笑いながら言う。

シエル:「二人とも理解が良くて助かるよ。

オジャマしま~す。」

サイン・コサイン…

僕たちはリビングのテーブルへと向かう。

 

シエル:「今日は冷えるねぇ、外は一段と寒かったよ~。

ミクサ、何かあったかい飲み物はないのか?」

 

僕:「はいはい先生わかりましたよ~。」

そう言って僕は生姜湯を作ってシエルちゃんに手渡す。

 

シエル:「おー!生姜湯とは気が利くね。

少し甘さが足りないが…風邪ひいてるときに飲むと、なんとも美味だねゲホッ!」

 

僕:「まったく…風邪ひいてるのに、よく数学の話なんてしようと思えるよね…

今日は、なにを教えてくれるのかな?」

 

シエル:「今日は波の解析の基本、三角関数についてだ!」

 

ミア:「波を解析するのに、三角形?」

 

シエル:「三角形バカにすんなよー!すごいんだぞ三角形は!

ミクサは『三角比がどういうものか?』くらい知ってるよね?」

 

いきなりか!えーと…

 

僕:「サイン・コサイン・タンジェントだね。

直角三角形の左側の角度がわかれば、2つの辺の比率がわかる…で合ってるかな?

確か…直角三角形の3辺には、斜辺・対辺・隣辺という名前が付いていて、高校生の頃はサイン・コサイン・タンジェントの頭文字を筆記体で書いて、どの辺の比か覚えたよね。」


シエル:「よし、じゃぁ次に、θ=30°の代表的な直角三角形について考えよう。

θ=30°の直角三角形は、対辺:斜辺:隣辺=1:2:√3と決まっているから…

それぞれの辺の長さを1㎝・2㎝・√3㎝としよう。

ミアちゃん、sin30°はいくつになる?

 

ミア:「へっ?私もやるの!?

う~ん…sinは斜辺分の対辺だから…」

 

ミア:「わかった!sin30°は2分の1!

なんだかミアは嬉しそうだ。

 

シエル:「正解ゲホッ!

数学が嫌いな人は、大体ここで『わからない』と即答するからね…。

で…ゲホッ教えようとしても『使わないから』と言う…。

ミアちゃんはスゴイよ!だって考えたんだもん!

 

ミア:「これくらい楽勝だし!」

 

シエル:「じゃぁ、斜辺の長さが10㎝になりました。

この三角形の高さは何センチゲホッ?」

 

ミア:「えーっと…わからない。」

 

僕:「さっきsin30°がいくらになるかわかったから、それを使うんだよ。」

 

ミア:「わからない!そもそも私『波の解析』とか興味ないし!

三角関数とか…使わなくても生きていける自信あるし!」

 

僕・シエル:「あ~…。」

 

シエル:「sin30°が2分の1とわかってるから、これを使えば簡単に解けるよ。」

 

シエル:「この三角形の高さは5㎝だよ。

ちなみに、cos30°についても同じように出せる。」

 

シエル:「タンジェントについては波の解析では使わないから、割愛するよ。

これで三角比がどういうものかわかったね。ゲホッ

じゃぁ、本題に入ろうか!」

三角形から円へ。

シエル:「じゃぁ、本題に入ろうか!

三角関数はθの値が変化することでsinθ・cosθの値がどう推移するかを表したものだよ。

これを知るために、舞台を三角形から半径1の円『単位円』に移す!

座標平面上に単位円を描いて、その円周上を移動する点pについて考えるよ。」

 

ミア:「出たよ『動く点p』!動かないでじっとしとけ!」

 

シエル:「・・・ゲホッ、いいかな?

この点pと原点を線で結んで、x軸とのなす角をθとする。

そして、点pからx軸に垂線を引っ張れば…」

 

シエル:「このように直角三角形が現われるゲホ!」

 

ミアは小声でつぶやく。

ミア:「なんだか線が微妙にずれてるから、直角三角形に見えないね。」

 

僕:「ゲホゲホ言いながら線を引いていれば誰だってこうなるよ。

直角三角形に見えている提で話を聞いてあげよう。」

 

シエル:「聞こえてるぞ。悪かったな!

…ミアちゃん、θの値が30°だったら、

点pのx座標とy座標はそれぞれいくらになる?」

 

ミア:「え~と…さっきやった計算だね。

半径が1だから、斜辺は1㎝で、

点pのy座標は対辺だからy㎝、

x座標は隣辺でx㎝として…

θ=30°だから…こういうことだよね?」

ミア:「sin30°とcos30°の値はわかっているから…」

 

ミア:「できた!

え…でもこれって…?」

 

流石、ミアは呑み込みが早いな…。

 

シエル:「そう!

点pの座標は(x=cosθ,y=sinθ)なんだ!

あとピタゴラスの定理から

『sin²θ+cos²θ=1』が成り立つ。

これは重要な公式だから覚えておいてね。

 

シエル:「ゴホッ…次はミクサ!

θの値が60°のとき、点pの座標はどうなる?」

 

僕:「これは簡単に出せるね。

さっきの三角形をひっくり返して回転させたらいいだけ。」

 

僕:「θ=60°の点pの座標…つまり、

x=cos60°=1/2

y=sin60°=√3/2…だね。」

 

シエル:「まぁ、簡単過ぎたね。ゲホッ

ついでに、θ=45°の場合も考えておこうか。

θ=45°というと、直角二等辺三角形だね。

直角二等辺三角形の辺の比率は

『1:1:√2』と小学校?いや中学校か?

ゴホッ…どっちでもいいわ!で習ったね。」

 

シエル:「θの値が決まれば、sinθ・cosθの値が一つだけ確定する。

これが三角関数だよ。

今調べたものをまとめておくよ。」

正弦波

ミア:「ちょっとシエルいい?

θの値が90°まではわかったけど…もっと大きな…

たとえばθ=300°とかだったらどうなるの?

 

シエル:「θの値が0~180°の間は反時計回りに点pを動かせたね。

ズズーーー(鼻をかむ音)

180°以上の場合は、逆に時計回りに点pを動かせるとわかりやすいよ。

たとえば、θ=300°は、θ=-60°と同じだね。」

 

シエル:「座標平面は4分割されていて、それぞれを第一~四象限と呼ぶんだけど…ゲホッ!

sinθ・cosθの符号は、点pの位置によって変化するから、慣れないうちは図を描いて確認するようにしておくと間違いを減らせられるよ。」

 

ミアは小声でボソッとつぶやく。
ミア:「まぁ…使わないけど。」

 

シエル:「よし。これで三角関数の基礎を復習することができた。

『三角形』から『円』…そしてようやく、ここから舞台は『波』へと進む!

θの値が0~360°まで変化した際のsinθの値の推移をまとめると、こうなる。」

 

 

シエル:「そして、ゲホッこれをグラフ化してみると…」

 

 

ミア:「波だ!」

 

僕:「不思議だな…高校生の頃に習ったはずなのに…初めて知る感覚だ。」

 

シエル:「これが正弦波だ!

あとで説明するけど、cosθの推移が生み出す『余弦派』も、正弦波の一部だ。

これから正弦波について詳しく見ていきたいところだが…

残念なことに私はまだ、お昼ごはんを食べてない。」

 

ミアは軽蔑の眼差しをシエルちゃんへ向ける。

ミア:「シエル…まさか食費浮かせるためにここに来たんでじゃないわよね!?」

 

シエル:「まさか…ゴホッ!

私が、そんなことするセコイ人間だとでも!?

だが、あいにく今は金欠ゆえにカネがない。

ミクサ、どうする?

ゲホゲホッ…病気の妹を、空腹のまま帰らせるのは…さぞや後味が悪いことだろうな!

それに、三角関数のおもしろいのはここからだぞ!」

 

僕:「確かに、かなり後味が悪そうだな…。

・・・デリバリーでいいかな?」

 

シエル:「ゴチになる!」

 

ミア:「今月は生活費カツカツだから、代金はミクサが払ってね!」

 

このタイミングで生活費がカツカツ!?

電気代が原因か?電気代が上がったからなのか!?

うっ…昼食3人分…小遣い制の社畜は救われないな…。

 

後編に続く。

 

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【 2024.4.9 更新】投資状況

ミクサのポートフォリオ

 

『TOPIX』『バンダイナムコHD』を中心に、個人的に思い入れの強い会社へ分散して投資しています。

 

現金は日本円で、保有目標は14.3%なので、下落時には積極的に投資していきたいと思っています。

 

※資産運用記録は、当記事を上書きする形で更新しています。

ブコメ・コメントは、お控え頂けると嬉しいです。

※投資は自己責任で!

 

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"資産運用から生まれた不思議な数字"は投資家を救うのか!?

※当記事は前回からの続きです。

 

CONTENTS

 

『たくさん失敗することはいいことだ。だって、それだけ挑戦したということなんだから。』

 

あのころの僕は、そう信じていた。

いや、そう信じたかった…。

でも…そうじゃなかった。

 

この世界には、失敗する者の居場所なんて用意されていない。

傷付かずに生きていくには、成功し続けなければいけない。

 

だから、僕は欲した。

 

失敗を避けられるだけの知識を。

未来を予測する方法を。

 

資産運用から生まれた不思議な数字は投資家を救うのか!?

投資で勝つ"手段"としての数学

???:「起きろー!」

 

僕:「…ん~?」

寝てたのか…なんだか騒がしいな…

 

???:「起きろー!そして喜べ!

シエルちゃんが泊まりに来てやったぞ!」

 

・・・シエルちゃんはミアの妹で、三姉妹の次女だ。

 

おそらく、30人に1人くらいの確率で生まれてくる天才…だと思う。(数字は微妙だけど…)

天才の定義は曖昧だけど、たぶん「勉強が楽しい」とか言う狂人のことを指すのだろう。

 

僕:「えーっと…今日来る予定だったっけ?」

 

ミア:「この前言ったじゃん!また話聞いてなかったんだね!?」

 

ミアは僕のパートナーだ。

 

彼女には、僕が集中して何かに取り組んでいるときに、狙ったかのように重要なことを告げる妙な癖がある…。

 

シエル:「本を読みながら眠りにつくのは至福のひとときだね!わかるよ~。

なんの本を読んでたのかな~?えーっと、

『超簡単!サルでもわかる数学のキホン』

・・・あ~…。」

 

相手から「あ~…」という反応が返ってくるのは、地味に傷付くものである。

この短い言葉には"哀れみ"や"軽蔑"といった負の感情が詰まっているからだ。

 

僕:「数学が得意な人は、そうでない人よりも予測の的中率が高いって、本で読んでね…それで数学の本を読むことにしたんだけど、いつも読み始めてほんの数分で睡魔に襲われるんだ。」

 

シエル:「ふーん。たぶん眠くなるのは、ミクサが数学を勉強すること自体を目的にしているからだよ。

数学は"目的"じゃなくて"手段"だよ!

ミクサは投資で勝つ方法を知りたいんだよね?

・・・そうだな~、

私が特別に"投資で勝つための手段としての数学"を教えてあげよう!」

 

僕:「あー…でも、数学の本は何冊も読んできたけど、投資で使えそうなものは無かったよ。」

 

シエル:「へ~。

『マンガでわかる』『文系でもわかる』『サルでもわかる』…

この程度の本しか読んでないのに、"使えない"って決めつけるんだね。

・・・クロード・シャノン。」

 

僕:「うっ…」

 

ミア:「クロード・シャノンって、だれ?」

 

僕:「天才数学者であり世界一の投資家だよ。

クロード・シャノンは約25年間で年平均28%という驚異的な利益率を叩き出したそうだ。

ちなみにこの記録は、彼の死後20年を経た現在でも破られていない。」

 

シエル:「世界一の投資家が数学者なんだから、数学が投資で使えないわけがないでしょ!

まぁ、とりあえず聞け!そして驚嘆しろ!

この私、天才シエルちゃんが、文系のミクサでも理解できるように、

『波』を解析する方法を教えてやろう!」

 

虚数(i)♡

シエル:「天才シエルちゃんが、文系のミクサでも理解できるように、

『波』を解析する方法を教えてやろう!」

 

僕・ミア:「波の解析?」

 

シエル:「世界のあらゆるものは波で動いている。

光・音・人間の感情もそうだし、株式の値動きだって波でできている。

もし、波の動きを知ることができたら…それってすごいことだと思わない!?」

 

僕:「そんな大それたことが文系の僕にできるとでも?」

 

シエル:「それはミクサ次第だよ。

まぁ、理解できなくても数学の基本は身に付く

きっと、これを知れば世界の見方が大きく変わるはずだよ!」

 

僕:「そっか…じゃぁ、ダメ元で聞こうかな。」

 

シエル:「いいねぇ~ダメ元!

ミクサがどこまで知っているのかわからないから…

とりあえず、この方程式解いてみて。」

ミア:「ちょっとシエル!それはさすがに舐めすぎだよ!」

 

シエル:「そっかな~、たぶんミアちゃん間違えてると思うよ。」

 

僕:「中学生の問題だね。」

 

 

僕:「答えは『X=±i』だね。」

 

ミア:「なに…途中の変な式…」

 

僕:「『二次方程式の解の公式』だよ。

まぁ…普段使わないし、忘れてるのは無理ないよ。

2乗して-1になる数は、虚数単位iっておいてたよね!

懐かしいね。」

 

ミア:「・・・」

 

シエル:「ちっ…騙されなかったか。

じゃぁ、この数字は何かわかる?」

僕:「オメガ(ω)だね。」

 

シエル:「ほー、これを見てすぐに『ω』を連想するか!」

 

ミア:「勝手に2人で盛り上がらないで!

なによ?その『ω』って。」

 

僕:「『1』にこの数字を3回かけると『1』に戻るんだよ。」

 

 

シエル:「で、この数字をωと置くと、『3回かけると1になる』性質から、こんな感じで計算できる。」

 

僕:「でも、これは遊びだね。知ってたところで、何の役にも立たない。」

 

シエル:「そうでもないさ!

これは虚数の掛け算における重要な性質を表しているんだよ。」

 

見えなくても存在する。

シエル:「これは虚数の掛け算における重要な性質を表しているんだよ。

私たちが普段使っている数字…つまり実数はすべて、数直線上で表すことができるよね?」

 

ミア:「うん。じゃぁ、虚数はどうやって表すの?」

 

シエル:「虚数は『数直線上の外』に存在してるから、縦にもう一本線を引っ張って…」

シエル:「こうすれば、虚数が存在していることがわかるよね。

実数の数直線は実軸縦に引っ張った線は虚軸と言って、

虚数の位置はこの平面を使って捉えるんだ♪

この平面全体のことを複素平面という!

そして、複素平面上にある数字はすべて複素数と呼ばれているよ。」

 

ミア:「専門用語ばっかり…一気に勉強感でてきたわ…もどして!」

 

シエル:「そうだね。お堅い話はこれくらいにしようか。

じゃぁ、ωを複素平面上に表してみるね。」

 

ミア:「もう一つは私が書き込むね!」

 

僕:「回転してるのか!?」

 

ミア:「なにが?」

 

シエル:「その通り。複素数に虚数をかけると、座標が回転するんだよ。」

 

 

シエル:「もう一段話を進めるよ!

ミクサは投資の勉強をしてるなら、"資産運用から生まれた数字"は知っているよね?」

資産運用から生まれた数字

シエル:「投資の勉強をしてるなら、"資産運用から生まれた数字"は知っているよね?」

 

僕:「ネイピア数のことかい?」

 

ミア:「ネイピア数ってあの2.71828…ってやつ?」

 

僕:「うん。たとえば、

年利100%で元本保証付きの金融商品があったとする。

この商品に投資すると、翌年には投資金が倍になる。

別の金融商品は同じく元本保証付きで年に2回、

半年に1回50%の利息が得られる仕組みとなっている。

どちらの商品に投資した方が得だと思う?」

 

ミア:「直感的には、年に2回受け取ったほうがお得だと思うけど...」

 

僕:「その直感は正しいよ。

この場合、翌年の投資金は前者では2倍にしかならないのに対し、

後者は2.25倍になるんだ。

これを数式で表すとこうなる。」

僕:「もっと利息を受け取るタイミングを分散させてみよう。」

僕:「こうやって、利息の受け取りタイミングを無限に分散させていくと、投資資金の増加率はある数字に収束していく。」

 

ミア:「2.71828...『e』だね。」

 

シエル:「つまり、こういうことだね。」

ミア:「『lim』ってなに?」

 

シエル:「リミット(limit)の略で極限を意味する記号だよ。

この場合、『変数nを無限大に大きくする』って意味で、『発散する』っていうよ。」

 

僕:「株式投資をする場合は、可能な限り配当金の受け取りタイミングを分散させることで、効率よく資産を増やすことができそうだね。」

 

世界一美しい数式

シエルちゃんはチラッと本棚を見て言う。

 

シエル:「ミクサは、ネイピア数を使った"世界一美しい数式"を知っているよね?」

 

僕:「オイラーの式のことかい?」

 

ミア:「ちょっと冗談でしょ!?

なによ『eのiπ乗』って…許せないんだけど!」

 

僕:「その気持ちはわかるよ。

僕も最初にこれを見たときは、数学者を許せなかったから。」

 

シエル:「まぁまぁ、落ち着きたまえ。

このオイラーの式は、オイラーの公式のxにπを代入して得られた式だね。」

 

ミア:「三角関数とか覚えてないよ…それに、πとか使ってたかな…?」

 

僕:「確かに、三角関数は計算が特殊で扱いにくい…。

高校数学の復習が必要だね。」

 

シエル:「ハイハイ…じゃぁ、オイラーの公式と三角関数については、今度詳しく教えてあげるよ。

とりあえず今日は、オイラーの公式を使った複素数の極形式にふれて終わりにするね。」

 

複素数の極形式

シエル:「オイラーの公式を使った複素数の極形式にふれて終わりにするね。」

 

僕:「オイラーの公式に活用方法なんてあったんだ!?」

 

シエル:「なにその反応!?

オイラーの公式が、ただの数学者の嗜好的発明だとでも思ってた感じ!?

この公式が無ければ、ミクサの好きな初音ミクも生まれてなかったというのに…。」

 

僕:「それは本当か!?

もしそうなら…僕たちはもっと数学を学ぶべきで、レオンハルト・オイラー大先生に永遠に感謝しないといけない!

 

ミア・シエル:「・・・あ~…。」

 

あれ?なんで二人とも、そんな哀れんだ目で僕を見るのだろう?

僕が何を言ったというのか?

 

シエル:「話をもどすよ。

オイラーの公式を使うことで、複素数の計算を大幅に短縮することができるんだ。

たとえば、(√3+i)⁵を展開するのは骨が折れる作業だね。

複素数(a+bi)ⁿをオイラーの公式を用いて表すと…こうなる。」

 

 

僕・ミア:「・・・あ~…。」

 

シエル:「イメージに騙されちゃだめだよ!

とりあえず、さっき言った(√3+i)⁵を、極形式で展開してみようか!

まず、『√3+i』の座標を確認するよ。」

 

 

シエル:「次に0から座標までの絶対値を算出するよ。

絶対値は、ピタゴラスで出せるよね。」

 

シエル:「0から『√3+i』間の絶対値は2と算出されたね。

あと必要なのはθの値だけ。

3辺の長さの比が『1:2:√3』の直角三角形は、それぞれの角度が決まってたよね?」

 

シエル:「θの値が30°であることがわかったね。

でも、『30°』という表現では、計算が複雑になるから、弧度法と呼ばれる表記に書き直すよ。」

 

シエル:「これで道具はすべてそろった!

『√3+i』を極形式で展開するよ。」

 

 

シエル:「はぁ~美しい…。」

 

僕:「一応、確認しとくね。」

 

僕:「すごい…合ってる。」

 

シエル:「仕上げ!

極形式の形にした『√3+i』を5乗するね。」

 

シエル:「さて、この計算で座標はどうなったかな~?」

 



 

シエル:「最初の小さな三角形が回転されて大きくなったね。

ちなみにこの2つの三角形は相似で、形は同じだよ。」

 

僕:「すごいな…

この計算が『波の解析』に関係あるの?」

 

シエル:「もちろん♪

でも、ゴールはまだまだずっと先。

長い船旅になるけど…やる?」

 

子供の頃から、僕は間違えてばかりだった。

みんな期待してくれてたのに、僕は期待を裏切った。

だから、僕は立ち止まって、

間違いを避けるための知識を、

未来を予測する方法を探し続けている。

『波の解析』これを知れば、僕はまた歩き出せるのかな…。

 

僕:「選択肢なんてないよ。

出航だ!」

 

こうして僕はシエルちゃんに波の解析法について学ぶことになった。

でも、この時は知らなかった…

自分が如何に物を知らずに生きてきたのかを。

そして、数学の美しくも壮大な世界を。

 

 

ミア:「…zzZ」

 

つづく。

 

参考書籍

文系編集者がわかるまで書き直した世界一美しい数式「eiπ=-1」を証明する

文系編集者がわかるまで書き直した 沁みる「フーリエ級数・フーリエ変換」

東京大学の先生伝授 文系のためのめっちゃやさしい 対数

東京大学の先生伝授 文系のためのめっちゃやさしい 虚数

東京大学の先生伝授 文系のためのめっちゃやさしい 三角関数

数学ガール/フェルマーの最終定理

天才数学者はこう賭ける―誰も語らなかった株とギャンブルの話

 

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イースター島の文明崩壊~なぜ人類は破滅へと突き進むのか?~

CONTENTS

 

彼女と最後に会ったのは2年前だった。

 

明るくて、知的で、人に気遣いができる優しい女性だった。

僕は彼女のことを、彼女がまだ14才だった頃から知っている。

僕にとって彼女は本当の妹のような存在だった。

だから、彼女のことはよくわかっていると思ってた…。

 

2年ぶりの再会。

でも、今僕の目の前にいる彼女は、僕の知っている彼女じゃない。

 

・・・彼女はいったい、誰だ?

イースター島の文明崩壊~なぜ人類は破滅へと突き進むのか?~

イースター島の悲しい歴史

数日前、ミアから"妹の様子が変だから会ってほしい"と頼まれた。

なんで僕が嫁の妹と2人で会うという展開になるのだろうか?

三流小説でもあるまいし...。

でも、ありそうにないことが実際に起こるのが現実だ…。

 

僕:「久しぶりだね。レイちゃん。」

レイ:「ミクサ…

ずいぶんと雰囲気が変わったようだけど、何かあったのか?」

 

それはこっちのセリフだよ!!

 

レイちゃんはミアの妹で、三姉妹の末っ子だ。

年は僕の方が上だけど、雰囲気はレイちゃんの方が年上だ。

精神年齢は何歳くらいだろう?

いや...精神年齢がどうとかいうより、これは...

 

僕:「こっちも、いろいろあってね。

ところで、レイちゃんは今なにしてるの?

頭いいし、研究職とか?」

 

レイ:「なにも。」

 

僕:「へっ?でも、ここの家賃…」

レイ:「お金には困ってない。」

 

僕の言葉を遮るようにレイちゃんは言葉を重ねてきた。

どうやら、人の心を読む能力は今も健在のようだ。

 

僕:「・・・」

レイ:「・・・」

 

沈黙…。

困ったな…何を話せばいいのだろう…。

僕が必死に考えていると、レイちゃんが先に口を開いた。

 

レイ:「イースター島…」

 

…はい!?

僕:「"イースター島"って、あのモアイ像のある島のことかな?」

 

レイ:「他に"イースター島"があったんだ?知らなかったな。」

 

うっ…下手な事は言えないな…。

僕:「"イースター島"がどうかしたのかな?」

 

レイ:「ミクサ…

君は、イースター島の悲しい歴史を知っているかな?」

モアイ像の呪い

レイ:「君は、イースター島の悲しい歴史を知っているかな?」

 

僕:「恥ずかしながら、イースター島についてはモアイ像があることくらいしかわからない…。

『イースター島の悲しい歴史』それって、やっぱりモアイ像が関係してるのかな?」

 

レイ:「イースター島…広大な太平洋に孤立して浮かぶこの島は、最も近い陸地であるピトケアン諸島からでも2100キロも離れた場所に位置している。

孤島という閉じられた環境のおかげで、イースター島は、18世紀にヨーロッパ人たちが訪れるまでは、敵国に攻め入られる心配は皆無だった。

さらに、亜熱帯地域にあるこの島は、穏やかな気候と、火山の噴火に由来する肥沃な土壌に恵まれた、まさに理想郷と呼ぶにふさわしい島だった。」

 

僕:「それだけ好条件が揃っていると、島民たちはきっと、幸せな人生を謳歌したんだろうね。

イースター島の文明が崩壊したのは、ヨーロッパ人の襲来が原因なのかな?」

 

レイ:「いや、ヨーロッパ人はこの島の文明にとどめを刺しただけだ。

文明の崩壊は、島民たちの愚かな行為が招いたものだった。」

 

僕:「愚かな行為?」

 

レイ:「イースター島は12の領地に分かれていて、それぞれが漁業や農業、採石、木材加工といった得意分野を発展させていた。

自分たちの不得意分野を他の領地に補ってもらう…この社会システムは現代社会にも通じるものだが、このシステムが競合していたそれぞれの領地をうまく統合させていた。

ある日、12の領地の首長が集まる集会で、こんな話しが持ち出された。

『この中で、一番権力を持っているのは誰か?』

 

 

僕:「あ~…一番やっちゃいけない議論を始めたわけだね。

少しだけ先が読めたよ!それでモアイ像が生まれたんだね。」

 

レイ:「そう。首長たちの話し合いの末『最も大きなモアイ像を立てた者を最高権力者とする』というルールが取り決められた。

首長たちは自分の領地の島民たちに、他の首長よりも立派なモアイ像を造り続けるよう命じた。

そうして、数百体ものモアイ像が島のあちこちに設置されることになる。

やがて、モアイ像の大きさ追究が限界に達すると、今度はモアイ像の頭の上にプカオと呼ばれる帽子を被せ、プカオの大きさで競い合うようになる。

 

僕:「まるで金持ちが不必要に大きな豪邸を建てるのと同じだね。

敷地内に飾られている高級車はプカオの代わりかな?」

 

レイ:「...モアイ像は木で作られたレール上を滑らせるようにして運搬された。

モアイ像を寝かせて橇(ソリ)に載せ、大勢の人が一斉にロープで引っ張る。

モアイ像の大きさ競争も後半戦に突入すると、モアイ像を牽引するのに、500人もの島民が力を合わせなければ動かせないほど重たくなった

当時の島人口は最も有力な説で15000人と推定されているから…約半数の島民が何らかの形でモアイ像に関わっていたことになる。」

 

僕:「頭の悪い権力者のおかげで、島民たちはひたすらモアイ像を造らされ続けたというわけか…確かに、これは悲劇だね。」

そして、文明は崩壊した。

僕:「でも、首長たちはモアイ像造りに励んだだけで、武力で争うようなことにはなってない。

幸か不幸かはさておき、島内は統制されて平和だった…

それなら、なぜイースター島の文明は崩壊したんだい?」

 

レイ:「モアイ像の運搬には、"木製"の橇と、"木製"のレールが必要だった。

それに…木が生い茂る森の中を運搬するのは、あまりにも非効率ではないだろうか?」

 

この言葉で、僕の頭の中でバラバラに点在してた事柄が一本の線で繋がった。

僕:「…まさか!」

 

レイ:「そう。島民たちはモアイ像を運搬するために大量の森林を伐採した。

森林破壊はやがて、大規模な土壌侵食を招き、作物生産量は急減した。

元々この島には25種の海鳥が棲息していたとされているが、島民たちの貴重な食糧源であったこれら鳥も姿を消した。

漁に使う木製のカヌーが作れなくなったため、島民たちは漁に出ることもできなくなった。

野菜も、肉も、魚も…食べるものの多くを失った島民たちは、ネズミやトカゲを食料の代替えとすることで飢えを凌いだ。

でも、それも長くは続かなかった...

追い詰められた島民たちは、最終手段として、それまで利用してこなかった『身近にある最大の食糧源』に目を向けた。」

 

僕:「…人間だね?」

 

レイ:「そうだ。

島民たちは人肉を求めて争った。

この内乱で島民の80%が命を落とした。

ヨーロッパ人がやって来たのはその後のことだった。

ヨーロッパ人は弱り切った島民の半数に当たる1500人を、奴隷として働かせるために拉致した。

更に、彼らはこの島に天然痘を持ち込んだ。

島民たちはこの未知の病原菌になす術もなく、感染はあっという間に拡大した。

人口は更に激減し、1872年に確認された生存者は、たったの111人だけだった。

こうして、イースター島の文明は完全に崩壊し、その後はチリ領となり現在に至る。」

 

もし、満足できていたなら…

僕:「首長たちによる『より大きく』『より美しい』モアイ像が欲しいという欲望が、理想郷だったはずの孤島を地獄へと変貌させてしまったんだね。」

 

レイ:「もし、首長たちが『そこそこのモアイ像』に…『そこそこの生活水準』に…満足することができていたら、イースター島の辿る運命はきっと、今とは違ったものになっていただろう。」

 

僕:「"過度な欲望の追求が、自らの身を滅ぼした"か…

イースター島の歴史から得られる教訓はたくさんあるね。

僕たちは、今よりも豊かになるために働いている。

でも…本当に僕たちは、昔よりも豊かになれているのかな…?

 

ゴーン...ゴーン...

部屋に掛けられている古風な時計が、正午を知らせる鐘を鳴らした。

 

僕:「あっ…話し込んでいたら、もうお昼だね。

これからミアとランチなんだけど、一緒にどうかな?」

 

レイ:「遠慮しておく…一人がいいから。」

 

僕:「そっか…じゃぁ、そろそろ帰るよ。」

そう言って部屋を出ようとした時、僕の頭に一つの疑問が浮かんだ…

 

僕:「ねぇレイちゃん、最後の木を切り倒したイースター島民は、その木を切りながら何を思ったのかな?」

 

レイ:「さぁな。今となってはわからない。

『仕事だから仕方がない』と開き直ったのかもしれないし、

『代替えとなる資源がきっと見つかるさ!』と、自分に言い聞かせたのかもしれない。

『テクノロジーの進化が問題を解決してくれるから心配ない』と楽観していたのかもしれないな。」

 

僕:「そっか...今も昔も、人間の本質は変わらないのかもしれないね。

今日は楽しかったよ。ありがとう。」

 

レイ:「…また来るといい。

次はもっと面白い話をしてあげるよ。」

 

僕:「フフ、それは楽しみだ!

また来るよ。」

 

※元々この記事の構成は、ここから資産運用報告に移っていたのですが、当記事の内容とはほとんど関係がなかったため、R5.4.4、この部分を削除しました。

参考書籍

文明崩壊 上巻

文明崩壊 下巻

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ミクサの投資戦略Part⑤~セガサミーHD株をアホ買いせよ!~

CONTENTS

 

ザーザーザーーー。

今の時刻は23時、天気は豪雨。

静かな部屋の中、地面を打つ雨の音だけが心地よく響いている。

 

あ、光った。

1・2...

バシャーーン!

 

690m。

 

今日の作業は企業分析。

財務書表から企業の安全性を確かめることが目的だ。

調べる企業は『セガサミーHD』

 

初音ミクを起用したスマホゲームで有名な会社だ。

 

利益のほとんどがエンターテイメント事業によるもので、その利益をうまくいかない遊技機事業とリゾート施設の運営が食い潰しているという、少し難のある会社だ。

 

なんで僕がそんな会社に注目しているかというと、

PBR(株価純資産倍率)が1.5倍を下回ったからだ。

 

アニメやゲームの制作会社は、運の要素で業績が大きく左右される。

黒字経営で借金体質でなく、魅力的なIP(知的財産)を有する会社が低PBRで売られていたら、株を買って運の要素で爆益を狙うのが僕の基本戦略だ。

 

決して、僕が初音ミク好きのオタクだから…ではない。

 

あ、また光った。

1・2...あれ?後ろに誰かいる?

 

バッシャーーン!

 

「フ...ただいま、ミア。」

ミクサの投資戦略Part⑤〜セガサミーHD株をアホ買いせよ!〜

少しだけ企業分析

僕:「フ...ただいま、ミア。」

 

ミアは僕のパートナーだ。

普段はしっかりしているけど、少し天然が入ってる...。

このブログに登場する黄色い髪の女の子は、ミアをモデルに僕がデフォルメして描いたキャラクターだ。



 

知り合って10年、僕たちも年をとったものだ...。

 

ミア:「おかえり。また株の調べごと?うわぁ...胃もたれしそう...。」

 

僕:「貸借対照表だよ。それぞれの意味を理解することも大切だけど、とりあえず四角で囲った部分にだけ注目すると、企業の状態がよくわかる。

 

【セガサミーHD:2023年第一四半期 決算プレゼンテーション資料より。】

僕:「この部分の数値をエクセルに打ち込んでグラフにしてみる。

右側がどうやってお金を調達したか?を表していて、上から下に行くほど大きくなっていれば経営が安定し易い。

左側はそのお金が何に形を変えたか?を表していて、こっちは上に行くほど大きくなっている方が好ましい。

 

 

僕:「セガサミーHDの貸借対照表はいい形をしているね。」

 

ミア:「ふーん。でも大手だし…調べなくてもそういうとこはちゃんとしてるでしょ?」

 

僕:「確かに、大手ならちゃんとしているイメージだよね。

でも、僕たちは毎日たくさんのことを直感で決めているけど、結構間違えることもあるよね。

そうだな…哲学者御用達のおもしろい問題があるから、ちょっとやってみようよ。」

線路に人を突き落とせるか?

僕:「ある電車が5人の人がいる方向へ走り出しました。

このままでは5人は電車に轢かれてしまいます。

5人を助ける唯一の方法は、車線を変更して車両を支線のほうに導くことだけ。

でも、そうすると別の一人が死んでしまう…。

車線を変更することは、正しいことですか?

 

 

ミア:「…避難するようにみんなに声をかける。」

 

僕:「この問題は"正しい"か"正しくない"かで答えないといけないから…

ミアの答えだと"正しくない"でいいかな?

5人に声が届く前に、電車は5人を轢いてしまうだろうけど…。」

 

ミア:「ほかに助ける方法は?」

 

僕:「問題に"唯一"って条件が定められているから、残念ながら他の選択肢はありません。」

 

ミア:「じゃぁ…"正しい"。」

 

僕:「うん。この問題に解答した大半の人が、車線変更する判断は仕方ないと考える。

この決断をして悔やんでいる人がいたら、『その決断のおかげで、あの人たちは助かったんだよ!』と、僕もきっと、そういって励まそうとするだろう…。

じゃぁ、次の質問だ。」

 


僕:「暴走した車両が5人のいる方向に向かっている。

なんとかしなければ5人は轢かれてしまうだろう。

あなたはその光景を陸橋の上から見ていて、今まさにその下を車両が通過しようとしている。

あなたの目の前には、かなり太った人が立っている。

あなたはとっさに判断する。

この人を線路に突き落とせば列車は止まって5人は助かるだろう…。

しかし、同時に太った人が死ぬことも確実だ。

太った人を突き落とすのは正しいことですか?

 

ミア:「たぶん、私がいくら頑張って押しても、太っている人を突き落とすことはできないと思う…。」

 

僕:「そうだね。この問題では太っている人の体重が明記されていない...だから、体重次第では、物理的に無理ということもあり得る。

この質問では、大体の人が太った人を突き落とすべきではないと答える。

たとえ5人の命を救うためであっても、別の誰かを犠牲にすることは間違っているというわけだ。」

 

ミア:「でも、それじゃ最初の質問と答えが食い違ってるよ。

5人を助けることが正しいなら、太っている人を突き落とさないと!」

 

僕:「そう。僕たちは状況が少し変わるだけで、決断の方向性を180度変えてしまうんだ。

これを株式投資でやってしまうと、10%の損切りを見送って、50%の損失を出してしまったりする…だから、投資は合理的に考えないといけないんだ。」

 

ミア:「感情を排除して合理的に…

じゃぁ、運用は機械に任せるべきなんじゃないの?」

 

僕:「ふふ…そう言うと思ったよ。

でもそうじゃない。この話には続きがあるんだ。」

合理的な人間が投資をすると…

僕:「1848年のアメリカのとある鉄道工事現場、ここで作業主任を務めていたフィニアス・ゲージという男性が爆発事故に巻き込まれた。

気を失っていた彼が目を覚ますと、長さ1m、直径3㎝の鉄棒が、なんと彼の頭蓋骨を貫いていた。

 

 

ミア:「うっ…これはなかなかショッキングな事故だね…。」

 

僕:「約10週間の入院生活を経て、彼は職場に復帰した。

でも、帰ってきた彼は、責任感が強くて、真面目で、他人に気配りができる以前の彼ではなかった…まったくの別人になっていたんだ。」

 

ミア:「つまり、無責任で、不真面目で、自己中心的な人格になっていたんだね。」

 

僕:「そう。

彼のように、前頭連合野…特に前頭眼窩(ガンカ)野を損傷した人は、感情を読み取る能力が低下する。

その結果、自身の下す決断に道徳的な感情が入らなくなることが多くの症例からわかっている。

つまり、前頭連合野を損傷した人が陸橋の上に立っていた場合、躊躇なく太った人を突き落とし、5人の命を救うだろうね。」

 

ミア:「なるほど…つまり、ミクサが言い出そうとしているのは、前頭連合野を損傷した人が株式投資に手を出すとどうなるか…ってことでしょ?」

 

僕:「当たり!

神経科学者たちは、とても巧妙な『ギャンブル課題』と呼ばれる実験を企画した。

テーブルにA・B・C・Dと書かれた4種類のカードの束が置かれている。

カードの種類は"当たり"と"はずれ"の2種類のみで、"当たり"を引けば報酬が貰えて、逆に"はずれ"を引くと罰金が課せられる…。

A・Bの束は報酬が大きければ罰金も大きく、10枚引くと250ドル損してしまう。

C・Dの束は報酬が少ない代わり罰金も少ない。10枚引くと250ドル得をする。

プレーヤーは、罰カードの出現確率については知らされておらず、それぞれの束で正確にいくら儲かるかもわからない。

更には、何枚カードを引けばこのゲームは終わるのかもわからない。」

 

 

ミア:「わかり難い実験だね。

要は…CとDの束からカードを引き続ければ勝ち逃げすることができるってことでしょ。

つまり、"CとDが良い束だということに気づけるか"がカギだね。」

 

僕:「正解!流石だね。

健常者の場合、40~50枚引き抜いたところでなんとなく良い束に気づいて、その束から引くようになる。

悪い束には段々と"嫌な感情"を抱くようになるんだ。

でも、前頭連合野を損傷した患者は、悪い束からカードを何枚引き抜いても"嫌な感情"を抱くことはなく、ハイリターンを求めて悪い束からカードを引いては、"はずれ"を引いて損して悔しがる。

そんなことをゲームが終わるまで繰り返すんだ。」

 

ミア:「はっきりと『良い』『悪い』はわからなくても、悪いものにはなんとなく"嫌な感情"を抱く…か。」

 

僕:「企業の『安全性』や『利回り』、『現時点で株価が割安かどうか』といったことは合理的に測定可能だけど、会社の将来性は測定不可能だから、僕たちは直感に頼るしかない。

投資で大切なのは『理性で感情を御する』ことじゃない。

理性と感情をうまく組み合わせることが大切なんだ!

ミクサのポートフォリオ

僕:「理性と感情をうまく組み合わせることが大切なんだ!」

 

僕たちが話し始めてどれくらいの時間が経っただろう…

ふと、僕たちは時計に目を向ける。

 

ミア:「1時じゃん!?明日朝から予定があるのに…これじゃ8時間眠れないじゃない!」

 

ミアの理想の睡眠時間は8時間らしい。

そして、大体の日は9時間寝てる…。

 

ミア:「急いで寝ないと…おやすみ!」

 

ミアは寝室へと猛スピードで駆けていった。

 

さて…僕はもう少しだけ起きて投資戦略を練っておくことにしよう。

 

成長も投資も生産性も低く、消費者信頼感も調査開始以来最低となった。上昇しているのはインフレ、金利、銀行員の賞与のみだ。

【レイチェル・リーブス(イギリスの政治家)】

 

現在の世界市場は...

英国・欧州では、高インフレと消費者信頼感指数の低下から景気後退入りの可能性が示唆され始めた。

 

米国経済はしぶとく好調に推移しているように見えるけど…貿易赤字が縮小しているから、確実に米国人の財布の紐は閉まってきている。

 

日本は急速に進む円安に耐えきれず、遂に政府が為替介入に踏み切った。

でも、急速に通貨安が進んでいるのは日本だけじゃない。

中国・韓国・台湾・インドネシア…

これら国もドル売り介入をせざるを得ない状況にあって…まるでアジア通貨危機が再来したかのようだ…。

 

株式市場は欧州・日本・中国は景気後退が織り込まれているのか…それぞれ主要株価指数のPERは12倍前後とだいぶ調整が進んでいるように見える。

でも欧州株はインフレ率が異常に高いからこの水準が安いかどうかは疑問符がつく…。

日本株は今の為替水準なら割安だけど、たぶん、これも一時的なものになるのだろう...。

 

一方、米国株は下落中であるものの、PERは『S&P500』で18.12倍、『ナスダック』は23倍と…更なる金利上昇も景気後退リスクも織り込まれているとはとても言えない水準だ。

 

各国中銀はインフレ抑制を最優先課題としているから、おそらく、何かしらの危機が起こった際はコロナ危機のときみたいな迅速な対応は期待薄だろう...。

 

以上の考察から、僕はポートフォリオのリスク資産比率を大きく減らすことにした。

 

※銘柄比率は時価総額ベース


9月は、上旬に『バンダイナムコHD』『TOPIX』『伊藤忠商事』の株式を全て売却…。

とてもいいカードを持っていたと思っていたけど、今の相場は勝負を降りるべきと判断した。

今後の展望

現状に至るまでの市場の変化をまとめてみる…

~2020.3

ここまでは成長株主導で株価が上昇した。

2020.7~

ここからバリュー株主導の上昇相場に移行する。

2021.2~

商品市場の強気相場入り

2022.3~

米ドルの上昇、及びバブル化

 

なんてことだ…

これはジム・ロジャーズの言っていたバブル崩壊シナリオと全く同じ段階を踏んでいるじゃないか!?

80年の人生は伊達ではないのかもしれないな…。

 

危機を煽る人はどこにでもいる…

重要なのは"危機を前提にどう攻めるか"だ。

 

僕はこれから、

株式:現金=50:50

となるように、保有株が下落すれば買い、保有株が本質価値に近づけば売るという単純な戦略を採用することにする。

 

さて…上手くいくといいが

…FIN。

 

※投資は自己責任で

参考書籍

現場で使える 会計知識

経済は感情で動く――はじめての行動経済学

徹底図解 脳のしくみ

危機の時代 伝説の投資家が語る経済とマネーの未来

 

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